【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ6th season

pino

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4章

米は右手に張り付いてるからおかずだけ分けてくれ♪

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 黙り込む柳瀬を見た後、俺は自分の右手を見る。怒りで握りつぶしていたおにぎりがぐしゃぐしゃになっちまってた。勿体ないから食えるとこだけ食ってさっさと手を洗おうかと考えてると、柳瀬は黙ったまま自分の蓋も開けてない弁当箱を、スッと差し出して来た。


「あ?何だよ?」

「それ食べられなくなっちゃっただろ。俺の母さんの手作りで良ければ食べろよ」

「そしたらお前の弁当なくなるじゃん」

「いい。腹減ってないから」

「ふーん」


 俺は気になったから蓋を開けて中身を見てみる。タレ漬けの唐揚げに、良い色に染まったじゃがいもの煮付け、それと綺麗な黄色い卵焼き。あとはいんげんの胡麻和えか。ご飯にはふりかけが掛かっていた。おかずチェックを終えて、俺は弁当箱の蓋に唐揚げとじゃがいもと卵焼きを一個ずつ取って柳瀬に言う。


「美味そうじゃん♪米は右手に張り付いてるからおかずだけ分けてくれ♪半分こしようぜ♪」

「…………」

「ちゃんと食わないと保たないぞー?それに母ちゃんに抜き打ちで今日の弁当どうだった?とか聞かれたらどーすんだ?味が分かってねぇと母ちゃん悲しむだろ」

「秋山……」



 俺は唐揚げを手で掴んでパクッと口に入れる。
 タレ漬けうま!!右手に張り付いた米を食べてると、柳瀬は顔をくしゃっとして笑い出した。


「うま!!柳瀬の母ちゃん味付け最高じゃん!!」

「あはは、秋山行儀悪いって~」

「柳瀬も早く食えよ。そんで仲直りしようぜ♪喧嘩とかかったるいだけだしよ~」

「うん。そうだな。ムキになって悪かったよ」

「俺も悪かった」

「もう秋山の事ウザいなんて思ってないから安心してな?」

「おう。てかよ、心の事知ってるんだろ?」


 心の事ってのはゲイだって事だ。
 柳瀬は落ち着いた様子で頷いた。


「……うん。知ってるよ」

「それは心から聞いたのか?」

「違う。たまたま男の人とホテルに入るのを見た事があるんだ。それから何回か見掛けて、そうなんだって思ったんだ」

「それなら話すけど、あいつはその事であまり目立ちたくないと思ってんだ。周りにバレるのを恐れてる。今回柳瀬達にハブられて悪目立ちする恐れがあるって困ってるんだよ。お前らと元通りに出来なくても、普通に学校生活を送りたいって思ってんだ。だからもう嫌がらせはやめてやれよ」

「そっか。ココロは俺とはもう仲良くしなくてもいいって思ってるのか」

「それは分からねぇ。ただ心はお前に弱みを握られてるから変に刺激しないようにしてる。それが俺の時みたいにばら撒かれたらあいつにとって最悪な事になるからな」

「そこまで知ってるんだな。やっぱココロは秋山の事好きじゃん」

「今はそれはどうでもいい。その撮った写真消してくれねぇか?柳瀬も心の事好きなら辛い思いさせたくねぇだろ?」

「どうでも良くないだろ。俺はココロが他を見るならココロを孤立させて困らせようと思ったんだ。そしたら謝って俺に縋り付いてくるかなって。そう思ったのに逆効果だったよ。ココロは俺達の言いなりになって距離を取った」

「そんなの当たり前だろ!友達だった奴にカツアゲなんかされたら嫌にもなるだろ!」

「俺はしたくてしたんじゃないっ!初めは本当に困らせたかっただけなんだ。初めは冗談で写真を見せて脅して金を貸してって言っただけなんだ。そしたらココロはあっさり金出して、どっか行っちゃった……俺はフラれた気持ちになったからもう辞めようと思ってたんだけど、翔ちゃんと潤が俺の方に付いてから引くに引けなくなっちゃって、その後もたまにココロを呼び出して……ココロから渡されたお金は使ってない。それと写真はもう消したよ」

