【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

貴哉、他の男に甘えんじゃねぇよ

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 昼休みになると、マジで伊織が迎えに来た。
 ちょうど空が休んでるし、俺と伊織だし、周りはコソコソガヤガヤすげぇ見てた。
 はぁ、ただでさえこいつ目立つのに、勘弁してくれよ。


「貴哉~♡昼飯行こうぜ~♡」

「あー、はいはい。さっさと行きましょー」


 二人で廊下を歩いていても変わる事のない周りからの視線。すげぇ居心地悪いぜ。


「みんな演劇部部室にいるってさ」

「あー、あそこか。茜の部屋な」

「あはは、それ面白いな」

「だって茜いつもあそこにいんだもん」

「……なぁ、今日どっか寄ってかね?」

「パス。今日予定あるんだわ」

「何?予定って」

「秘密ー」

「はぁ?付き合ってて秘密とか無しだろ」

「空んちに泊まりに行くんだよ。ほら、言ったらお前嫌な思いすんだろ?」

「てか早川風邪引いてんじゃねぇの?行って平気なのかよ」

「んー、まぁ連絡してみるし」

「もしダメなら俺と約束してくれよ。いいだろ?」

「やだって。お前すぐヤリたがるから」

「普通じゃね!?てか俺は貴哉と付き合い始めたばっかなんだからヤリたがるのは仕方ねぇだろ!」

「俺に手を出さないって条件だったら泊まりもオーケーしてやるよ」


 俺がニヤリと笑って意地悪を言うと、伊織は眉毛を寄せて考えていた。
 みんなのアイドルが困ってる困ってるー♪
 ザマァみろだぜ!


「分かった!なぁ!手を出すのってどこまでがOKでどこまでがNGなんだ?」

「そうだなぁ、キスまでかな?それ以上はアウトだ」

「へー。うん、いいぜ♪キスならいいんだな♪」


 付き合っててそれは酷いかと思ったけど、伊織はそれでも嬉しそうにしていたから俺はそれ以上は何も言わずにいた。

 そしてみんながいると言う演劇部部室に到着すると、既に賑わっていた。
 中にいたのは紘夢、茜、桃山のいつもの三人と、珍しく七海もいた。


「あー二人共来た来たー♪」

「秋山!待っていたぞ♪」


 演劇部部室の机は、普段教室で使うような机が5個分ぐらいが向き合う形で真ん中に置いてあり、両サイドに好きなように座っていた。
 茜の両サイドは桃山と七海で埋まっている。俺は反対側の紘夢がいる方へ座る。伊織も自然と俺の隣に座った。
 俺は朝コンビニで買ったオニギリとパンを机に置いた。伊織はカロリーメイトをポケットから出してかじり始めた。
 それを見てた伊織の正面に座る七海が驚いた声を上げた。


「えっ!いーくんそれだけ!?」

「ん。昼はあんま食わないんだ」

「桐原、不健康だぞ。湊、お前もだからな」


 確かに。桃山もいつも昼飯って言う昼飯は食ってない気がする。お菓子とか、食ってもパンとかだ。今日もスナック菓子を箸で食ってた。
 紘夢と茜と七海は弁当持参で、美味そうな物を食ってた。


「俺といーくんはこれだけでも何でも出来っからいいんだよ~」

「確かに二人共何でも出来ちゃうよね~。朝と夜は食べてるの?」

「俺はちゃんと食べるよ。夜が一番食べるかな」

「朝は食わない~。10時とかに腹減るからそん時に何か食う~」

「あー、桃山教室で何か食べてるよなー。授業中食べるのだけは辞めた方がいいと思うけど」


 桃山と同じクラスらしい七海は呆れたように言った。ほんとに自由な奴だなー。俺でも授業中に食ったりはしねぇわ。


「湊!キチンと時間を守れよ」

「やだー。お腹空いたらイライラするんだもん」

「だもんじゃない!」

「まぁまぁ、茜ちゃん♪せっかく貴ちゃん来てるんだから楽しく食べようよ~」


 いつものように茜が桃山を説教し始めると、紘夢がニコニコ笑いながら宥めていた。
 俺はそんな雰囲気が心地良くて、楽しかった。
 こんな風に大勢で昼飯を食うのって、初めの時を思い出すな。空と直登と戸塚の四人で食ってたあの頃。あの時はまだ直登と戸塚が付き合ってて、良く戸塚に睨まれてたなー。
 やっぱこういうのっていいよな♪


「そうだぜ茜~♪その卵焼き一個ちょーだい♪」

「ほら、自分で取れ」


 俺が甘えて茜に言うと、弁当箱と箸を渡そうとしていたから、あーんて口を開けてやると、困ったように言いながらも食わせてくれた。


「甘えるんじゃない!まったく秋山は~」

「うまー♡茜の母ちゃん料理上手だな!」

「貴ちゃん貴ちゃん♪これ、的羽が作ったお弁当だけど、唐揚げ食べるー?」

「いいのか!?的羽もそう言う事するようになったか~♪あーん」


 紘夢からもあーんして唐揚げを貰う。
 肉美味い♡さすが一条家だ、いい肉食ってんなぁ~。

 そして感じる隣からのおぞましい気配……
 伊織がそのやり取りを見てめっちゃ睨んでた。


「貴哉、他の男に甘えんじゃねぇよ。お前らも貴哉にベタベタすんじゃねぇ」

「いーくん怖~」

「どうしたの?いーくん?」


 さすがにみんなも変に思ったのか、桃山と七海が驚いて見てた。俺からしたらこういう伊織はちょくちょく見てるから普通だけど、伊織って外面いいからな~。


「伊織!空気を壊すんじゃねぇ!お前今俺のパシリだろーが!」

「っ!……はは、悪かったよ♪俺飲み物買って来るわ」


 俺が言うと、パッと笑顔を作って部室を出て行った。
 残された俺達はやっぱり微妙な空気になった。


「いーくん機嫌悪いのな。珍し」

「秋山、俺があーんてしたから悪かったのか?ごめんな」

「茜は悪くねぇよ。あいつがガキなだけだ」

「空くんがいないから貴ちゃんを独り占めしたいんでしょ。させないけどね」

「そういや早川どーしたんだ?」

「風邪で休みー」

「それは可哀想に。早川も頑張ってたから疲れが一気に来たのかもな」

「なぁ、空ってそんなに活躍してたのかー?俺いなかったから分かんねぇんだよ」

「大活躍だったよ。一年なのに一人で二年の中に入っていろいろやってたぞ」

「パソコン室の時もいたもんね~。空くんて意外とそういうのちゃんとやるよね」


 みんなが空を褒めていた。俺は何となく気分が良くなった。
 問題は伊織だよなー。なんつーか、独占欲が空より強い気がする……やきもちなんて可愛いもんじゃねぇ。周りだけじゃなく、俺にまでキツい事言うもんなぁ。

 俺はオニギリを食った後、伊織と少し話そうと一人で部室を出て近くにある自販機まで向かった。

 
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