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2章 球技大会
んじゃあ雪兄にすっか!
しおりを挟む久しぶりのチャラ男号の後ろは快適で、俺は付けてた息苦しいマスクをずらして風を浴びていた。
「貴哉~?幼馴染とは本当に偶然会っただけ?」
「そうだよ。家近ぇから会ってもおかしくはねぇだろ」
「そうだけどさぁ~……何もされなかった?」
「される訳ねぇだろ!楓はお前と違って硬派な男なんだよ!」
「なっ!俺だって今は硬派だもんっ!」
「てかお前、今日何で休んだんだ?風邪ってのは嘘だろ?結構真剣に心配したぞ」
「ごめん……ちょっといろいろあって」
「それを今日話してくれるんだよな?」
「話すよ。貴哉には話さなきゃいけないからな」
「どういう系?家の話か?」
「違う。前やってたバイトの話」
「夜のバイトの?」
「そう」
心なしか空の口数が少ない気がした。さっきまでは普通に話してたのに、今日するのってヤバい話なのか?
「ふーん。まぁ話してくれるんなら聞くけどさ」
「それと、今日兄貴がいるんだ」
「まじ!?やっと会わせてくれるのか♪」
「……実はさ、俺の兄貴は貴哉の事あまり良く思ってないんだよ。ほら、夏休みとかいろいろあったじゃん?」
「ゲッ。ちょー会いずれぇじゃん。ま、仕方ねぇか」
「ごめんな。俺がもっとフォロー出来たら良かったのに」
「空が悪いんじゃねぇだろ。夏休みって言えば俺が伊織と浮気した話とかだろ?弟の肩持つのは仕方ねぇよ。むしろ良い兄貴だな!」
「貴哉……」
「それに人に嫌われるの慣れてるからあんま気にしねぇよ。ムカつくけど、空の兄貴なら我慢出来る」
「ごめん。本当にごめんっ」
「だから空が謝る事ねぇって!」
空の顔は見えなかったけど、声でどんな顔してんのか何となく分かった。
そっかー、空の兄貴に会えるのかぁ。嫌われてるらしいけど、挨拶はしとかなきゃだよな!じゃなきゃ母ちゃんに怒られるからな!
それからチャラ男号は空が住むマンションに着いて、二人で部屋まで行く。時間はもう21時近かった。
空が先に部屋に入って、俺もその後から中に入る。久しぶりに来たけど、本当に綺麗なマンションだよな。
「ただいまー、兄貴ー?貴哉来たよ」
「おじゃましまーす」
空が声を掛けると、リビングの方から一人の男が出て来た。細くて綺麗な顔の男。どこか空に似た顔立ちで、この人が兄貴だってすぐに分かった。
「おかえり。そしていらっしゃい貴哉くん」
「こんばんは!えっとー、こんな時間にすみません!」
「気にしないで?俺も君と話したかったから」
空の兄貴は笑顔だったけど、目が笑って無かった。マジで嫌われてんだな俺……
「貴哉、兄貴の雪だ。とりあえず上がって?」
「おう」
「貴哉くんはコーヒー飲む人?紅茶もあるけど」
「あ、紅茶がいい!」
「…………」
「?」
素直に答えたらギロッと睨まれた。
え、どっちがいいか聞いて来たのそっちじゃん?何で俺睨まれたの?
「た、貴哉~!手洗おうぜ!兄貴用意しといてよ」
「おう……」
空が割って入って来て、俺を洗面所まで連れて行く。
ここで空が俺の目を見てギョッとした。あ、まだ腫れてんのかぁ……だから兄貴も睨んでたのか?
「ちょ、貴哉目ぇどうした?てか何でマスクしてんだろって思ってたけど、何があったんだよ?」
「イメチェンだよイメチェン。てか今はそれよりもお前の話だ。話聞いたらちゃんと話すからよ」
俺はマスクと帽子を取って脱衣所の鏡で顔を確認する。顔はまぁ普通になったかな?目の腫れも家で見た時よりは引いてる気がする。
「分かった。あ、あとさ、兄貴には敬語使って欲しいな~?兄貴って神経質でさ、結構上下関係にうるさいんだよ」
「あ、そうだったのか?そういう事なら頑張るわ」
「悪いな。話終わったら兄貴は出て行くからさ」
「まるで俺をさっさと追い出したいような言い方だね?空?」
俺と空がそんな話をしてたら空の兄貴がひょこっと覗いて見て来た。
それに空はビクッと肩を振るわせてた。
「おわっ!兄貴いつの間に!」
「紅茶淹れたよー。それとタメ口でいいよ。俺は気にしないから」
「マジで?なんだよ空~!脅すんじゃねぇよ」
「いや、貴哉……間に受けんなよ」
「そういや、何て呼べばいい?空の兄貴だから空兄とか?あ、それだと空の事呼んでるみてぇだよな~。んじゃあ雪兄にすっか!」
「ちょ、貴哉……」
「いいんじゃない?好きに呼んでよ」
俺が空の兄貴の呼び方について話してると、空の顔はどんどん青ざめて行った。
よし、雪兄の許可も出たし、紅茶でも飲みながら話聞くか!
俺は酷い顔してんのも忘れて帽子とマスクを外したままリビングに向かった。
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