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2章 神居琴葉
17.恋愛相談
しおりを挟む紘夢は俺の部屋に入ると、興味深そうにしてあちこちを見ていた。
特に何も面白い物なんてないと思うけど、俺は気にする事もなく、机に座りそんな紘夢に声を掛ける。
「へー、ここが琴葉の部屋か~」
「いきなり来るとか驚いたぞ」
「あー、琴葉が俺を頼るなんて無いからさ、心配で思わず来ちゃった♪」
「とか言って、楽しんでるんだろ?」
終始ニコニコ笑顔の紘夢に俺もニヤけながら聞くと、とても楽しそうに笑い声を上げた。
「あはは♪正解~♪だってさ、あの琴葉がだよ?どんな面白い事してるのか直接聞きたくなっちゃった♡」
「……残念だけど、面白い事ではないかな~」
「そう?とりあえず聞かせてよ」
とてもワクワクしてるけど、ただの恋愛相談だ。
この手の話は紘夢とはした事がないけど、同じ心境で育ったのもあって他の人とは違う答えが聞けると思ったんだ。
俺の部屋のソファに座って話を聞く体勢を取る紘夢に、千景の事をちゃんと話そうと思った。
「実は俺、好きな人が出来たんだ。初恋ってやつになるのか」
「恋バナ!?ちょー面白そうじゃん♪」
「やっぱり楽しんでるじゃんっ、まぁでもいいや。その相手は同じ男なんだ。同じ学校で二年から同じクラスになった。ちゃんと話したのも最近になってから、ちなみに両想いにはなれたよ」
「マジ?それはおめでとう♪」
「それがめでたくないんだよ……いや、嬉しいんだよ?千景の事、本当に好きだし。あ、名前千景って言うのな?でもさ、千景には他に好きな人がいるんだ。俺の方が上っぽい事は言ってたけど、これってどうなんかなぁ?って、紘夢的にはどうしたらいいと思う?」
「そんなの琴葉の好きにしたらいいじゃん?」
「え、それだけ?」
「千景に好きな人がいても、どうしても好きならそのままでいいんじゃない?嫌ならキッパリ諦めさせるか、琴葉が諦めるしかないだろ」
「諦めさせたい!でもどうやって?」
「うーん、今の話だけだと千景って子がどう言う子か分からないからなぁ。千景の好きな子は同じクラス?」
「ううん、違う高校で、中学が同じだったって」
「なるほどね~、それじゃあ琴葉がその子を越えればいいんだよ。もうその子より好きなら必要ないと思うけど、更に磨きをかけてその子の事を忘れさせちゃえよ」
「その子を越えるか……悪くないかもな」
「ちなみにその好きな子の名前は分かる?ちょっと調べればどういう子か分かるでしょ。琴葉の得意分野じゃん♪」
「あー、今はそういうのしてないんだ。あくまでも普通の高校生として過ごしたいから」
「え!それってもしかしてあの頃からずっと!?」
「そうだよ。テストの順位もワザと落としたり、知ってる事でも分からないフリをしたりして生きて来たよ。さすがに紘夢に頼られたら本気出すけど」
「勿体無い!せっかくクラッカーとして有能なのに!俺がその頭脳を買いたいぐらいなのに!」
「もうクラッカーじゃねぇよ。やってもハッカーだ」
「個人情報を不正に入手するのがハッカー?かっこつけちゃって~。でも琴葉がいいならいっか♪何か恋愛までして楽しそうだし?」
「……うん。楽しいよ♪千景と会ってからはより楽しくてさ、でもそれと同じぐらい怖いんだ。俺、臆病じゃなかった筈なのに、なぁ、紘夢はこういう経験はないのか?」
「ふふ♪恋する乙女って感じだね~♪俺にもあるよ?てか俺は片想い中だし、ずっとこのままでもいいと思ってるよ」
「紘夢も恋愛してたのか~!」
「そりゃするよ~♪恋って良いよね♪その人の事を考えると幸せな気持ちになれるし♡琴葉の怖いって言うのも分からなくもないかな?俺も貴ちゃんを失ったらって思うと怖いもん」
「紘夢の好きな人って貴ちゃんだったのか?」
「そうだよ♪ちなみにエッチな事は経験済み~♡残念だけど、本番は出来なかったけどね~」
何と言う事だ!紘夢も恋愛とかは興味無いと思ってたのに、しっかりやる事やってたんだな。
紘夢が言う貴ちゃんって人は、俺と同い年で確か今は高二になってる筈だ。
俺が紘夢から頼まれていろいろ調べていた頃はまだ城山高校に入りたてで、殆ど中学の時の情報だったけど、本名は秋山貴哉。男。他には住所や家族構成、XやインスタなどのSNS系はやってない。後は貴ちゃんと同じ中学だった人達から聞いたりと、最低限の事だけ調べて紘夢に報告した事があった。
やり過ぎると跡が付いて面倒な事になりかねないからな。犯罪ギリギリの所で俺は普通の高校生という立ち位置を守っていた。
その頃の紘夢からは、再会したヒーローがいて自分の事を思い出して貰いたいから手伝ってと言われてたんだ。
その後の進展は聞いてなかったから、知らなかったけど、まさかそんな仲になっていたなんて驚いたな。
てか思い出して貰いたかったら普通に声を掛けてその頃の話をすれば済む話だったのに、まるで遠回りをして大掛かりなイタズラを仕掛ける辺りが紘夢らしいと思った。
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