【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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1章 写真ばら撒き事件

本当は学校辞めたくねぇんじゃねぇの?

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 紘夢んちのパーティー終了後、みんなで片付けをしてから俺達はそれぞれ帰る事にした。
 的羽が車で送って行く事になったからまずは電車組を駅まで送って行ってる所だ。

 俺は的羽が戻って来る間、紘夢と二人で廊下を歩いていた。
 向かうのは紘夢の部屋。紘夢は何も無いと言うが、俺が見たいって言ったんだ。


「部屋って言っても適当な部屋を使ってるだけだし、そこでは寝るぐらいだよ?」

「まぁいいから」

「ここだよ」


 その部屋は二階の奥で、中に入ると一番最初に目に入って来たのは壁に貼られた大きな世界地図だった。
 後は本当に何も無い、シンプルな部屋。ベッドと簡易的な机と椅子だけ。机にはノートパソコンが置かれているだけだった。


「すげぇな!これ地球全部だろ!?」

「そうだよ♪凄いよねぇ。こんなに広いんだもん♪」

「…………」

「俺ね、貴ちゃんと初めて会った頃の夢が世界一周する事だったんだ。いろんな国へ行っていろんな文化に触れて、日本では味わえない体験をしたいとずっとワクワクして過ごしていたんだ。毎日勉強勉強で窮屈だった俺にとってその夢だけが支えだった。いつか世界に出た時の為に勉強しておこうなんて無理矢理考えた事もあったな」

「へー、でけぇ夢だな」

「どうやら大き過ぎたみたいでさ、見事に父さんに反対されたよ。ろくでもない事考えるんじゃないって言われた。まだ小学校上がったばかりの子供に向かってだよ?その日から俺の復讐は始まってたよ」

「……紘夢の父ちゃんは、紘夢が遠くへ行くのが嫌だったんじゃねぇの?」

「だろうね。跡継ぎだったからね俺が」

「捻くれてんなー。で?自由になった今、夢はどーすんだ?」


 そんな話、俺から言わせてみりゃ親が子供を心配してるだけだ。まだガキだったなら尚更だ。変な知恵付けて勝手にどこかへ行ってしまうかもしれねぇし、大きくなって本当にいなくなったらそりゃ寂しいだろ。
 だからさ、紘夢も紘夢の父ちゃんとちゃんと話し合えばいいのになーって思う。


「叶えるつもりだよ。出来たら貴ちゃんとしたい。一緒に来てくれないかな?」

「楽しそうだけど、俺は遠慮する。俺頭悪ぃから他の国でやってける気がしねぇもん」

「俺がいるから大丈夫だよ。二人で足りない部分を補い合えばきっと楽しいよ」

「悪ぃな。俺はお前とは行けねぇ」

「……貴ちゃん」

「なぁ、お前学校辞めんのか?」

「……うん」


 紘夢の部屋に来たがったのは本当はこの話をする為だ。付いて来そうだった空と伊織にはちゃんと言ってある。二人切りで大事な話をしたいと。
 他に誰かいたら真面目に答えてくれなそうだからな。


「辞めるなって言ったら?」

「…………」

「本当は学校辞めたくねぇんじゃねぇの?」

「どうしてそう思うの?」


 紘夢は薄く笑って聞いて来た。
 だってさ、そんなの今日のお前見てたら分かるよ。みんなと過ごしててすげぇ楽しそうに笑ってたじゃん。
 初めの頃みたいな何を考えてるか分からないような笑顔じゃなくて、本当に心から楽しくて笑ってたじゃん。


「さぁな。でも、俺はお前に辞めて欲しくないと思ってる。だから辞めたくないんなら辞めんな」

「貴ちゃんはどうして俺に辞めて欲しく無いの?学年違うし、学校では関わる事もあまりないじゃん」

「そうだけどよ、なんか中途半端じゃん?辞めたい理由があんなら別に構わねぇけど。どうせみんなに悪い事したから~って理由だろ?お前に逃げんなって言いてぇの」

「逃げる?俺が?」

「俺は母ちゃんに怒られるから退学だけはしないようにすんだ。勉強嫌いだけど、自分からも辞めねぇ。母ちゃんこえーからな。だから紘夢も逃げんなよ。嫌な事あっても我慢して卒業はしろ」

「……逃げ、なのかな?」

「俺からしたら逃げだ。悪い事したからなんだってんだ。んなの謝ったんだし、次に同じ事しなきゃいいんだろ?お前が学校を辞めたくないならならな!」

「…………」


 そこが大事だ。「辞める」のと「辞めたい」んじゃ意味が変わってくる。
 もし辞めたいなら俺はこれ以上は止められねぇ。紘夢にはやりたい事やって欲しいからな。

 紘夢は少し考えてるように視線を俺から外した。
 そして困ったように笑って言った。


「はは、やっぱり貴ちゃんは面白いや。全然俺の考え通りにいかないや」

「あ?当たりめぇだろ」

「もし、俺が辞めたくないって言ったら貴ちゃんは喜んでくれる?」

「そりゃ勿論」

「それからー、辞めないで卒業までに俺に何かあったら助けてくれる?」

「当たり前だ!俺ダチの事は放っとかねぇから安心しな♪何かあったら飛んでってやるよ」

「……うん。ありがとう」


 俺がニカっと笑うと、紘夢は安心したように笑った。
 そして俺に近付いて来て、手を握って来た。


「貴ちゃん。俺約束するよ。何があっても学校を辞めない。ちゃんと卒業するから」

「本当か!?あ!俺に何かあっても助けてくれよな!特に勉強面とか!」

「あはは♪任せてよ」


 こりゃ俺のが助けてもらう事多そうだな。
 でもとりあえず紘夢が学校辞めるってのは撤回してくれたし、良かったかな。

 こうやってちゃんと話せば父ちゃんも分かってくれると思うんだけどなぁ。
 親子だからな。

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