99 / 178
1章 写真ばら撒き事件
俺も紘夢の事は好きだぜ!気が合いそうだな的羽~!
しおりを挟む昼になったから勉強を中断して三人で昼飯を食っていた。
そこへ桃山から電話が来て一緒に紘夢んちの掃除をしないかと誘われた。
てかあの二人まだ紘夢んちにいたのか。
電話の向こうで随分楽しそうにしてたけどよ。
紘夢が誰かと笑って過ごしているって知れて俺は嬉しくなった。
「あー、ほんと紘夢には敵わねぇなぁ」
「あの人いつもめちゃくちゃ過ぎるんだよ」
「でも母ちゃんがいいって言ってるんだし出掛けられてラッキーだろ♪」
俺は久しぶりの外にドキドキワクワクしていた。
まだ腰は痛むけど、歩けない程じゃない。ただ走れって言われたら無理なだけ。
掃除なんて空とかにやらせりゃいいし、何よりなっちがいるんだろ?何して遊ぼう♪
「でも正直助かったかも。貴哉に勉強教えんのすげぇ大変だし」
「所詮その程度って事ですよ。部長は」
「あ?喧嘩なら買うぞ。副部長」
「喧嘩すんじゃねぇよ!的羽って奴が来るから準備しろー」
午前中伊織に勉強を教えてもらったけど、もちろん何も頭には入ってない。
まぁ空よりは分かりやすかったかな?
ここに来て完全無欠の男が崩れて来て、空はご機嫌だった。
それからうちに高級車が来て、俺達三人はそれに乗り込み紘夢んちへ向かう。
的羽って男は若そうな感じだった。
タレ目で緩いパーマ頭の、今時の男。
一応スーツ着てるけど、この人の場合チャラく見える。ネクタイ締めるの俺並みに下手過ぎだろ。
「お待たせしましたーっと。どなたが貴哉さんです?」
「あ、俺俺」
名乗り出ると、ペコっと頭を下げられた。
何か緩い感じの男だな~。
紘夢の何なのかは知らねぇが、送ってってくれるっつーから黙ってやり過ごす事にした。
そして的羽は走りながら話掛けて来た。
「俺、的羽って言います。お見知り置きを」
「はぁ」
「ずっと会いたいと思ってました、坊ちゃんの憧れの人に」
「憧れの人?貴哉が?」
的羽が言う事に伊織が答える。
俺も驚いた。
「はい。坊ちゃんがヤバい奴なのは知ってます。世話係の面接の時に聞かされましたから。でもそんなのどうでも良かったです。俺が惹かれたのは給料だけですからね」
その後も勝手に話し続ける的羽。
世話係を雇うとか、やっぱり一条家は金持ちだな。
「坊ちゃんの世話係になる条件は監視する事でした。一応まだ未成年ですから、下手な事されたら困るんでしょうね。他に条件はありませんでした。家事が出来るとか、何でも言う事を聞くとか、想像してた世話係とは違いました」
「…………」
「初めて会った時、坊ちゃんは俺にこう言ったんです。好きにしていいよ。だから好きにしました。でも飢え死にしちゃったら困るので最低限のご飯は用意しました。それ以外はお互い自由。坊ちゃんが学校でヤバい事してるのも知ってました。でもチクらなかったですよ。だって坊ちゃんはただ遊んでるだけでしたからね。高校生の遊び。それを親に報告する必要あります?はい、無いですよね」
「…………」
「坊ちゃんが学校を辞めるとか言い出したので、それは話そうかと思ってます。さすがに俺が何で黙ってたんだって怒られますからね」
「あのさ、紘夢が辞めるのって無しに出来ねぇかな?世話係なら説得出来ねぇ?」
「俺はただの世話係です。無理ですね。でも貴哉さん、貴方なら出来るでしょうね。だって友達だから」
「そうだけど、みんなから言えば気持ち変わるんじゃねぇか?」
「いえ、坊ちゃんは貴哉さんを望んでます。今は湊さんと茜さんと仲良くなって楽しそうにしてるけど、やっぱり坊ちゃんは貴哉さんなんです」
「……俺も説得してみるけどよ」
「俺、坊ちゃんの事を初めは生意気で嫌な奴だと思ってました。家を追放されて当たり前だとか。でも、坊ちゃんと過ごす内に応援したくなったんです。坊ちゃんは周りが思ってるより悪い子じゃないですよ。俺から見たらただの高校生です。周りと違うのはちょっと他より賢い事と金持ちなだけ」
的羽は俺達にずっと紘夢の話をして来た。
この人は紘夢の味方なんだな。
ちゃんと紘夢の事分かってるし。
良かったじゃん紘夢。
ちゃんと本当のお前を見てくれる人がいたじゃん。
「あのー、的羽さんはそう言いますけど、一条さんは結構酷い事しましたよ?学校中が一条さんを恨んでるんじゃないかってぐらい」
「それは坊ちゃん自信が良く分かってますよ。俺も何度も忠告しました。でも坊ちゃんはいつも笑って言ってました。全世界の人間を敵に回してもいい。貴ちゃんに思い出してもらえるなら。ってね。だからいいんじゃないですか?恨まれるぐらい」
「あいつ、そんな事を……」
バックミラー越しに的羽と目が合った。
そして笑って的羽のタレ目が細くなった。
「俺、今は坊ちゃんの事好きですよ。だから料理なんてした事ないけど、ナポリタンも作りました。湊さんに言われたのもありますけど、坊ちゃんの為に料理の勉強しようかなと思ってます」
「そうか。俺も紘夢の事は好きだぜ!気が合いそうだな的羽~!」
「貴哉さん、貴方が坊ちゃんに気付いてくれて本当に良かったです。これからも坊ちゃんの事よろしくお願いします」
的羽はペコリと頭を下げて言った。
俺はニカっと笑って的羽の肩を叩く。
そのやり取りを見て俺の両サイドにいた二人が冷ややかな目で見てたけど、俺はその後も的羽と紘夢の話で盛り上がった。
10
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる