【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

あいつらの力はまだまだこれからだ!

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 バスケの決勝戦はかなり人気だった。体育館は他の終わった競技から見に来てる人達で溢れ返っていて、俺達テニスチームも入口のスペースに入るのがやっとだった。
 

「すげぇ人だな。さすがいーくんと那智くんだぜ」

「本当だな。これじゃあまともに観戦出来ないなぁ」

「うーん、事前に葵くんに頼んで席を確保して貰えば良かったなぁ」

「紘夢ってばもう生徒会長さんには頼らないんじゃなかったかー?」

「秋山、残念だな。二人が出てるのに」


 みんなも体育館の中に入れない状況に対してそれぞれ感想を言ってた。はぁ、これじゃ試合終わっちまうじゃねぇかよ。
 でも俺は知っている。こう言う時はこいつを上手く使うんだ♪


「おい桃山。お前突撃しろ。俺らに道を作れ」

「暴れていいって事か!?よーし!みんな俺に続けー!」

「あ、湊!絶対暴力はするなよ!」


 城山高校で関わりたくない男No. 1の桃山を、無理矢理、体育館の中に投入してみた。俺の許可が出て喜んで飛び込んで行く桃山に、それに気付いた生徒達は悲鳴を上げて逃げて行った。
 さすが桃山だな。危険人物の登場でどんどん道が出来て、そこを通って俺達はすんなり中に入る事が出来た。
 その調子で最前列まで行くと、既に試合は始まっていて、選手達が汗をかきながらバスケをしていた。そしてやっぱり目立つのは伊織となっちだった。ちょうどなっちが伊織にパスをして伊織がゴール真下でシュートを決めた所だった。
 これにより、体育館の歓声が大きくなった。


「すげぇ!二人共かっこいー♪ほら貴哉、お前の彼氏がシュートしてんよ」

「ああ。見たよ」


 ここまで導いてくれた桃山に言われたけど、俺は違うチームを見ていた。話に聞いていた通り、本当に一年A組の五人がコートの中に立っていた。
 それはとても驚く光景だった。あの空達が伊織やなっちと対戦しているなんて……
 でも状況は悪いみたいだな。始まったばかりなのに、3対0で負けてる。
 俺は汗だくになって、息切れしてる一年A組を見て湧き上がる何かが抑え切れなくなった。


「コラー!一年A組ぃー!!一点も取れないなんて許さねぇぞぉ!!空!お前リーダーだろ!もっと頑張れ!!」


 俺はコートの中で苦しんでるあいつらに向かって叫んでいた。俺の声に気付いた空や直登や数馬はハッとして、辛そうな顔のまま笑っていた。
 そして空は真っ直ぐに俺を見てニッコリ笑ってピースした。


「そっか。お前一年だったもんな。あいつら仲間だもんな~」

「バスケは人気だから結構強者が多かった筈だ。ここまで残った事が凄いけどな。ボラ部やるじゃないか」


 桃山と茜は俺の叫びを聞いてそう言った。
 そして、俺の叫びを聞いていたのは空達だけじゃなかった。伊織も聞いていて、ニヤニヤ笑いながらこっちを見ていた。それに対して俺もニヤリと笑ってやった。
 どっちが勝っても負けても俺は良かった。正々堂々とやったなら勝ち負けなんてねぇと思うから。
 俺は無料の食券欲しさにテニスを頑張ったけどさ、頑張って良かったと思ってるよ。藤野ともこんなに仲良くなれたし、あの桃山に勝てたし、紘夢だってみんなと笑ってるし、茜の強さも再確認出来た。
 どんな結果になったとしても何かしら得られる物はあると思うんだ。
 ただ、全力でやらないとそれは得られない。

