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1章 写真ばら撒き事件
※ ギューってね♡
しおりを挟む※紘夢side
俺が別宅に住むようになってから初めて春樹以外の客が来た。
同じ学校の二之宮茜と桃山湊と卯月恭弥の三人だ。
卯月は夜の内に帰って行ったけど、残りの二人は泊まって行った。
俺はとても嬉しい気持ちで朝を迎えた。
こんな気分はいつ振りだろう。
蘇る懐かしい記憶。
幼い頃、寝る前に見ていた世界地図の本を思い出した。
ワクワクして、そのワクワクのまま寝て、朝を迎える。たまに地図の夢を見た時なんかとても幸せな気分で次の日を過ごせたもんだ。
その時に似ているなと感じた。
「ふふ、二人はまだ寝てるかな?」
まだ7時前だった。
昨日は三人で遅くまで起きて騒いでいたからな。
まさかあの二人と意気投合するなんて思ってもいなかったよ。
俺のアドバイス通りに演劇部全員に多数決を取りに行った茜ちゃんと卯月は成功したみたいで、ご機嫌で戻って来た。
薗田さんは帰っちゃってたから月曜日に新しい脚本を返しに行くらしい。
その後の二人は俺にとても感謝して来た。
俺なんかにたくさん「ありがとう」って言ってくれたんだ。
桃は桃でマイペースで、そんな二人の話は興味なさそうにずっとスズメの写メを見てるし、変な人達だけど、何でかな……
今の俺にはとても居心地が良かった。
貴ちゃんも誘ったんだけど、どうやら恋人と過ごしてるみたいで、断られたんだ。
残念だったけど、また会えるしね。
俺は着替えて廊下に出る。
何十年も使われて無かった家だからあちこちガタが来てるみたいで、こうして扉を開くとキィィって音がするし、廊下を歩くとギシギシ音がする。
住めなくはないから気にしないけどね。
二人は客室に寝てもらったけど、掃除なんてしてなかったから埃だらけだったはず。
今度二人が来る時は掃除の業者でも頼もうか?
そんな事を考えながら歩いて行くと、話し声が聞こえて来た。
この家にいる人間は今限られている。
どうやらキッチンの方から聞こえてくるみたい。
「うまい!さすが湊だな♪これなら一条も喜ぶぞ」
「だろー?俺料理の才能もあんだから♪やっぱ朝は和食だよな~」
キッチンを覗くと茜ちゃんと桃が二人で何かをやっていた。
一見異色の二人だけど、昨日一緒に過ごしてなかなかお似合いな事が分かったんだ。
見ててこっちまで楽しくなれるようなカップルだ。
「二人共おはよう。こんな早くから何をしてるの?」
俺が声を掛けると、茜ちゃんがパァッと笑顔で振り向いた。
コレだよコレ!
茜ちゃんは笑うと凄く可愛いんだ。
なんかね、普段の吊り目のキツいイメージとは真逆でギューってしたくなる可愛いさなの!
「ギューってね♡」
「うっ……朝から何だよ一条」
「おい一条。今のお前に許せるのはそこまでだからな?それ以上茜に手出したら分かってんだろうな?」
茜ちゃんをハグしてると、ギロリと俺を睨む桃に包丁を向けられた。
てか包丁が似合い過ぎて怖いから。
「分かってるよ~。てか桃って何でいつもマスクしてんの?絶対しない方がいいでしょ。ね?茜ちゃん」
一旦茜ちゃんから離れて話題を変えてみる。
昨日家に来てから初めて桃の素顔を見たけど、驚く程の美形だったんだ。
恐らくあのいーくんや葵くん、更には薗田さんまでも超える程の。
普段は黒いマスクを肌身離さず付けてて誰も寄せ付けないような怪しい感じだけど、この顔なら絶対モテるでしょ。
ちなみに昨日三人でお酒を飲んだんだけど、その後はずっと素顔で過ごしていた。
だから別にマスク無しでもいけるんだなと思って聞いてみたんだけど。
「そんなの見た目だけで寄ってくる奴らを避ける為に決まってんじゃん」
「なるほどね~。でも勿体ないと思うけどな」
「一条、湊の顔が好きなのか?」
「普通にかっこいいと思うよ。独特な髪型してるけど、それも変に感じないぐらいね」
「紘夢センスあるな♪よし、茜とキスまでなら許そう♡」
「何そのシステム!?」
「気にするな一条。それよりも朝食にしよう!湊が一条の為にって作ってくれたんだ♪」
さっきから凄く良い匂いがしてるけど、家に朝食が作れるような食材なんてあったっけ?
不思議に思ってると、息を切らした的羽がキッチンに入って来た。
「はぁはぁ……お待たせ致しました!湊さん!」
「おう、ギリギリ間に合ったな。そんじゃ洗ってくれ」
み、湊さん!?
的羽ってばどうしたんだ?
俺にもそんな口聞いた事ない癖に。
俺が驚いてると茜ちゃんが説明してくれた。
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