【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

※ こんな美味しくて暖かいご飯食べた事ないよ……

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 ※紘夢side

 どうやら桃はプライベートでロックバンドの助っ人をしていて、その才能から正式なメンバーじゃないにも関わらず、多くのファンがいるらしい。
 そっちの世界では神のような扱いをされてるとか……

 で、うちの的羽はその信者って訳か。


「湊ってやりたいと思ったらとりあえずやるようにしてるらしいんだ。そして気に入ったらとことんそれを好きになる。その代わり興味の無い事には目もくれない程だ」

「へー、分かんないもんだね~」


 やっぱり桃は天才なのかもしれないな。
 本人は気付いているのか、いないのか。
 どちらにせよ、面白い男である事は間違いない。

 そして桃が作ってくれた朝食を普段は全然動かない的羽がせっせと働いて食事を取る部屋にセッティングしていた。

 昔は大勢で囲んで賑わっていたであろう長いテーブルと豪華な大きな椅子。
 今では使うとしても端っこの一人分だけだった。
 それが今朝は四人分の食事がセットされて、とても優雅な雰囲気を出していた。

 久しぶりだなこの風景……


「よーし、みんな食うぞー」

「湊さん!嬉しいっす!俺の分まで作ってくれたなんてっ」

「ん、俺ファンは大事にするんだ」


 感動している的羽。
 うん。桃が作った朝食は見事な和食だった。
 お茶碗に盛られた炊き立てのご飯と、豆腐とワカメの味噌汁。そして綺麗な焼き目がついた焼き魚には大根おろしが添えられていた。さっき的羽が桃に渡してた大根か。それと、綺麗な黄色の卵焼きとほうれん草の胡麻和えがあった。あと、ベーコンとブロッコリーが乗ったサラダもあった。

 久しぶりの手作りのご飯に、俺はワクワクが止まらなかった。


「桃!早く食べよう♪凄く美味しそう♪」

「おう!みんなで食おうぜ~」


 四人で食卓を囲って手を合わせていただきますをする。
 こういうのもやった事が無かったから新鮮~!

 実家にいる時は毎日コックの手料理だったけど、家族揃っての食事なんて滅多になかった。
 ほとんど芽依と二人きりで、賑やかになれる会話なんてしなかったから、みんなでいただきますってのが少しだけ気恥ずかしかった。


「うまー!湊さん最高っす!」

「湊は和食だけじゃなくて何でも作れるんだ。そして全部うまい!」

「何でも作ってやるのは茜にだけだけどなー。で、どうよ?紘夢の口には合ったか?」

「凄く美味しい!こんな美味しくて暖かいご飯食べた事ないよ……」

「あ?んだよ的羽、お前使用人の癖に飯も作れねぇのか?」

「いやー、俺料理とかはからっきしで……」

「それにどの部屋も埃っぽいよな」

「的羽は家の事は何もしないよ。ご飯も出来てる物を買って来て出してくれるんだ」

「よし、的羽!お前今日一日掃除しろ。そんで料理も勉強しろ。ちゃんと紘夢の面倒見てやれよ」

「は、はい……」


 俺じゃなくて桃の言う事は聞くんだね。
 俺は気にしてなかったから面白くて笑えた。


「その掃除、俺もしていいか?」

「茜はやらなくていーよ。全部的羽にやらせるから」

「いや、一条に何かお礼をしたいと思っていたんだ。こんなに立派な家が埃や蜘蛛の巣だらけなんて勿体ないし、掃除して綺麗にしたいなって思ってな」

「茜ちゃーん、何のお礼?俺、お礼されるような事したっけ?」

「昨日演劇部を一つにまとめるアイデアをくれたじゃないか♪本当に感謝してるんだ」

「あんな事で掃除してもらうなんて悪いよ!」

「いいじゃん紘夢。家が綺麗になるの嫌なの?」

「そうじゃないけど……だってそういうのは……」


 俺達じゃなくて、お金を払って専門の人がやるもんじゃないのか?
 的羽はやらないけど、今までずっとそうだったし、友達にやらせるなんて出来ない。


「そうそう、昨日は薄暗くて良く見えなかったけど、庭にあるのって何かのコートか?草だらけだけど、チラッとポールが見えたんだが」

「ああ、お祖母さんの趣味でテニスコートがあるんだ。もう何十年も使われてないから、地面もボロボロだと思うけど」

「凄いじゃないか!是非掃除やらせてくれ!そしてそのテニスコートを使わせてくれないか!?」

「あ、貴哉か」


 目を輝かせる茜ちゃんに何か分かったのかボソッと桃が言った。
 え、貴ちゃんが何で出て来たの?
 この人達の会話って本当に読めない。

 でも、そんな読めない会話が面白くて楽しかったりするんだ。


「もう少しで球技大会があるだろ?俺と秋山はテニスに出て闘う約束をしてるんだ。それで秋山は初心者だから俺が教えようと思ってるんだ」

「茜ちゃんテニス出来るの?」

「中学の時テニス部だったからな♪秋山も喜ぶぞー」

「俺もテニスで貴哉ぶっ倒すんだ~♡」


 な、何だこの二人、そんな楽しそうな事を普通に言って……
 貴ちゃんとそんな普通に楽しそうに過ごしてたなんて……

 羨まし過ぎるよっ!


「お、俺もテニスやりたい!俺も二人と、貴ちゃんと闘う!」


 俺が思い切って言うと、二人はニッコリ笑っていた。
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