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2章 球技大会
それ紘夢にも言われたから
しおりを挟む空と帰ってる時に変なオッサンが現れて空の様子がおかしくなった次の日、空は休んだ。
朝早くに電話が鳴って出てみたら風邪を引いたと。その電話のお陰で起きられたから遅刻は免れたけど、空がいない一人で歩く学校までの道のりはとても長く感じた。
てか風邪とか嘘だろ。確かに声は少し掠れてたけど、昨日は元気だったし、絶対あのオッサンが原因だろ。
誰だよあのオッサン?空の事ミツルとか呼んでたな。ちょっと頭おかしい人か?あいつそんな知り合いいるのか?いや、あいつならいてもおかしくねぇか。
少しモヤモヤしながら学校の門をくぐると、紘夢に会った。おー、こいつもちゃんと学校通ってんだな。
「貴ちゃーん♡おはよー♡一人でいるなんて珍しいね」
「おはよ。空が風邪引いたんだ」
「それは大変だね。貴ちゃん良く一人で起きられたね。言ってくれれば迎えに行ったのに♡」
「休みの連絡で起きられた。そういや紘夢は球技大会何に出るんだ?参加するんだろ?」
「テニス♪貴ちゃんも茜ちゃんもテニスに出るんだろ?俺もテニスにしたのー♡」
「おおー、そりゃ楽しくなりそうだな!お前テニス出来んの?」
「一通りのスポーツは習ってたからね。そうだ!家の庭にお婆さんが使ってた古いテニスコートがあるんだけど、今そこを改装してて明日には使えるようになるんだ♪茜ちゃん達も来るんだけど、貴ちゃんも一緒にどう?道具一式も用意するよー」
「まじで!?行くー♪俺の相方もいいか?藤野って言うんだけど、めちゃくちゃテニス上手いんだ♪」
「もちろんいいよ♪貴ちゃん来るなら俺も茜ちゃんも喜ぶよー」
本当に嬉しそうに笑う紘夢は、前みたいな何かを企んでいるような感じはしなくて普通の同年代の友達って感じがした。
すっかり茜達とも仲良くなったみてぇだし、良かったな紘夢。
紘夢と話しながら校舎の中に入ると、派手な頭の伊織がいた。もう紘夢は黒髪だから派手なのって伊織ぐれぇじゃん?あ、金髪変態の猿野もいたわ。
伊織は下駄箱で何をするでもなく、寄りかかって俺達を見て笑顔で近寄って来た。
「貴哉♡おはよー♡」
「はよ」
「ちょっといーくん、俺もいるんだけど?」
「てか何で一条と来てんの?早川は?」
みんなそれ聞くのな。
俺と空はいつも一緒だから当たり前か。
「風邪引いて休みだって。お前そこで何してんの?」
「貴哉を待ってたんだ♡てか早川いねぇんなら連絡しろよ!迎え行くから」
「それ紘夢にも言われたから」
「みんな貴ちゃんが好きだからね~♪」
いつも通りの紘夢の発言に対して、少しムッとしてる伊織。あー、今までとは違うもんな。伊織は今は俺のもう一人の彼氏だもんな。
「なぁ貴哉、ちょっと話せるか?」
「ん?何だよ?」
「俺がいたらまずい話ー?」
「俺は平気だけど……貴哉が嫌がるかも」
紘夢の質問に伊織がそう言った。
一体何の話する気だよ!
「ちなみにどーゆー系だ?」
「どーゆー系って、デートのお誘い?」
「それならまずくないでしょ。二人が遊んでももうスパイとか送ったりしないから安心してよ」
「それと!早川いねぇんなら昼一緒に食おう♡迎えに行くな」
「迎えとかいらねぇよ。お前目立つから来るな。どっかで待ち合わせしようぜ~」
「だってさぁ!迎えに行くとか彼氏っぽくね?それやりてぇの♡」
「空くんがいないからってはしゃいでるし。それなら俺も貴ちゃんと食べたいなぁ♪一緒にランチしたーい♡」
「おう、なんならみんなで食おうぜ!茜達も誘っとけよ」
「了解~♪それじゃ俺先行くね~」
紘夢は子供みたいに嬉しそうに笑って先に階段を上がって行った。
さっきの反応だと、伊織がふざけて言ってると思ったっぽいな。でもまぁ紘夢は勘がいいからすぐに気付きそうだけどな。
そして不貞腐れてる伊織と目が合う。
「何だよその顔」
「二人きりで食いたかったのにー!」
「いいじゃねぇか。あ、帰り一緒に帰ろうぜ~?いいよな?」
「いいけどっ!あのさ、貴哉は俺と付き合ってるの他にバレたくない感じか?」
「うーん」
ぶっちゃけどっちでもいい。
だって今の状況とあんま変わらねぇし。
実際紘夢も何とも思わなかったみてぇだし?
心残りはまだ空に言えてない事だ。
「少し待て。先に空に話させてくれ。そしたらバレても構わない」
「昨日話さなかったんだ」
「タイミング失ったんだよ」
「まぁでもバレてもいいって言うなら良かった♪」
へへと嬉しそうに笑う伊織。それを見てたら俺まで嬉しくなった。
問題はいつ空に話すかだよな~。本当に体調悪いんなら今は話さない方が良いよな?
その後伊織はきっちり俺を一年A組まで送り届けて立ち去った。
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