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1章
お前の気の済むまで付き合うぜ♪
しおりを挟む俺はマックのカウンター席に藤野と横並びで座って真面目に話を聞いていた。
目立つのを嫌がり、あんなけほっといてくれみたいな態度だったのに、今日はスラスラと自分の事を話していた。いや、前も藤野自身の事は話してくれた事がある。そん時にゲイだって知ったしな。もしかしたら藤野は俺だけになら話せるのかもしれねぇな。一見空との方が話してるように見えるけど、空がいると話しにくいのかも。
「友達に抵抗があるってどう言う意味だ?悪いけど俺にも分かるように説明してくれよ」
「そうだな、周りからみたら仲良くしてるから友達なんだって思われるかもしれないけど、俺は悪目立ちしたくないから太一達といるだけなんだ。別に太一達の事を信頼してる訳でもまた仲良くしたいとは思ってない。ただ、周りから浮いたように見られないようにしたいだけなんだ」
「悪目立ちって?」
「分かりやすい例えだと、桃山さんとか少し前の一条さんとかかな。でも一人で大人しくしてるのもダメ。それだといじめの対象とかになって逆に目立っちゃうかもしれないだろ?」
「あー、あいつらの事悪目立ちって言うのか。てか今一人になってんじゃん。いいのかよ?」
「あまり良くはないけど、今のクラスもあと少しだしもういいかなって思ってるよ」
藤野は俺がする質問にもちゃんと答えてくれた。
そして話してる時も落ち着いていて、時折笑顔を見せていた。
「秋山、時間は大丈夫?」
「ん、平気♪藤野の話を全部聞いてから帰るから」
俺がそう言うと、藤野は少し照れたように笑った。今日はやけに笑うな。
藤野は愛想の良い、いつも笑顔でいる奴だけど、最近の藤野は事情も事情だからかあまり笑顔でいるのは見なかった。だから俺は嬉しかった。
「ありがとう秋山。自分でも何でか分からないけど、秋山になら話せる気がするんだ。本当に全部聞いてくれる?」
「勿論!お前の気の済むまで付き合うぜ♪」
「それじゃあ俺が目立ちたくない理由を話すね。最後まで聞いてくれたら嬉しいな」
この後藤野は苦笑いをして、「目立ちたくない理由」とやらを話し始めた。
ここからは俺以外には話した事がない出来事らしい。
「俺がゲイだってハッキリ自覚したのは中学に上がってすぐだった。小さい頃からやってたテニス部に入ったんだけど、そこで仲良くなった奴に一目惚れしたんだ。相手は男だった。人を好きになったのは初めてだったんだけど、今まで女の子を好きになれなかった理由がその時分かったよ。それまでは修学旅行とか体育の着替えの時とか、友達に素肌を見せたり、友達のを見るのが恥ずかしいなとは思ってたんだけど、ハッキリ男を好きになって自分はゲイなんだって分かったんだ。それからは他の男の前でも意識するようになっちゃってさ。勿論そんな事言える訳もなく隠してたんだけど、俺の行動や言動がおかしかったのか、噂されるようになったんだ。藤野心はゲイだって。友達に聞かれたりもしたけど否定したよ。バレたらヤバいと思ったからね。それからは噂は収まったけど、俺を避ける奴は避けてたよ」
「…………」
俺はずっと大人しく藤野の言葉を聞いていた。
途中で文句言いたくなるような事もあったけど、グッと堪えてずっと黙って聞いていた。
「中三になった時、好きな奴に声を掛けられたんだ。部室で二人きりの時に。今思えば不自然だった。そいつは俺の事を避けてたからね。噂が広まる前までは部活では仲良く話してくれてたのに、噂が出た途端に距離を置かれるようになったんだ。俺も好きだからと言ってどうこうなりたいとか無かったから三年になるまで初恋を心にしまっておいたんだ。それがいきなり声を掛けられて初恋が蘇って来た。そいつの笑顔を見る度にドキドキしてときめいてた」
「…………」
「初めはたわいない話。そして段々と口数が減って来たと思ったら告白されたんだ。まさかと思ったね。本当あの頃の俺はどうかしていたよ。彼の言葉を鵜呑みにして、俺もずっと好きだったなんて馬鹿正直に答えたんだから」
ここから藤野は苦しそうな表情になり、声も震え出した。
それでも俺はずっと黙って聞いていた。
「俺はてっきり両想いなんだって、その後何の疑いもなくそいつに付いてった。言われるがまま、付いた先は卒業した元テニス部の先輩の家だった。そいつが俺達の事を先輩に話して祝福してもらいたいって言うから、信じて先輩の家に上がった。そして先輩の部屋にいたのは先輩だけじゃなくて他にも知らない数人の男達だった。俺がどう言う事かそいつに聞くと、既に俺を避けてた頃の目に戻っていて、そこで俺は騙されたって気付いたんだ」
「っ……」
「そいつは先輩達と賭けをしていたんだ。ゲイだって言う噂は本当なのか嘘なのか。見事にそいつの勝ちだったみたい。その後俺はそこにいたバイだって言う先輩達に……はは、ここから先は言わなくても分かるよね?」
「藤野っ」
俺は堪え切れなくて下を向いて藤野の名前を呼んでいた。藤野は「はは」と笑ってるけど、そんなの笑えねぇよ。
お前、すげぇ辛い思いしてたんじゃん。
俺はずっと藤野は陽キャで、誰とでも明るく話す良い奴だとか勝手に思ってたけどよ、何でだよっ何でお前は今笑ってられるんだよ……
藤野の話は俺にもちゃんと理解出来た。
可哀想とかよりも怒りの方が大きくて、話を聞きながら自分の制服のズボンを強く握ったりしてずっと我慢していた。
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