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4章 神居琴葉
34.何も考えられないぐらいに
しおりを挟む気付けば昼休みになっていて、気付けば屋上にいて、気付けば隣に千景がいた。
あれ、ここまで俺どうやって来たんだっけ?
千景が心配そうに見ている姿があって、俺はおかしくなって笑ってしまった。
「あはは、今日の俺ダメダメだ~」
「琴葉、無理して笑う事ない」
「そうね、でもさ何か知らないけどボーっとしちゃうんだよね、俺の何がいけないのかなって」
「琴葉は悪くない。周りの事なんか気にするなよ」
千景はそう言うけど、俺は人一倍人目を気にするんだよ。意外かも知れないけど、誰よりも臆病で、弱い人間なんだ。
一度逃げた人間はそうそう強くなんかなれない。
それは俺が一番良く知ってるんだから。
「琴葉には俺がいるから」
「千景……」
励ましてくれる千景の声が遠く感じる。
ダメなんだよ。俺は千景だけじゃなくて、みんなからも普通にしてもらわないと。
じゃなきゃ不安で押し潰されそうになるんだ。
千景、ごめんな。
俺、お前にまだ話してない事があるんだ。
ギフテッドだなんて軽いもんじゃない、もっと深くて俺といるのが嫌になるような話。
千景に嫌われたくなくて隠そうとしてんだ。
今は封印したもう1人の俺……
「って何暗くなってんだ俺ー!きっとお腹空いてるからだな!よし食うぞー!」
「…………」
「って千景もまだ食べてないじゃん?食欲ないなら俺が食べてあげよっか?」
「琴葉、おいで」
「へ?」
弁当を広げていただきますと手を合わせると、俺を黙って見ていた千景に手を引かれて、そのまま胸にスッポリ収まる形で抱き締められた。
ここ学校なのにすげぇ大胆だな。幸い屋上には他に誰もいないけどさ、だからかな?千景に抱き締められて泣いてもいいかなとか思っちゃったよ。
「約束しただろ。俺が癒してあげる♡」
「千景ぇ♡だいすきっ」
俺は笑いながら泣いた。
思えば誰かの前で泣くのは初めてだ。
だからか泣いたらダメな気がして笑っちゃったんだ。
「そう言えばさ、ローションとゴム手に入ったんだ。昨日紘夢に電話したらすぐに届けてくれたんだ。なぁ、土曜日って話だったけど、今日家来ないか?」
「え、今日!?ごめん、塾があるから……」
「そっか、昨日休んだしさすがに連日じゃ無理か」
「側にいたい気持ちはあるんだけど、ごめん」
「んーん、それじゃあ週末の楽しみにとっとこうぜ♪塾頑張ってな♡」
また塾か、と思ったけど、あまり千景に負担を掛けたくないから俺はいつものように明るくして気を使わせないようにした。
でも千景の事だから気にするだろうな~。
まぁ気にしてもらわなきゃ困るけどなっ!
俺は人がいないのを良い事に、千景の膝の上に乗ってチュッとおでこにキスをして、ニコーッと笑顔を作る。
出来るだけ体を密着させて、腕を千景の首に回して頭を愛おしく抱き締める。
「こ、琴葉?」
「少しだけこうさせて?癒されるんだ♡」
「でも……」
困ってる困ってる~♡
千景が困ってるのには学校でこんな事してるのもあるだろうけど、もう一つあった。
それは、完勃ちした俺のを押し当ててるからだ。
今日の放課後は断られたけど、今はまだ断られてないよ?
更にグリグリと押し付けるように下半身を密着させて、千景の耳の軟骨の部分をペロッと舐めて挑発する。
「琴葉っ!」
「愛してる♡千景♡」
俺を押し倒してキスをしてくる千景にドキドキしながら俺は身を任せた。
ああ、千景の事好きだなー。
学校でこんな事しちゃうぐらいにそれはもう好きで好きで仕方ない。
千景とエッチな事をしてると嫌な事も忘れられるからいい。
俺と千景は休み時間いっぱいを使って、いつ誰が入って来るかも分からない学校の屋上と言う場所で、スリルと興奮もいつも以上に、お互いを求め合った。
まだ大丈夫。
千景がいれば俺はまだ笑顔でいられる。
放課後、千景に一緒に帰れないと言われるまではいつも通りの笑顔で過ごせたんだ。
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