【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

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1章 

良い兄貴だな

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 図書室の横の小さい部屋。伊織とは毎度お馴染みとなった隠れ家的な部屋で売店で買ったおにぎりを食いながら、伊織に俺が廊下を猛ダッシュしていた訳を話していた。
 伊織は美味そうな弁当を広げてゆっくり食いながら話を聞いてくれていた。


「そりゃ災難だったな。今日から毎日ってのが辛いな」

「うん。まぁそうなんだけどよぉ……てか伊織その弁当って……」


 俺は自分の話をしながらずっと伊織の弁当が気になっていた。
 見るからに手作りのおかずたっぷりの美味そうな弁当だ。伊織と言えばカロリーメイトだった筈なのに、何故ここに来て手作り弁当?


「ん?あ、食うか?味は確かだぞ」

「食う♪って、お前が作ったのか?」

「まさか」


 弁当を差し出して来る伊織は苦笑いだった。
 あれれー?その反応って怪しくねぇ?
 伊織じゃねぇって事はもしかして誰かの手作りかぁ?


「誰に作ってもらったんだよ?」

「……秘密♡」

「あ?何でだよっ!」

「気になる?」

「そりゃ気にな……あ!」


 俺の反応を見てニヤニヤしだす伊織。
 危ねぇ!伊織が持ってる誰かの手作り弁当にやきもち焼くとこだったぜ~。


「はは、作ったのは俺の兄貴だよ。ちゃんと飯食えって朝飯も作ってくれてるんだ」

「あ、兄貴か……そっか!良かったなぁ♪」


 笑いながら本当の事を話してくれた伊織にホッとしていた。くぅー、俺ってば自分から別れるとか言って何気にしてんだよ。
 にしても兄貴と上手くやってるんだな。それは本当に良かったなって思う。


「良い兄貴だな。んじゃ遠慮なくいただくぜ~♪」

「全部食べていいよ。俺元々食わないから食い切れなくて」

「勿体ねぇなぁ。残すんなら俺にくれよ」

「いいよ。じゃあこれからはまたお昼一緒に食う?」

「……あー、たまにならいいかな!?」

「えー、俺は毎日でもいいけどな」


 伊織とは別れてからは会った時ぐらいしか話さなくなったんだ。俺からそうしようって言った訳じゃないけど、伊織から俺に会いに来なくなったんだ。代わりに空がずっと付き纏ってるから寂しくはなかったけど、こうして久しぶりに伊織と過ごすとやっぱいいなって思う。

 その反面、複雑な気持ちにもなるけどな。
 俺達は別れた。伊織は「保留」とか言ってるけど、もう恋人らしい事はしてねぇし、連絡すらまともに取ってねぇ。
 こうして会うと優しくしてくれたり、口説くような事言って来たりするけど、付き合ってた頃みてぇに触れて来たりはしないんだ。

 
「さっきのやきもちも嬉しかった。貴哉はまだ俺の事好きでいてくれてるんだって思えたから」

「そういう事言うなよ。俺達はもう……」

「保留な♡俺がちゃんと大人になれるまで、貴哉の事をまた惚れさせられるようになるまでな」

「伊織……」


 またって言うけどもう惚れてるよ。
 別れてからたまにしかこうして話さなくなって、伊織の良い所ばかり目についちまうんだ。
 さっきだっていきなりぶつかった俺を怒らずにしっかり受け止めてくれたし、昼飯も一緒に食ってくれてるし、優しく口説いてくるし……
 
 俺が優しい伊織にボーッと見惚れてると、伊織はカタンと椅子の音を立てて立ち上がり、俺の隣まで来て上から見下ろして来た。伊織の目は真っ直ぐに俺を見ていて、とても愛おしそうに見て来た。
 これヤバいやつだ。このままだと俺、伊織としちゃう……


「貴哉、していい?」

「っはぁ!?何聞いてんだっ!」


 伊織に見つめられて自然と待っていると、言葉にして聞かれたから咄嗟に慌てて顔をふいっとしてしまった。
 危ない。聞かれなかったらキスしてたな。

 箸を持って誤魔化そうとしてると、伊織はそのまま俺に右手を伸ばして来て、首元にある伊織から貰った指輪を手に取った。


「!」

「これ、まだ付けててくれてんだ♪」


 小さな声で、嬉しそうに言うからまた伊織を見ると、今度は本当に嬉しそうに笑う伊織がいた。
 もう一度箸を置いて俺は伊織の左手に手を添えた。


「お前だってまだ付けてんじゃん」


 伊織の左手の薬指に嵌めてあるペアリングを触りながら言うと、その手を絡めて来た。
 そしてゆっくり顔が近付いて来て、キスをされた。
 うわぁ、ここでして来るかぁ?
 もうこいつどこまで俺をドキドキさせりゃ気が済むんだよっ。

 俺は目を閉じて伊織の左手を握る右手に力を入れる。
 そっと離れていく伊織は俺のおでこに自分のおでこを当てて「へへ」と笑った。


「弁当代♡なんつって♡」

「おまっそう言うの後から言うなよなぁっ」

「そんじゃ今度からそのつもりで♡」

「……ん」


 もう一度キスをされて完全に俺は伊織に惚れてるんだと自覚した。
 どんなに離れても、空といても、伊織の事を辞めるのは出来ねぇんだな。
 こうしてキスされてこんなにドキドキして嬉しいなんてさ。

 すっかり俺のイライラは収まっていて、伊織の弁当をペロッと平らげて機嫌良く教室へ戻る俺だった。


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