80 / 156
4章
※ 黙れクソ犬。まずは靴を脱げ靴を
しおりを挟む※侑士side
俺にとってこの学校から排除すべき生徒の一人である今は金色の髪の桃山が目の前に現れた。
「あいつ、土足のまま入って来やがった」
「……湊」
桃山はスニーカーのまま中に入って来て、そのまま俺達の前を通り過ぎようとした。俺はすかさず体を低くして左足を桃山の進行方向を妨げるかのように廊下に伸ばす。
桃山はそれをジャンプしてヒョイっと避けた。着地した瞬間に桃山の鋭い目が俺を睨んだ。以前は肌身離さずマスクを着用していたけど、数ヶ月前から外し始めてから分かりにくかった表情が露わになって、怒っているのかとても機嫌が悪そうだった。
「ようクソ会長さん。邪魔してんじゃねぇよ」
「黙れクソ犬。まずは靴を脱げ靴を」
「あー、靴ね~。はいはい~っと!」
「っ!!」
俺が土足を注意すると、桃山はしゃがんで靴紐を解いて脱ぐそぶりを見せたかと思ったらその脱ぎかけたスニーカーを俺に向かって蹴飛ばして来た。
口調こそいつもの適当な感じだけど、やはり怒っているようだ。それか俺が相手だからか。
至近距離だったから避けられずに腕を前に構えてガードするけど、桃山の飛ばして来たスニーカーは俺の腕に当たって落ちた。
こいつ……俺はキレる寸前だった。一応二之宮がいるから抑えていたけど、こうなったら本気で行くしかない。
「前田、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
俺が桃山にキレかけた時、隣にいた二之宮が心配そうに俺の腕を触った。それによって俺の気が緩み、桃山に隙を与えてしまった。
「油断大敵~♪」
「ぐっ!!」
桃山は靴下一枚になった足を高く上げて思い切り俺に振り下ろして来た。二之宮に当たらないようにそのまま両腕で受けるけど、桃山の攻撃は半端なガードじゃ意味をなさない。
過去に桃山を取り締まるのに抵抗された事が何度かあるけど、こいつの身体能力は恐ろしく高かった。こうやって暴力的になると俺も痣の一つや二つは覚悟するもんだ。そうして毎回逃げられるんだけど、今回こそは捕まえたい。
重い踵落としを喰らい、衝撃で後ろに倒れそうになるのを必死で堪えていると、二之宮が桃山に向かってポツリと言った。
「やめろ」
「…………」
この二人が別れてからどうなったのかは知らない。少なくとも話してる姿を見ないから、友達に戻った訳ではなさそうだ。
桃山と付き合っている時の二之宮はこういう時は怒っていたけど、今もそうなのか?二之宮が加勢してくれるなら心強い。そう思って俺はそっと二之宮の顔を見て、言葉を失った。
そこには弱々しく困ったような表情の二之宮がいたからだ。
「頼むからそのまま行ってくれ。前田も、彼を見逃してくれないか?」
「…………」
申し訳なさそうに「頼む」と言う二之宮に、何て言ったらいいか分からなかった。
桃山は俺達を見下ろしていたけど、数歩下がってもう片方のスニーカーを脱いだ後、俺にぶつけて来たスニーカーを拾い自分の下駄箱へ向かって行った。
「ごめん、ごめんな前田」
「何で二之宮が謝るんだよ」
中履きに履き替えて戻って来た桃山は二之宮を見た。二之宮も桃山を見てフワッと笑った。
「なぁ、貴哉と紘夢が階段から落ちたってよ」
「ああ、さっき秋山に会ったよ。二人共保健室にいるぞ」
「ふーん。情報提供感謝しまーす♪」
笑顔の二之宮に言われて桃山はニッコリ笑ってそのまま保健室の方へ走って行った。
あ、俺はまた悪を止める事が出来なかった……
いや、今はそれよりも目の前にいる二之宮が気になって仕方がなかった。
俺にも笑顔を向けてくれるようにはなったけど、やはり桃山に対しては別物だった。今隣にいる二之宮の笑顔はまるでお互いが信頼し合っているかのような、とても安心したような暖かいものだった。愛おしい者に向ける笑顔。
そうか、二之宮はまだ桃山の事を想っているのか……
そう感じたら俺の胸はズキンと痛くなった。
10
あなたにおすすめの小説
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる