【完結】ギフテッドボーイに照らされる

pino

文字の大きさ
29 / 51
3章 漆原千景

28.好きな2人が意気投合

しおりを挟む

 電車が俺と恋が使う駅に到着し、3人で降りてそのままホームに残り向き合って立っていた。
 俺より少し背の低い琴葉に、それより更に少し背の低い恋。
 俺と同じ高校の制服に、ブレザーの上から青いジャージを羽織った琴葉、光陽高校の制服をそれっぽく着崩してやんちゃそうな見た目をしている恋。

 どちらも俺の好きな人で、大切にしたい人だけど、この場合はどうするのが正解なのか、人付き合いという物を避けて来た俺には難しい問題だった。

 いや、どちらかを選んで大切にしなくちゃいけないのは琴葉だ。付き合いは恋より短いけど、恋には恋人がいて今ではとても仲良くやっている。
 俺は好きでいながら想いを伝える事なく影で見守っていたから良く分かるけど、今の恋は今までで一番楽しそうで、落ち着いているんだ。

 そしてそんな恋を見て自分も落ち着いていられている事に気付く。
 前なら恋が彼氏と喧嘩をしたと聞けば自分の事のように機嫌を損ねていた。はたまた寄りを戻したと聞いても「またか」と思い、イライラを募らせた。

 だけど今はそんな感情は一切湧かない。
 それは俺にとって琴葉と恋で好きを使い分けられていると言う事なんだと思う。

 
「あー、何かさ、俺のせい?で神居怒らせて悪かったよ」

「別に怒ってねぇし」

「琴葉、恋にちゃんと話すから機嫌を直してくれよ」


 俺は謝る恋に、なおも不貞腐れた態度を取り続ける琴葉の腰に手を回して自分の方へ引き寄せた。
 驚いて見上げて来る琴葉にニコッと笑顔を見せて、恋を見てちゃんと伝える事にした。


「恋、言ってなかったけど、俺と琴葉は付き合ってるんだ。俺は心から琴葉を好きで、愛してる。だからこの琴葉の態度には叱れない。俺に恋人が出来た事を伝えなかった俺が悪いんだ、ごめんな?許してくれないか?」

「千景っ♡」

「マジィ!?チカが誰かといるの珍しいと思ったらそういう事!?てかそんなの謝る事ねぇよ♪俺も知らなかったとは言え、悪ぃ事言っちまってたかもだし?いや~、それにしてもあのチカがなぁ!うん!とりあえずおめでとう♪」


 恋は驚いた後に、いつものように明るくニカッと笑ってくれた。
 理解してくれたみたいで良かった。と言うのも、恋は喜怒哀楽が激しくて、それを隠そうとしない男なんだ。だから、琴葉の不貞腐れた態度に冷静に対応していた事に少し驚いていたんだ。

 いつ喧嘩になるか冷や冷やもしたけど、恋が落ち着いていてくれて良かった。


「ありがとう♪」

「千景好きぃ~♡今日塾休んじゃえよ~♡勉強なら俺が教えてあげるからさ~♡」

「それは出来ないって、週末教えてくれよ」


 俺がハッキリと恋に紹介した事で一気に機嫌を直した琴葉は、腕にしがみ付いて来て甘えて来た。
 可愛いけど、塾のお金は親に出してもらってるから簡単に休む訳にはいかない。やる事はやりたい。
 そんな俺達を見てた恋はニヤニヤ~っと笑った。


「千景もそんな顔するんだなぁ♪みんなに言ってやろーっと♪」

「恋っ!頼むからこの事は言いふらさないでくれっ!」

「別に言ってもらっても良くない?わざわざこっちから告知しなくて済むし♡恋くん、どんどん言いふらしちゃってよ♪」

「おう!任せとけ♪そんじゃ俺は先に帰るぜ~♪またな二人共~」


 二人はふざけてるのか本気なのか、なんか意気投合して手を振りあってるけど、俺はやたらに周りに話されるのは好きじゃない。
 恋を止めたかったけど、あまり言って琴葉がまた機嫌を損ねても嫌なのでここは大人しくしてる事にした。

 でも、琴葉の機嫌が直って良かったな。


「あのさ、千景?」

「なんだ?」

「俺、千景の事が大好きなんだ」
 
「うん、凄く伝わってるよ。俺も大好きだよ」

「やっぱり今日って塾休めない?」

「うーん、なるべく休みたくないけど、琴葉を不安にさせたのは俺だし今日だけなら」

「ほんと!?嬉しい♡このまま千景んち行こう!」

「うん」


 きっとこんな風に突発で塾を休むのは初めてだ。
 親には何て言おうかなんて考えながら、琴葉に差し出された手をギュッと握って二人で駅を出る。

 どうしても琴葉には甘くなっちゃうな。
 甘やかした時の琴葉の喜ぶ顔が可愛いくて、笑顔にしてやりたくなるんだ。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...