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1章 写真ばら撒き事件
※ 直登!他の男に触れるな!
しおりを挟む※数馬side
俺は貴哉が思い付いた作戦通りに二人がいる部屋のドアの横で直登を連れて来た桐原さんと待機していた。空はみんなが上に上がって来ないか下の階で見張りをしてくれている。
ドアは開いたままだから中にいる二人の会話ややり取りは聞こえていた。
直登はまだ俺の事を好きでいてくれてるんだ……
その事にホッとしていると、横にいた桐原さんに急かされた。
「おい広瀬、そろそろ行かないと貴哉が逆に襲われそうだ!」
「う、うんっ」
俺は直登の事が好きだ。でも付き合ってはいない。直登からは付き合いたいといつも言われているけど、俺が踏み切れないでいた。
直登はモテるから、ずっとこのままだと愛想尽かされちゃうとは思っていた。
そしてとうとう、二年生の桃山さんを気に入ってしまった……
桃山さんに嬉しそうに声を掛けてる直登を見て俺は嫌な気持ちになり、一人で廊下にいたんだ。
やっぱり俺じゃ直登と釣り合わない……
直登はとてもカッコよくて、綺麗。性格もハキハキしていて俺みたいな暗い奴なんかよりも桃山さんみたいに何でも出来るような人の方がいいと思った。
でも、貴哉達が背中を押してくれたんだ。
俺自身も変わりたいと思っているんだ。
今変わらなければこの先ずっとこのままだと思うんだ。
だから俺は精一杯の勇気を振り絞って、廊下から部屋が見える位置に立ってベッドにいる二人に叫んだ。
「貴哉!直登に手を出すなぁ!」
「っ!?」
「おっせぇよ数馬!」
俺が突然現れた事に、驚いて顔を上げてこっちを見る直登。そして直登に押さえ付けられて、動きを封じられている上半身裸の貴哉……
あれ?作戦って、貴哉が直登を襲うんじゃ……?
「か、数馬くん!?」
「直登!他の男に触れるな!」
「え?ええーーー!?」
「直登は……俺の事が好きだって言っただろ!なのに、何で貴哉を……お、襲ってるんだ?」
これは本当に疑問だったので、最後はちょっと情けない言い方になってしまった。
けど、自分なりに強くカッコ良く言えたと思う!貴哉も笑ってくれてるし。
「悪いな数馬。やっぱ直登には力では勝てなかったわ」
「はぁ?ねぇどう言う事ー?」
俺と数馬を交互に見て困ったように聞いて来る直登。種明かししても大丈夫かな?
不安に思ってると、貴哉が普通に話し始めた。
「数馬が直登にかっこいい所見せたかったんだとよ!だから俺が直登を襲って、それを数馬が助ける予定だったんだ。それをお前楽しみやがって」
「だって貴哉に誘われたと思ったからぁ!」
「はいはーい。作戦成功~!って事で貴哉は撤収すっぞー。後は二人切りで話し合えよ~」
ここで桐原さんが入って来て貴哉に服を着せて引っ張って連れて行こうとする。
これは成功したのか?
「いてて……腰痛ぇ。ちょ、伊織歩くの速いって」
「あ、そうだ。広瀬のアドリブかっこよかったぜ?告白もカッコ良く決めろよー?」
「アドリブ……告白?」
「あ、桐原さんっ貴哉!ありがとう!」
残された俺は直登と二人きりになって、緊張が増した。
桐原さんが最後にああ言ったのは、俺が言い出しやすくする為だと思う。
直登はそれを察したように、ベッドに座り直して俺を見て来た。
「あ、えっと……まずは、騙すような事してごめん……」
「いいよ、楽しかったから。数馬くん、隣座って?」
直登は優しく笑って隣をポンポンと叩いた。
俺は言われた通り座る。そして更に緊張して来て何を話したらいいのか分からなくなった。
せっかく言える雰囲気だったのに……
俺っていつもこうだ……
言いたい事も言えずに黙り込んで透明人間になろうとする。そんなのただの逃げなのに。
「数馬くん、俺も謝りたいんだ」
「……え?」
「桃山さんにベタベタしたの見てた?」
「あ、うん……」
「あれね、数馬くんに見てて欲しいなぁと思ってしたの。ごめんね?」
「えっ?そうなんだ……でも、何で?」
「俺が他の人にベタベタしたら数馬くんやきもち焼くかなぁって。子供みたいな事しちゃったぁ」
「っ……凄く妬いた……嫌だなって思って、その場から逃げちゃった」
「嫌な思いさせてごめんね。桃山さんの事がタイプなのは本当だよ。ギャップがあったからね。でも、相手いるし手を出そうとは思ってないよ。これは本当だから」
「うん。直登、あのな!」
「ん?何?」
直登はずっと優しく笑いながら話していてくれた。いつも俺は直登に甘えっ放しだな。それなのに、直登はずっと側にいてくれた。
俺は、そんな直登と……
「あのっ……俺と……」
「ゆっくりでいいよ♪大丈夫。俺は数馬くんとずっと一緒だから」
「直登っ」
口篭る俺の手をギュッと握ってそう言ってくれた。
ありがとう直登。俺、こんなんでごめんな。
俺は勇気を出して直登を引き寄せて抱き締めた。
これなら顔を見られないから言える!
「わっ!数馬くん!」
「俺っ直登が好きだっ!ずっと曖昧な態度取っててごめんっ!……これからはもっとしっかりするから……だから……嫌いにならないで欲しい……それと、付き合って欲しい……」
「数馬くん……」
「カッコ良く言えなくてごめん……顔見ながら言えなくてごめん……弱虫でごめん……こんなんで、ごめん……」
「あはは!数馬くんてばどんなけ謝るのー?嫌いにならないし、弱虫なのは俺が守るから大丈夫。こんなんでとか言ってるけど、数馬くんかっこいいよ」
直登が俺を抱き返しながら優しい声でそう言ってくれた。
ヤバい。俺、泣きそうだ。
そして直登は俺の耳元で囁くように言った。
「告白してくれてありがとう♡こんな俺で良ければよろしくお願いします♡」
「直登っ」
俺は直登から答えを貰った瞬間、今まで我慢していた物が溢れるかのように考えるより行動していた。
周りの事なんかどうでもいい。何と思われてもいい。ただ今は、大好きな直登にキスをしたかった。
顔だけ離して俺から直登にキスをする。
直登もそれに瞼を閉じてくれた。
触れるだけのキスをして離れると、目が合ってクスクス笑われた。
「嬉しい~♡数馬くんからしてくれたの初めてだー♡」
「直登……大好き……」
俺は直登と離れたくなくて、また抱き寄せてぎゅーっとした。ずっと一緒にいたい。直登と、ずっと。
「俺もだーいすき♡ねぇ!みんなに自慢してもいい!?俺、彼氏出来たーって!」
「う、うん……恥ずかしいけど、直登がしたいなら……」
「ありがと♪俺、付き合ってるのとか隠すの好きじゃないんだよねー♡それと、付き合ったら数馬くんとしたい事いっぱいあるから全部しようねー♡」
「ゆ、ゆっくりやろうね!」
何とか直登に告白できて、付き合えたけど、タイプの違う俺達はこれからもいろいろありそうだな。
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