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6章 貴哉の暴走
数馬んちも紘夢と一緒で金持ちなんだよな
必死に俺にしがみ付く数馬は震えていた。ビビってんなら入って来るなよ。
紘夢は視線を数馬に移したと思うと、何かを思い付いたようにニッコリ笑った。
「あは♪このままじゃ俺も貴ちゃんも先生に怒られちゃうからやり方を変えよう♪」
「あ?」
いつもの陽気な紘夢に戻ったかと思ったら、持っていた弁当をちらつかせて笑顔を見せた。
「ほら、お腹も空いたでしょ?安全な場所でお昼ご飯でも食べながら話そうって♪」
「何だテメェ?そっちから喧嘩売って来たんだろうが!」
「貴哉!一条さんの言う通り話し合って解決した方がいいよ!」
「数馬まで……」
俺は初めから話し合いで解決しようとしてたっつーの!紘夢がけしかけて来たんだろうが!
俺は納得いかなかったけど、二人にそう言われて数馬の腕を乱暴に振り解いて従う事にした。
それから紘夢は俺達を誘導して外に出て、校舎から少し離れたテニスコートがある方のテーブル付きのベンチに座った。
「ここで食べよーう♪ここなら見晴らしもいいし、誰か来てもすぐに分かるからね♪」
「もうどこでもいいわ!誰が来てもぶん殴ってやる!」
「はい、貴ちゃんの分。的羽も大分料理上手くなったから期待してよ」
紘夢から渡された弁当を開いてみると、あのやる気のない的羽が作ったとは思えない色鮮やかな弁当が広がっていた。おかずの数も多くて、肉、野菜、その他細々した物。
的羽の奴、やるじゃん。
さっきまでの殺伐とした雰囲気はどこへやら、すっかり俺達は仲良く弁当を食い始めていた。
「美味そう♪いただきまーす♪」
「召し上がれ~♪良かったら数馬くんもどうぞ♪って数馬くんのお弁当も美味しそうだね」
「そうそう、数馬んちも紘夢と一緒で金持ちなんだよな」
「確か剣道の道場をやっているんだっけ?」
「はい……お金持ちかは分かりませんが……」
「一人息子で跡継ぎの予定は無し。と言うか才能に恵まれなかったか。引き篭りがちで、趣味はネットゲーム。これと言って特技は無いけど、対人恐怖症を克服しようと少しずつ変わって来ている……か」
「っ……!」
「は?」
紘夢がぶつぶつ何かを言い始めたけど、それって数馬の事だよな?間違ってはねぇけど、いきなり何だ?
俺もだけど、数馬はもっと驚いて焦り始めた。
「ライバルの情報を頭に叩き込んでるんだよ。数馬くんは無いと思ってたからボディガードに任命したけど、そうも言ってられないからね」
「ライバルって、数馬は入れなくていいだろ。なぁ?」
「お、俺に聞くな!」
「さっき二人が俺に言えない事を話していた、もしくはやっていたと考えるなら、これからは数馬くんも敵だ♪」
「お前笑顔で怖ぇ事言ってんなよ。数馬が良い奴なのは知ってるだろ?普通にしてろよ」
俺は弁当のおかずのミートボールをパクッと口に入れる。おっこれは手作りだな?濃い目の味付けがまたいいな♪
すると紘夢がクスクス笑いながら俺に手を伸ばして来て、そのまま俺の口の端を指でなぞった。
「な、何だよ!?」
「口の端にソース付いてたから♡ほんと可愛いなぁ♡」
「だったら言えよ!ガキじゃねぇんだからわざわざ取らなくても……!!」
子供扱いをされて恥ずかしくなって言い返してると、紘夢は気にする様子も無くその指をペロッと舐めた。
ま、まじか!
「数馬くんも貴ちゃんにこういう事してあげてるの~?」
「っ……してないですっ」
「する訳ねぇだろ!お前もこういうのするんじゃねぇよっ」
俺と紘夢のやり取りをポカンとした顔して見てた数馬に、まるで挑発するようにニヤリと笑って言った。
数馬がんな変態みたいな事する訳ねぇだろうが。
ちきしょう。数馬とも微妙になって来てるのに余計な事しやがって。
俺がこれ以上面倒な事はやめてくれと言う意味を込めて叱ると、紘夢は機嫌良さそうにニッコリ笑って更に数馬に追い打ちをかけた。
「そっか~。出来る訳ないよな~。だって数馬くんだもん。貴ちゃんの事を好きだと思っていても嫌われちゃうから~とか考えて自分のしたい事や思ってる事すら出来ないもんね?」
「…………」
「おい紘夢、良い加減にしろよ。それ以上何か言ったら許さねぇぞ」
「貴ちゃんも貴ちゃんだよ。数馬くんには本当に甘いんだから。でもさ、それって本当に数馬くんの為になるのか?貴ちゃんが何でもやってあげてちゃ数馬くんはずっと一人じゃ何も出来ないままじゃん?」
「…………」
「別に俺が誰に甘くしようがいいだろ!あーもう、数馬、こんな奴の言う事なんか気にするなよ。相手にするだけ無駄……おい数馬?」
ペラペラとよくもまぁ嘘のようで本当の事を言ってのけやがる。これだから紘夢は敵に回したくねぇ。
口じゃ勝てねぇからな。
俺は相手にするのをやめて数馬にも気を大きく持てと言おうとしたけど、既に手遅れだった。
数馬は箸を置いてボーッとテーブルの端っこを見つめていた。
クソ!ただでさえネガティブな数馬がネガ入っちまったじゃねぇか!
「数馬!気にするんじゃねぇ!お前は今まで通りでいりゃいいんだから!」
「それって貴ちゃんの都合だろ?数馬くんが本当はどうしたいのか聞いたら面倒だから上から言ってるだけ。そうだろ?」
「テメェ!今まで恩があるから黙ってりゃいい気になりやがって!今のお前は銀髪の頃のお前と一緒だ!数馬が敵だ!?俺の敵はお前だ紘夢!お前とはもう関わらねぇよ!」
「……それはもう俺の助けはいらないって事?」
「いらねぇよ!俺はもうお前を頼らねぇ!だからお前も俺に関わるんじゃねぇ!もう行くぞ数馬!」
「……うん」
「…………」
もう我慢の限界だった。
あまりにも自分勝手な紘夢に頭に来て、後先考えずに食いかけの弁当をそのままにして俺は立ち上がって数馬を連れて校舎へ歩き出す。
紘夢と喧嘩をするのはかなりキツい。
それぐらいに紘夢には世話になってたからな。
もう何かあってもすぐに解決してくれる奴には頼れない。だけど、それでも今の紘夢には怒りを抑える事が出来なかったんだ。
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