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4章 神居琴葉
33.あの頃浴びた視線と似てる
しおりを挟む次の日、電車で千景と合流して朝から仲良く歩いていた。
校門に入って周りから物凄い視線を浴びて何かおかしいと気付く。
あれ、俺と千景の関係がバレた?
最近よく2人でいるからそう言う噂になっても仕方ないとは思うけど。
俺はバレてもいいけど、千景はどう思ってるんだろ?
「なぁ千景~、今日すげぇ見られるね」
「どうでもいい」
「はは、さすが千景さーん♪クールだねぇ」
玄関まで行くと、人も増えて俺達は更に注目を浴びた。
うーん、さすがに気になるよな~。
俺はすぐ近くにいた女の子達に声を掛ける事にした。多分同じ学年だけど、話もした事の無い子達だ。
「ねぇ、みんな何で俺と千景の事見てんの?」
「えっ!」
「ちょっと行こ!」
あれれー?何かすげぇよそよそしくなかった?
俺が声を掛けてあんな反応されるのとか初めてなんだけど!
「地味にショックなんだけど」
「琴葉?どうした?」
「さっき女子に声掛けたら避けられちった~」
「……ほっとけよ」
「でもさー、気になるじゃん?何で俺らを見てるのかさ」
どうやら千景は本当にどうでもいいみたいだな。
俺の顔をジーッと見た後、何も言わずに歩き出した。
ま、教室に行けば誰かしら教えてくれるだろ。
千景と教室に入ると、やっぱり同じようにジロジロ見られた。
なんつーか、その見て来る目があんまいいものじゃないんだよな~。
そう、まるで面白い物を見るように、はたまた珍しい物を見るように、そして軽蔑するかのような目もあった。
俺は千景と離れてマコトとハヤテに声を掛ける。
この2人はクラスの中でも良く話す2人で、とても良い奴らだ。
「おはー♪なぁちょっと聞きたいんだけどさ~」
「うげっ!琴葉!」
「おい、マコト!」
あらら、この2人もそんな反応するのね。
マコトは驚いた拍子に素の声が出て、それをハヤテがシーっと人差し指を立てて隠そうとした。
俺はそんな2人を交互に見て、ニコッと笑う。
「2人共、みんなの様子が変なの知ってるんだろ?俺に教えてくんね?」
「さ、さぁ?何だろうな?」
「…………」
しらばっくれようとしているマコトに、ハヤテは黙り。
この2人にまでこんな対応をされるとかさすがに嫌だな。
全校から浴びせられる白い目に、仲の良い人達からも白々しい態度を取られる。きっと良くない噂が流れている。
俺は冷静に考えて、無理に聞き出すのをやめた。
ここで無理矢理聞き出しても意味が無い。
俺が周りに聞いて歩いて騒ぎ立てれば余計に目立つだけだ。
俺は2人から離れて自分の席に着いて授業の準備をする。すると、ピロンとスマホが鳴ってメッセージを受信した。
『大丈夫か?』
千景からの心配メッセージだった。
さっきの2人とのやり取りを見てたんだな。
俺はふぅ、とため息をついて少し大袈裟に返信をしておいた。
『マコトとハヤテにまで冷たくされちった!昼休みに癒して♡』
そしてスマホを閉じて机に突っ伏す。
俺は今日、昼休みまでずっとそうして過ごした。
休み時間毎に千景が俺の所に来てくれたけど、俺はずっと考え事をして上の空だった。
何かさ、朝から浴びたあの視線がちょっとな。
思い出すんだよ、幼少の頃に浴びたあの視線と似てて。
ギフテッドだと言う事で特別視され、一度でも挫ければ「どうして出来ないの?」と落胆される。
もうあんな思いはしたくないから隠して生きて来たのに。
たった一度テストで本気を出したからか?
それだけで周りの態度が変わるものなのか?
また馬鹿なフリをすれば元に戻るのか?
いや、そもそもテストが原因じゃないかも知れない。
他に変化があったと言えばやっぱり千景か。
俺が千景を気に入って好きになったから変な噂と共に勝手なみんなの妄想が一人歩きしてこんな風になったのか。
脳みそをフル回転させて思考を巡らせるけど、あの頃のような気持ちになってしまった以上どんな理由であれ俺はどうしたらいいのか分からなくなっていた。
あの頃のように逃げるか?
学校を辞めて他へ転入するか?
ずっと地道に作り上げて来た今の俺を捨てて、何も知らない土地へ行ってまた一からやり直す。
ハハ、そうなったら千景は付いて来てくれるかな?
だってさ、千景と離れるなんてやだよ……
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