 だから俺は一年A組を応援した。


「あいつらの力はまだまだこれからだ!」

「ふふ、貴ちゃんが言うと嘘みたいで本当っぽいよね♪」

「秋山の言う通りだ。俺達だって出来たんだから早川達だって」


 そして試合は進んで、俺は二チームの対戦をずっと見ていた。
 伊織、なっちはもう言うまでもなく上手い。無駄が無く、チームワークもいい。伊織の俊敏な動きとなっちのパワフルな行動力でその場を圧倒していた。
 空達は伊織が言っていた陣形とは少し違った。空と直登が攻めて後の三人はサポート。決勝戦で作戦を変えたのか。
 てか直登の奴、やっぱ運動神経いいよなー。あいつは汗をかきたくねぇって理由で体育とかではあんま活躍しねぇけど、どうやら今は本気らしい。あの直登が汗だくでスポーツしてるとか、この大歓声はきっと二年の二人に対してだけじゃねぇだろうな。さすが王子だわ。
 数馬も頑張ってる。元々運動神経は悪くねぇ。ただ度胸がないだけ。これだけの大人数に囲まれて注目されてるんだからあいつが普通でいられる訳がねぇ。だけど、頑張って立っていた。俺はそんな数馬を見て少し感動したよ。
 そして空は見た目の華やかさとは反対でとてもワイルドに動いていた。体育であんな空見た事ねぇってぐらい必死で、伊織に食い付いていた。そんな姿を見て俺は何だかくすぐったくなって終始笑顔になれた。敵う筈ないと思う相手に一生懸命攻めてるとか、あいつらしくなくて本当に……
 
 可愛いなぁって。


「あ、早川がカットした」

「すごいな!あの香山の豪速球をカットするなんて」


 なっちが伊織に離れた所からパスをしようと勢い良く放ったボールを側にいた空がカットして、それを経験者の一人がすかさず拾い、自分の陣地の仲間に運ぼうとしていた。
 やるじゃん!空!


「空ー!ナイスカットー!押せー!一年ー!」


 俺の声に空は一瞬笑ってすぐに試合に集中した。
 そしてゴール下にいた直登がボールを受け取って、ゴールを決めようとするが、向こうの一人に邪魔されて思うように動けずにいた。直登は見ての通り華奢で、相手チームはほとんどバスケやってますって感じのデカい奴らばかり。体格差がありすぎる。
 そんな状況に舌打ちした直登は一度ゴール下から離れて、今度は勢い良く走り出した。
 

「え、あの子まさか♪」

「最早身のこなしが素人じゃないな」


 一瞬の直登の行動を見た桃山と茜が言う通り、直登の動きはどのバスケ経験者よりも自然な物だった。
 そして助走を付けて走り出した直登は思いっきり地面を蹴ってジャンプした。まさかダンクシュート!?これには会場にいたみんなが息を飲んで見ていた。
 てか人間ってあんな高く跳べんの!?直登ヤバくね!?
 が、後少しの所でゴールには届かずに直登は宙でボールをゴールに向けて投げた。
 そしてそのボールは綺麗にゴールに入った!


「よっしゃーーー!!一点取ったぞーーー!!」

「悔しー!もう少しだったのにー!!」


 ダンクシュート失敗に悔しがる直登だけど、この劣勢の中あんなすげぇシュートかますとかヤベェだろ!直登があんなシュートをするなんて!


「いいぞ直登ー!その調子だぁー!」

「貴哉見てたー?次はダンク決めるよーん♪」


 俺に向けて両手を振って喜ぶ直登に一部から歓声が上がった。さすが王子だ。そういや誰かが言ってたよな~。この学校のアイドルが、二年が桐原なら一年は直登だって。
 あいつの馬鹿力は知ってたけど、ここまで運動神経良かったなんてな。

 直登のシュートをきっかけにかは分からないが、ここから一年の反撃が始まった。空はもちろん、経験者二人も積極的に攻めていて、あの数馬も一人を徹底的にマークして頑張っていた。
 みんなすげぇなぁ。テニスは二人でだけど、バスケは五人だもんな。誰か一人でもやる気出さなかったらその時点で終わりだ。

 普段、スポーツ観戦とか見ねぇけど、こうしてダチが一生懸命やってる姿を見るのはなんつーか……感動するもんだな!

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