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2章 神居琴葉
16.銀髪から黒髪になった親友
しおりを挟む結局紘夢の話は家に着くまで続き、一旦電話を切って家でいろいろやってからまた掛け直す事になった。
それにしても紘夢の奴明るくなったよな。
俺が知ってる紘夢はもっと落ち着いていたと思ったけどな?電話とかでしかやり取りしてなかったからどんな風になってるのかは分からないけど、少なくとも電話で聞く紘夢の声は明るくなっていた。そして、考えるイタズラも幼稚な物が増えて、俺は安心していた。
そんな紘夢には、紘夢にとって人生の大きな分岐点だった幼稚園の年長の頃に会っている「ヒーロー」がいた。
その話はチラホラ聞いていたけど、まさかそのヒーローが同じ高校に入学して来て、出会っていたとは世の中は狭い物だと面白く感じた。
それからかな、紘夢の声が明るくなったのは。丁度一年前か、すっかりヒーローに忘れられていた紘夢はどうにかして思い出してもらおうと様々なイタズラを仕掛けていたらしい。
そしてヒーローが現れる前からいろんな所でイタズラをしていた紘夢はそのツケが回って来たのか、退学を考えるまでの大事件が起きたんだ。
ヒーローを怒らせて絶望の淵にまで堕ちたと思ったけど、紘夢の事だから全て計算していたんじゃないかと思う。
こうしたらこうなる、ああすればこっちになる。
紘夢は俺よりもそれを考える事に長けているんだ。
それから音沙汰は無かったけど、どうやら上手く行ってるらしいな。
古い友の浮かれた話を聞いて俺も心が落ち着き、千景の事も頭に置きながらも落ち着いて過ごす事が出来た。
家で夕飯と風呂を済ませて、紘夢に連絡をしようとスマホを見る。今度こそ俺の恋愛相談をしよう。
そう心に決めて画面を開くと、紘夢からメッセージが届いていた。
『お風呂から出たら連絡ちょーだい!』
するつもりだったから、電話を掛けてみると、すぐに出た。どうやら外にいるようだった。
「もしもし?お風呂上がったよ」
『琴葉ー!待ってたよー♪今から行くから玄関開けといて~』
「今からぁ?何言ってるんだよ?」
『実は近くのコンビニで待機してたんだよね~!ほら行くぞ!』
「ん?他にも誰かいるのか?」
『あ、安心して?行くのは俺だけで、城之内はただの足だから~』
誰かと話してるような紘夢に、「足とか言うんじゃねぇ!」と言う野太い荒々しい声が聞こえて来た。
相変わらず人を使うのが上手いなと思いながらも俺は紘夢が家に来るのを待つ事にした。
俺が家の外で待ってると、すぐに一台の原付がやって来て、俺の前で止まった。
その原付には二人の男が乗っていて、運転席には目付きの悪い、短髪で金髪で、剃り込みの入ったいかにもって感じの不良がいて、後ろには黒髪の見た感じ普通な男が乗っていた。
「ふぅ、やっと着いた~!もう乗り心地最悪!」
「うっせぇ!文句ばっか言ってんじゃねぇぞ!」
「……紘夢か?」
黒髪の方の声に聞き覚えがあって、声を掛けると、ヘルメットを運転手のヤンキーに渡してパァッと笑いながら近寄って来た。
「久しぶりだね琴葉♪変わってなくて嬉しいよ♪」
「紘夢は、黒髪に戻したんだな」
「うん♪去年の秋ぐらいにね~」
「おう、一条!俺ぁ帰るぞ!」
「あ、帰る時呼ぶから近場にいてよ」
「はぁ!?ざけんなよ!何でんなパシリみてぇな事っ……」
「パシリだろ?俺の♪」
「チッ!分かったよ!なるべく早くしろよな!」
ヤンキーは舌打ちをして原付を走らせてどこかへ消えた。
どうやら紘夢に弱みでも握られているのか逆らえないらしいな。
「相変わらずだな」
「あれでも一応光陽のトップなんだよ、訳あって俺の監視下に置いてるんだ。勝手に悪さしないようにね~。的羽が辞めちゃったから俺の送り迎えしてくれる人が今いなくてさ!丁度良いから城之内にお願いしてるんだ」
「とてもお願いなんて可愛いもんには見えなかったけどな。唯一の使用人もとうとう紘夢に愛想尽きたのか?」
「ううん!的羽は大学をちゃんと卒業したら正式な社員になる予定だよ♪一応家にはいるんだ」
「へー、いろいろあったんだな。とりあえず入って話そう」
「お邪魔しまーす♪」
立ち話もなんだし、俺は紘夢を部屋に入れる事にした。
突然やって来た紘夢と会うのは二年振りとかか、あの頃と変わらずめちゃくちゃな男だけど、変わった所もあった。髪の色と笑顔が柔らかくなった所だ。
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