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2章 球技大会
お前が俺の着替え取って来い!
しおりを挟む球技大会の閉会式も終わって、それぞれ教室に戻り着替えて今日はそのまま解散出来る事になった。
大会の総合優勝は伊織率いる二年B組だった。伊織となっちが出てない競技でも優勝したチームがあって、圧勝だったらしい。
まぁ実際そんな事はどうでも良かった。俺は個人的に食堂無料券貰えたしな~♪
それと、クラスの雰囲気が変わった気がするんだ。何と無くだけど、今もさっきのバスケの試合の余韻か、教室にいる奴らみんながその話で盛り上がっていた。
空は誰とも話さずに着替えていた。
「貴哉~♪この後打ち上げやらない?みんなにも声掛けてさ~。うちのクラスってそう言うのやって来なかったからたまにはいいかなって」
「打ち上げか~。直登良い事言うじゃん♪それならみんなが帰る前に声掛けようぜ」
直登がニコニコ笑顔で言ったから俺は頷いた。ここで空が着替え終わり、一人で帰ろうとしてるのが目に入って無意識に追っていた。
廊下に出ると、まだ歩いている空がいたから普通に声を掛けた。
「おーい空~!この後打ち上げやろって!ちょっと待ってろよ~」
「打ち上げ?いや、俺はいいや」
「へ?何でだよ?お前今日のMVPじゃん」
「それは貴哉だろ。唯一テニスが優勝したんだし。中西に言っといて俺は帰るって」
空はふいっと顔を背けてさっさと帰ろうとしていた。あいつ、伊織に負けたの気にしてんのか?
仕方ねぇなぁ!
「おいコラチャラ男~!打ち上げは負けて拗ねてる空ちゃんを励ます会に変更だ!だからお前が主役!つまり絶対参加!」
「はぁ?何だよそれっ勝手に決めんな!」
「顔出すだけでもいいからさ。それと、お前がいねぇと俺がやだ」
「何言ってんだよ……」
「だって俺に突っかかって来る奴いねぇとつまんねぇじゃん?前みたいに言い合おうぜ♪絶対楽しいから!」
そうだ。付き合う前のチャラ男とヤンキーみたいに。一年A組の名物だろ。
俺がそう言うと、空は泣きそうな顔をした。おわっやめろよ!俺が泣かしたみてぇじゃん!
「貴哉、悪いけど俺は帰る。多分もう言い合いとか出来ねぇよ。じゃあな貴哉。また月曜な」
「あ、おい!」
空はとうとう俺の前からいなくなった。
え、どしたのあいつ?俺何か悪い事言ったか?
そんなに負けたのが嫌だったのか?
誘いを断られて俺はショックを受けてしばらく突っ立っていた。
すると制服姿の数馬が現れて俺の顔を覗き込んで来た。
「どうしたの貴哉?……えっ!」
俺の顔を見た数馬は驚いてた。
何でそんなに驚くんだよ?
ああ、そっか。俺泣いてんだ。
「本当に何があった!?えっと、泣かないでっ」
「数馬ぁ、空が……打ち上げ行かないって……断られたぁ!」
「えー!空来ないの!?って、貴哉落ち着いてっ!」
俺は数馬にしがみ付いてなんとも言えない感情をぶつけていた。
何でだろう。空に断られて、素っ気なくされて、さっさと帰って行く姿を見たらとても悲しくて……
まるで俺を拒否するかのような……
そんな俺に困る数馬だったけど、突然「ひっ」と小さく悲鳴を上げていた。
「ひーろーせーくん?うちの貴哉がどうしたのかなー?」
「き、桐原さんっ」
「伊織!?」
数馬から離れてバッと振り返ると制服姿の伊織がそこにいた。ニコニコ笑ってるけど、俺が数馬にしがみ付いてたのを見たからか怒ってるのが分かった。
「広瀬が泣かしたの?」
「違います!」
「伊織っ!行くぞ!」
「は?ってお前ジャージのままじゃねぇか!」
「うるせぇ!お前が俺の着替え取って来い!さっさと帰るぞ!」
「訳わかんねーけど、貴哉の物を取りに行くの悪くねぇな♪おし、ちょっと待ってろ」
何故か機嫌の良くなった伊織は俺の命令を聞いて教室に入って行った。すると、騒ついていた教室が静まり返った。
俺は数馬とそのまま突っ立って待っていた。
「貴哉、大丈夫か?」
「大丈夫。じゃねぇかも。悪いけど、打ち上げ行けねぇわ」
「うん……直登に言っておく。気を付けて帰ってね!何かあったら連絡して?」
「……おう」
数馬が直登に話して、絶対心配されるだろうな。
とにかく俺はこの場にいたくなかった。
せっかく楽しい気分だったのに、何なんだよ空の奴。何であんな態度なんだよっ。
そして俺の制服を持って出て来た伊織に肩を抱かれて歩き出す。数馬はずっと見ててくれた。
「落ち着いたら何があったのか聞かせろよ。広瀬が原因じゃねぇんだろ?」
「……うん」
俺は頷いた。それから伊織は特に何も言う事なくずっと隣で手を繋いでいてくれた。
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