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2章 球技大会
あー、やっぱ楓といると楽しいなぁ♪
しおりを挟むどうやら楓は彼氏とは別れてはいないが、恋人らしい事はしていないらしい。クラスが同じらしく、学校では普通に話すけど、それは他の奴らに接するのと同じ事で、付き合っているという形だけの状態が夏休み前から続いているとの事……
楓は特に気にする様子もなく、普通に話していた。俺だったら付き合ってる奴とそんな感じになったら怒り狂ってるけどな。
「なぁ、何でそんな事になったんだ?」
「俺が別れ話を出したからだ」
「えっ!楓が!?何で!?」
「一緒にいて楽しいんだけど、束縛が凄いんだ。それに耐えられなくなって、別れたいって言ったら、やだって言われてそれっきり。束縛さえなければな~」
「束縛って、どんな感じの?ちなみに伊織もやべー束縛するぞ?他の奴に弁当のおかず貰っただけで怒られたんだ」
「桐原さんって束縛するのか?話にしか聞いた事ないけど、心の広い人だって聞いたけど……あー、でもさっきの聞いたら少し分かるかもなぁ」
さっきのとは電話での伊織の事だろう。みんな伊織の見た目に騙されてて結構面倒くさい奴だって知らないんだろうな。
「うちのも似たようなものかな?ほら、こっちは共学だから女の子と話してるとすぐ怒るし、貴哉の事も話してあるから会った事もない貴哉に対してもやきもち焼いてるんだ」
「俺ぇ!?そりゃ面倒くせぇな!伊織みてぇな奴だな!ちょっと前の空もそうだったけどな!」
「はは、好きならやきもち焼くのは仕方ないとは思うけど、誰に対してもああだとやりにくいんだよなぁ。俺も貴哉みたいに強く言えたらいいんだけどさ」
「楓は優しいもんな!楓の彼氏ももう少し信じて欲しいよな~。楓が浮気した訳じゃねぇんだからよ」
「……まぁね」
「……この前のは浮気、じゃねぇもんな?」
お互い目を合わせて苦笑いする。
芽依のストーカー事件の後の出来事を思い出した。いやいや、大分前の話だし、あれは勉強であって浮気じゃねぇ。
うんうんと無理矢理自分に言い聞かせてると、楓が笑った。
「浮気じゃねぇよ。俺、貴哉の事遊びだと思ってねぇもん。いつだって本気だ」
「お?浮気じゃねぇよな?本気?……って、勘違いするような言い方すんじゃねぇよ」
「なぁ、貴哉は俺が彼氏とちゃんと別れたらどう思う?」
「うーん、それはそれでケジメ付けたって事だし、いいんじゃね?」
「慰めてくれるか?」
「おお、慰めてやるよ。いい子いい子してやる」
「……そのまんまの意味で受け取ったな」
「はぁ?何それ?」
「いや、貴哉らしいや」
「うわー!自分は頭良いからって見下しやがってー!」
「貴哉のがいい高校行ってんじゃん」
「たまたま受かっただけだ。いつも退学ギリギリで大変なんだぞ~」
「あはは、想像出来てウケる~」
「まぁお互いいろいろあるけど頑張ろうぜ!俺達近所に住んでるんだし、いつでも話聞くからな!」
「そうだな。今度久しぶりに泊まりで遊んだりもしてぇな。また飲もうぜ」
「そういや全然飲まなくなったな~。たまにはいいな♪あ、知ってると思うけど、酒とかは母ちゃんにバレると怒られるから飲むなら楓んちな」
「凛子さん怒ると怖ぇもんな」
「あー、やっぱ楓といると楽しいなぁ♪気使わなくていいから楽なんだよなぁ」
「え、貴哉って気使えたっけ?」
「それが使えるみてぇよ!空と伊織にはめっちゃ使う!毎回疲れるぜ~」
「ふーん。二人の事、本当に好きなんだな」
「って事なんだろうな。正直さ、どっちかを選べって状況には何度かなってんだけど、選べねぇんだよ。どっちも手放したくなくて、結局またいつも通りになっちまうんだ。二人も何だかんだそれでも俺の側にいてくれててよ」
「貴哉は絶対二人じゃなきゃダメなのか?」
「ダメってか、二人がいいなぁ~。こんな俺といられるなんて二人ぐらいだろうし」
そんな話をしながらしばらく歩いていると、前から猛スピードで向かってくる自転車に乗った男が目に入った。間違いない。チャラ男号だな。
「迎えが来たみたいだな」
「あいつ全然元気じゃん」
「貴哉ぁぁぁ!」
キキーッと大きな音を立てて急ブレーキと共に俺達の横にチャラ男号が停まった。また自慢の髪がボサボサだよ。
「って、貴哉の幼馴染!?何で一緒にいんの!?」
「おい!会って第一声がそれかよ!たまたまコンビニで会ったからお前が来るまで一緒に歩いてくれたんだ」
「久しぶりだな早川~。髪切ったんだー」
「あ、ひ、久しぶり……貴哉を送ってくれてありがとう、ございました……」
怒ってる俺と、呑気に挨拶してる楓に呆気に取られてる空。
そんな空を見てたら笑えたわ。
そして俺はチャラ男号の後ろに跨った。
「うっし行くぞ空ぁ!送ってくれてありがとよ楓!またな!」
「おう、二人共気を付けろよ~」
空も楓にペコッと頭を軽く下げて、自分が来た方向へ漕ぎ出した。
あー、楽!結構歩いたから疲れたなぁ。
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