【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

その気持ちは変わらない!お前が笑顔でいる限りずっとだ!

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 静かな図書室の横の部屋の中。
 俺と伊織はすぐに抱きしめ合った。

 しっかりした男らしい体に腕を回してギュッと強く抱き締めていた。
 伊織は俺に頬を擦り寄せて来て時々顔のいろんなところにキスをしてきた。

 こんな事してるのが誰かに見られたらヤバいけど、お互い止められなかった。


「貴哉……俺……」

「ん……伊織……」

「貴哉が好きだ。でも、やっぱり一番じゃねぇとやだ」

「うん。俺も、やっぱり二人同時に付き合うのとか出来ねぇや」

「っ……別れたくねぇ」

「伊織、好きだ。キスして」


 俺が頼むと俺の頭を押さえながらすぐにしてくれた。
 伊織は背が高いから少し見上げる感じになる。

 そしてキスをしながら考える。
 俺だって伊織と別れたくねぇ。てか手放したくねぇ。かと言って空とも離れるなんて出来ねぇ。
 くそ、どうすりゃいいんだ……


「貴哉、俺を選んでくれないのか?俺じゃダメなのか?」

「伊織がダメなんじゃねぇよ。俺がダメなんだ……ごめんな。こうなる前にもっと早く気付くべきだったよな。そうすりゃお前にそんな顔させなくて済んだのに……」

「貴哉ぁ……」


 伊織の目から涙がポロポロ溢れていた。
 本当に俺は何やってんだ。好きな奴泣かせるとか母ちゃんに怒られるだろ。
 
 もう傷付けたくねぇ。だから俺はもう伊織とはこれで終わりにする。

 伊織がどんなに泣いても、どんなに好きだと言っても、どんなに付いて来ても……
 そして、俺が伊織の事をどんなに好きでも、もう終わりにするんだ。

 そうすりゃ伊織はずっと笑顔でいられるよな?
 俺の大好きな伊織の顔でいてくれるよな?


「伊織、笑え!俺はお前の笑った顔が大好きなんだ♪だからずっと笑っててよ」

「無理、だっ……だって、もう、貴哉と……」

「愛してる伊織。俺とお前はこれで終わるけど、その気持ちは変わらない!お前が笑顔でいる限りずっとだ!」


 本当は俺だって泣きたかった。
 でも泣かない。代わりにニカッと笑ってやった。
 俺が思うに、俺と伊織の別れは笑顔の方が合ってる気がするんだ。
 じゃないと、ズルズルいつまでも曖昧な関係が続いてしまう。

 伊織はゴシゴシと目元を擦ってから俺から離れて下を向いて喋り始めた。

 
「クソっもう知らね!お前何かっ……もうっ……」


 ここで言葉に詰まっていた。
 伊織なりに諦めようと無理して言おうとしている言葉が何なのか分かって胸が痛くなった。
 泣くな俺。頑張れ伊織。

 そして伊織は、俺の目を見ていつものように笑った。


「はぁ、やっぱ好きだ!嫌いにはなれねぇけど、もう辞めるわ!今までありがとうな貴哉!楽しかったぜ」

「おう!俺もだ。いっぱい構ってくれてありがとな!」

「それじゃ俺先に行くわ。貴哉は少ししてから出て来いよ。怪しまれちまうからな~」

「そうする。じゃあな伊織」

「ああ」


 お互い笑顔だった。
 伊織は歩き出して部屋から出て行った。

 残された俺は、ペタンと床に座り込んでしばらくボーッとしていた。

 そしてポタポタと溢れる涙。
 うわ、一人になった途端寂しさがやべぇ……

 今まで当たり前にあったものが無くなる感じ……

 この感じ、すげぇ嫌だ。
 でも耐えなきゃ。お互いの為だ。

 俺は午後の授業が始まる鐘が鳴るまでずっとそこで声を殺して泣いていた。

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