【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

２章 球技大会

てかめちゃくちゃ元気じゃね！？仮病か！

「貴哉は昔から人気者だよなー。高校でも変わらないみたいで良かったわ」

「そう言う楓こそ相変わらずモテてんだろ？いっつも女子に告白されてたもんなー」

「まぁ今だに告白はされるけどよ」

「万年モテ期野郎め」

「……話戻すけど、何で泣いたんだよ？貴哉が泣くとか俺でも見た事ねぇけど」

「うっ……いや、伊織とちょっとな」

「桐原さんと？さっきは普通に喋ってるように聞こえたけど」

「実はさ、伊織とちょびっとだけ付き合ったんだよ。空と付き合いながらさ。んで、やっぱ良くねぇなって思って今日別れたんだ。てかもう伊織を傷付けたくなかったんだ」

「待て。何かすげぇ事になってね？桐原さんは貴哉の事を気に入ってるなとは思ったけど、え、貴哉も桐原さんを好きって事なのか？」

「そう言う事！実際今の俺は空も伊織もどっちも好きだ」


　楓は驚いてるみてぇだった。そりゃそうだろうな。ダチが二股掛けてたなんて引くよな……
　でも楓になら話せると思ったんだ。それぐらい楓は俺の事を理解してくれていて、何でも話せる仲だったから。


「…………」

「楓ぇ、もしかして引いてるか？」

「えっ引いてるって言うか……うーん。羨ましいなぁって」

「は？二股が？楓なら掛け放題だろ。二股どころか何股でもよ」

「そうじゃなくて。貴哉に好きになってもらえる事がだよ」

「え……」

「俺も元貴哉を好きだった男だからよ、分かるよ付き合ってる奴いても手に入れてぇって気持ち。そんで貴哉は早川を選んだって訳？桐原さんと別れたから泣いたのか？」

「まぁ、そんなとこ……俺ダメだなぁって」

「ダメって何が？」

「選んだって言ってもやっぱり伊織の事が好きでさ、いざ伊織が離れて行くってなったら嫌になって、結局また元に戻っちまった。こんな事してりゃ二人共傷付けるのに、何度も繰り返しちまうんだ」

「そうか？俺はダメだとは思わねぇよ。一人に集中した方が信頼とかに繋がるから周りからしたら良くは思われねぇと思うけど、俺はどっちも好きならどっちかが諦めるまで振り回してやりゃいいと思うぜ？」

「マジで？」

「どちらかを選んだとして、その選んだ方がずっと貴哉の側にいるとは限らねぇじゃん。出会いなんてタイミングと運だし、だったら貴哉は貴哉の好きにしたらいい。だから泣く事ぁねぇよ」


　やっぱり楓だぁ！昔悪さをしていた時のように「ケケケ」と笑って俺の頭をガシガシ撫でた。
　楓はいつも俺の味方をしてくれたな。こうやってしょげてたら荒々しくも慰めてくれてさ。


「どれ、ちょっと顔見せてみ？どんなにひでぇのか見てやる」

「やめろよ。家の鏡で見たけど、化け物みてぇだったし」

「あはは！尚更見てぇじゃんそれ！」

「はぁ、楓と話せて良かったわ。なんかやっといつも通りになった気がする」

「そぉか？なら良かった。まぁまた何かあったら話聞いてやるよ。てか今度は泣く前に俺のとこ来いよ。そしたらマスクもいらねぇだろ」

「あはは、そうだな。そうするわ」


　相変わらず楓との時間はとても楽しいもので、時間も忘れて話していた。
　すると、今度は空から電話があった。
　やべ、大分遅くなっちまったもんな。


「また桐原さん？」

「違う。空だ……ちょっと出るわ」


　空と話すのは何だか久しぶりな気がして少し緊張した。多分遅いから心配してるんだと思うけど……


「もしもし？どうした？」

『どうしたって、遅いから何時に来るのかなって』

「悪いな。足が無くて歩いて向かってたんだ。まだ１時間掛かるわ」

『歩き！？何で早く言わないんだよ！迎えに行くよ！』

「いやいいよ。病人は寝て待ってろ。てか話だけなら電話でもいいけど」

『え……』

「時間も遅いし、お前の風邪が悪化してもやだし」

『と、泊まらないのか！？』

「あれ？俺は帰るつもりだったけど」

『だって約束したじゃん！俺ん家に泊まるって！』

「したけど、お前風邪だろ？てかめちゃくちゃ元気じゃね！？仮病か！」


　声の感じはいつも通りですげぇ元気そうだけど、休んだのって仮病だったのか？だとしたら許せん！俺は出席日数ヤバいから遅刻も出来ないってのに！
　俺がイラッとしてるのが分かったのか、隣で楓が笑っていた。


『け、仮病じゃねぇもん！詳しくは会ったら話す！とにかく迎えに行くから！今どこ歩いてんの？』

「家の近くのコンビニ」

『はぁ！？まだそこなの！？』

「うるせぇ！文句あっか！？」

『な、ないよ！そのまま家に向かって歩いててよ。途中で拾うから』

「おう。気を付けてな～」


　とりあえず空が迎えに来る事になった。
　寄り道してた事は黙っておこう。
　電話を切った後立ち上がる。


「って事だから俺行くわ！話聞いてくれてありがとな」

「桐原さんとの約束だから早川が来るまで送らせてくれ。俺も少し歩きたい」

「まじ？実は一人で歩くの暇だしやだったんだよなぁ♪持つべきものは友達だな～♪」

「久しぶりに早川にも挨拶しときたいしな」

「そういや楓は彼氏とはどうなんだ？上手くやってんの？」

「え……うーん。実はあまり良くはないかな」


　これは驚いた。楓って性格良いから上手くやってるかと思ってた。まさか楓も彼氏と上手くいってねぇなんて、俺も話聞いた方がいいじゃねぇか。


「よし、話してみろ♪今度は俺が聞いてやる」

「ありがと。何から話そうかなー？」


　楓の様子を見るとそんなに深刻そうではなさそうに見える。並んで夜道を歩きながら楓の恋バナを聞く事になった。