【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ4th season

pino

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2章 球技大会

最後まで諦めなかったお前らの勝ち!

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 バスケの試合も残りわずかとなり、二年対一年の勝負も終わる時が来た。
 みんな頑張ったよ。あんなに必死で体育館ん中走り回って、ボール取ったり守ったりパスしたりさ。うん、頑張った!
 だからさ、どんな結果になっても負けたなんて思わないよ。俺はクラスの代表としてバスケに出場してる五人を見てそんな気持ちになった。

 後一分もないこの状況。もう誰もが結果が分かっていた。
 15対7で二年B組の圧勝。
 それでも空達五人は諦めずに戦っていた。
 かっこいいよみんな。きっと俺だけがそう思ってる訳じゃない。この会場にいて試合を見ている奴らも一年A組の事をかっこいいと思ってる。


「やっぱいーくんと那智くんいるチームは強ぇわな。でもさ、あいつらも強ぇわ。見直した」

「湊、俺もそう思うぞ。きっと俺ならここまでくらい付けないからな」

「青春ってやつ~?俺もああいうのやりたい!ねぇ吉乃!今度二人でやろうよ♪」

「二人でどーやってやるんだ。ほら、最後まで見てましょー?」

「秋山、俺泣きそうだよ。俺らのクラスがこんなに熱い試合見せてくれるなんて……」


 俺の隣にいた藤野がそう言ったから、俺は黙って頷いてコートにいる五人を見ていた。
 残り数十秒。それでも動くのを辞めないあいつらを見て、藤野より先に俺が泣きそうになった。
 俺達一年A組は体育でも特別目立った奴なんかいねぇ。普段も他のクラスに比べたら大人しい奴らばっかで、だから俺だけ担任の玉ちゃんに目を付けられるんだと考えた事もある。
 その中のたった五人だけど、あんな姿を見せられたら誰だって感動しちまうよ。

 絶対敵わない相手だと思って、思われて、それでも全力で戦うあいつらは間違いなく一年A組の誇りだ。

 さすがに相手チームも疲れが見えていて、残り時間は守りを固めているのか攻める様子は無かった。そして伊織が持ってるボールを奪おうと空が走り出した瞬間に、試合終了のブザーが鳴った。

 空は途中でガクッと地面に膝を付けて崩れ落ちた。それは他の四人も同じで、体育館の床に倒れたり、座ったりしていた。

 俺はすぐに空に駆け寄った。


「空!お疲れ!めちゃくちゃかっこよかったぞ♪」

「はぁはぁ……はは、負けちゃった~」


 息を切らしながら苦笑いで軽く言う空。いつも通りに振る舞おうとしてるのが分かった。だから俺は笑って言ってやった。


「何言ってんだ!俺の中ではお前らの勝ちだよ。最後まで諦めなかったお前らの勝ち!」

「貴哉ぁ……ううっ悔しいっ俺、すげぇ悔しいっ」


 俺がそう言うと、空は堪え切れず顔を歪ませてポロポロ泣きながら悔しがっていた。
 そうだよな。悔しいよな。だっていい勝負だったんだ。確かに点差はあったけど、あの伊織と那智を相手にこの点差で済んだのはお前らの努力だ。
 
 そして泣いている空にパサっと青い色のタオルが落ちて来た。落ちて来た方を見ると、同じく汗だくの伊織がいた。


「お疲れ。正直お前らがここまでやるとは思わなかった。早川お前かっこいいじゃん」

「っ!」

「伊織!だよなぁ!こいつかっこいいだろ!?てか他の四人もめちゃくちゃかっこよかったよなぁ♪」


 まさかの伊織からの言葉に、空は目を丸くして驚いていた。そして俺は自分の事のように嬉しかった。


「ああ。中西も広瀬も他の二人もすげぇよ。またやりたいって思えたかな!」

「桐原さん、対戦してくれてありがとうございました。負けちゃったけど、戦えて良かったです……あと、タオルありがとうございます」


 空はタオルで顔を拭いて下を向いたまま言った。
 きっと相手が伊織だし、負けたしで悔しくて下向いてんだろうな。
 そんな空を俺は可愛いなと思って見てると、伊織が今度は低い声で言った。


「タオルは気にすんな。てか貴哉はずっと早川の事応援してたよな?」

「えっ何?俺!?」


 いきなり話を振られてビクッとすると、しゃがんで同じ目線になった伊織に肩を引き寄せられた。
 あ!空の前なのに!


「すげぇ妬いてんだけど?試合には勝ったけど、何か負けた気分。どーしてくれんの?」

「ど、どうもしねぇよ!俺は一年A組としてクラスを応援しただけだ!てかみんな見てるから離れろよ!」

「桐原さん、貴哉を困らせないで下さい。俺もう行きますから。外で閉会式始まりますよ」

「あ!空!」


 空はすっと立ち上がり、俺達を見る事なく中西達の所へ歩いて行った。本当は俺も後を追いたかったけど、今はこいつを何とかしなきゃだな。


「お前は約束を守れねぇのか!空の前ではやめろって言っただろ!」

「貴哉が早川ばっか応援するからだろー?」

「だから空だけじゃなくて自分のクラスを……」

「本当にそうなのか?」

「っ……」


 ふと伊織が真顔になり、俺をジッと見て来た。
 な、何だよ……何で疑ってんだよ?


「いい加減にしろよっ俺も外行くからな!」

「冗談だよ。一緒に行こうぜ~」


 今度はニコッと笑っていつもの伊織に戻った。
 いや、絶対冗談じゃねぇだろ今の。
 あー、早くこいつのこう言う時の対処法見付けねぇと面倒くせぇなぁ。

 
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