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2章 球技大会
俺は、この空の手を振り払わなくていいんだよな?
しおりを挟む空に腕を引っ張られてどこかへ連れて行かれる。
こんな所をもし伊織に見られでもしたらとんでもねぇ事になるのに。でも、空が俺の腕を握るその手を振り払えなかった。
初めにジュースをくれた空はいつも通りだった。
普通に話してたのに、段々様子がおかしくなって行って、いきなり大きな声を出したと思ったら今こうして腕を引かれてるって訳だ。
このやっちゃいけない行為が俺は戸惑いながらも嬉しかったりもする。だから振り払わないでいるのもあった。
あまりにも空が普通に振る舞うから、俺が嫌味みてぇな事言ったからかもな。
だってさ、あんなに俺を好きだ好きだ言ってたくせに、他の奴らと同じようにしか接してくれねぇんだぜ?いや、それよりも軽い感じ。話しても一言二言で終わるんだ。
少し慣れて来たのもあったけど、やっぱり俺にとってはそれは寂しいんだ。
だから空にジュースを貰った時は本当に嬉しかった。わざわざ会いに来てくれて、桃山に勝った事に対して「おめでとう」って言ってくれた事がすげぇ嬉しくて……
なぁ、空、まだ俺の事好きでいてくれてるのか?
俺は、この空の手を振り払わなくていいんだよな?
「空っ俺この後試合あるからあまり遠くには……」
「……分かってる」
テニスの試合ってのは意外と短いんだ。上手い奴らならラリーを続けて長くプレイするんだろうけど、俺とかこの学校にいる奴らはそんな上級者みてぇなプレイが出来る筈がないから多分ほとんどの試合は数分で終わる。
だから俺と藤野は近くで待機してなくちゃいけなかった。
俺が言うと、空はピタッと止まってくるっと振り向いた。場所はさっきの自販機前から少し移動した所。運動部の部室とかがある建物の裏だった。
俺を見る空は優しく微笑んでいて、少しホッとした。
「貴哉、いきなりごめんな。もう何もかも我慢出来なかった」
「えっと……たぶん平気」
「貴哉の事はキッパリ諦めて友達に戻れたらって思ったんだ。だけど無理!貴哉の事は変わらず好きなまんまだし、むしろ別れた事によって手に入れたいって気持ちがプラスされた分好きが増した」
「空……」
それを聞いて俺は安心した。やっぱり好きでいてくれたんだな。嬉しくて顔に出てたのか、俺を見て空はニコッと笑った。
「でも貴哉が困る事はしたくねぇ!貴哉が今付き合ってる人の恐ろしさは俺も知ってるからな」
「ああ。俺も庇いきれる自信がねぇよ」
「貴哉、多分俺また前の俺に戻ると思う。チャラ男って言われてた頃に。それでも俺と友達でいてくれるか?貴哉の事、好きでいてもいいか?」
「……ああ!どんなお前でも受け入れてやるよ。空は空だ。俺もお前の事をずっと好きで居続ける」
それは本当だ。空の事は嫌いになれる気がしねぇ。どんな形であれ、ずっと好きのまんまだと思う。
空は嬉しそうにニッコリ笑って両手で俺の頬を触った。
「貴哉、好き♡」
「俺も好きだ」
そして触れるだけのキスをされた。俺は自然と目を閉じて懐かしい瞬間を感じていた。
空の香水の匂いがして懐かしさがより増して、俺は離れたくないと思ってしまった。
でも、空が先に離れたから俺も頭を振って気持ちを切り替える事にした。
「よっし!バスケ頑張るぞ!俺が出る時メッセージするから応援来てよ♪あ、貴哉の試合と被らない時でいいからさ」
「おう!連絡待ってる。頑張れよ空」
「貴哉も優勝目指して頑張れ!」
お互い笑顔で応援し合ってそれからそれぞれの競技の場所へ戻った。
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