「えっ!?写真もうないのか!?あいつそれだけの為に耐えて金渡してたんだぞ!?」

「初めに金受け取った時に消したんだ。何か虚しくなったから。ココロに消した事を言えなかったのは、それを言ったら本当にココロとの関係が終わっちゃう気がしたからだ」


 何て事だ。心はもうありもしない恐怖に怯えて柳瀬達の言う事聞いてたって事かよ。
 柳瀬が心を好きだったってのもそうだけど、お互い大分すれ違ってんじゃん。
 あー、これ上手くすれば解決出来るんじゃねぇかな?心が柳瀬達を許せなくても、写真はもうないんだし、金も返して柳瀬達がちゃんと謝れば柳瀬の話ぐらい聞いてもらえるんじゃないか?


「俺から言わせればそんなガキみたいな気の引き方しないでもっと素直に伝えるべきだったな。もうやっちまった事だから取り消せねぇから、これからは悪化しないように修復させるだけだ。柳瀬が心に謝る気があるなら俺が一肌脱いでやるよ。ついでに気持ちも伝えて綺麗さっぱりしちまえって」

「一肌脱ぐって何をするんだ?」

「本当に柳瀬が想いを伝えたいってんなら心が逃げずに話聞くようにしてやる。結果はどうなるか分からねぇけど、もう全部話して終わらせちゃえよ。つかこれ以上心を傷付けるなら俺も黙ってねぇぞ」


 俺が最後は脅すように軽く睨んで言うと、柳瀬は元気なく俯いた。
 柳瀬が嫌だって言うならそれまでだ。けど、俺は心の為に柳瀬から聞いた事を伝えるつもりだ。写真はない。消した証拠はないけど、何で柳瀬が心に嫌がらせをしたのか理由を話せば少しは違うだろ。

 俺は柳瀬から貰った弁当のおかずを全部食い終わってから立ち上がる。手に張り付いた米が乾いて来ちまった。さっさと洗って教室へ戻ろう。
 まだ弁当に手を付けずに俯いてる柳瀬を置いて廊下へ出ようと歩き出した。
 俺がドアに手を掛けた時、後ろで柳瀬が動く音がした。


「待ってくれ!」

「何だ?」


 柳瀬に呼ばれたから普通の顔して振り向くと、そこには今にも泣きそうな顔した柳瀬が俺を見ていた。
 おいおい。辞めてくれ。てか何で俺と話すとみんな泣き出すんだよ。まるで俺が虐めてるみてぇじゃねぇか。


「ココロに謝りたいっだから……頼む!協力してくれ!」


 そう言って頭を下げる柳瀬。
 俺は柳瀬の事はどんな奴とか知らねぇけど、教室で見てる限りでは普通な感じだった。まぁどちらかと言うと元気がある方で、いつも誰かしらと話して良く笑ってるなーってイメージ。
 だから心に嫌がらせとかするような奴なのかって不思議に思ってたけど、今日話してみて思ったよ。
 こいつは悪い奴じゃない。ただ少し好きな奴の気の引き方が下手くそなだけだ。
 そんで自分が始めた事が間違ってるって分かっても周りに流されてズルズル続けちゃう弱さもある。
 でもそんなのは誰でも起こり得る事だ。間違ってるって気付いてたからこそ自分じゃどうにも出来ないから何とかしたいって思って俺に声掛けたんじゃねぇのかなって思う訳よ。
 
 俺は柳瀬に向かってニッと笑って米でカピカピになった右手でグーを作って真っ直ぐ前に出す。

 
「おう!任せとけ!」


 最後、柳瀬は涙を流す事なく笑っていたから俺はホッとした。


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