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3章 年下の友達
※ また俺と遊んでくれますか?
しおりを挟む※双葉side
貴哉といると不思議な気持ちになる。
俺は人付き合いが苦手で、特に親しくしたいとも思わなかったからずっとこのままで来た。
本当の自分はこんなに喋らないし、笑わない。
類といてもここまで話す事なんて無いと思うぐらいだ。
だけど、貴哉といると必要以上に話してしまう。
もっとこの人の事を知りたい。
そう思うんだ。
さっきジェットコースターで手を繋いだ時、貴哉の左手薬指に指輪があった。
あの赤い髪の人とお揃いかな?
そう思ったら少しモヤっとした。
貴哉にはあんなに素敵な恋人がいるんだ。
うん。貴哉に恋人がいない訳がないよ。
だって一緒にいてこんなにも楽しいんだもん。
今は俺と遊んでくれてるけど、今日が終わったら貴哉は高校。俺は中学校で離れてしまう。
こんな風に相手はしてくれなくなるだろうなぁ。
何か、寂しいなぁ。
「あー楽しかった!って結構暗くなって来たな~。そろそろ帰るか?」
俺と貴哉はお互いが乗りたい物を交互に乗って楽しんだ。
貴哉の言う通り、気が付けば空は暗くなり始めていた。
陽が落ちるのが早くなってきたなぁ。
「そうですね。貴哉、また俺と遊んでくれますか?」
「てかお前受験生だろ。ほどほどにしねぇとな」
「…………」
「んな悲しそうな顔すんなって!でも学校はちゃんと行った方がいいぞ。じゃないと俺みてぇになるぞ」
俺はそんな顔をしてたのか。
貴哉は笑いながらそんな事を言っていた。
貴哉は俺と会うの嫌なのかな。
だから遊ぶって言ってくれないのかな。
「あ、最後にあれ乗るか!お前の好きなやつ!」
「え?観覧車?」
貴哉は明るく笑ってキラキラ光る空高くそびえ立つ丸い乗り物を指差した。
乗りたい。貴哉と観覧車に乗りたい。
「それぐらいなら時間大丈夫だろ」
「貴哉……」
「ほら、行くぞ♪」
「…………」
俺は言われるがまま、貴哉の後をついて行き、観覧車の列に並ぶ。
さっき遊んでくれるって言ってもらえなかったのが引っ掛かって俺はモヤモヤしていた。
「もう18時か~。何か食ってくか?って言いてぇけど、遅くなっちまうしな~」
「大丈夫です。俺の親も仕事で遅いので、一緒に食べてくれると嬉しいです」
嘘だ。父親は遅くなる事もあるけど、母親は専業主婦だから家にいる筈だ。でも俺は学校終わってから直接塾に行ったと言えば済む話だ。
それよりも少しでも多く貴哉といられるなら親に怒られても良かった。
俺が嘘をつくと、貴哉はニシシと笑った。
「そっか?んじゃ軽く食ってから帰るか♪」
「……はいっ♪」
良かった。
まだ一緒にいられる。
観覧車に乗って、ゆっくりと進むゴンドラに揺られている俺と貴哉。
中は男二人でも少し余裕があるぐらい広くて、もう少し狭くてもいいのにと寂しく思った。
すっかり暗くなった夜景に俺と貴哉は目を輝かせた。
こんなにゆっくり夜景を見る事なんてないから、素直に感動した。
凄く綺麗だ……
「すげぇなぁ~。みーんなちっさく見える」
「ええ。本当に凄いです……」
まだ頂上を過ぎていないのに、俺はまた寂しくなった。
これを降りたらご飯を食べてそれで終わりだ。
貴哉とは次にいつ会えるか分からない。
もう会えないかも知れない。
いや、類が赤い髪の男に興味を無くさない限り会えるかもな……
ふと、目の前に座って外を楽しそうに眺めている貴哉を見て思い出す。
俺はこの人の事を騙して酷い事をしようとしてたんだ。
恋人と別れさせて好きでもないのに好きだと思わせて、適当に付き合おうとしていた。
それを思い出すと俺は震えた。
嫌だ。
貴哉にはそんな事したくない。
貴哉の幸せを壊すなんて、俺はしたくない。
もう会えなくなってもいいから、貴哉にはこのまま笑っていて欲しい。
じゃあ俺は類を裏切るのか?
そもそも今日は類の提案で貴哉と接触するつもりだったんだ。偶然先に俺と貴哉が出会ったからこうなったけど、もし予定通り類を通して会ってたら同じ気持ちでいられただろうか?
そんなのはもう分からない。
ただ今の俺はもう貴哉の事を類と同じぐらい好きになっていると言う事。
「ん?元気なくね?あ、思ったよりも高くてこえーのかぁ?」
ニヤニヤ笑って俺を茶化す貴哉。
ずっとこの時間が続けばいいのに。
俺は無理矢理笑顔を作って貴哉に笑い掛けた。
「はい。少しだけ。だからあまり動かないで下さいよー」
「…………」
今度は貴哉がムスッとして黙り込んだ。
この人の感情は良く変わる。
だから好きな事、嫌いな事が良く分かるんだ。
今は嫌な事があったんだと思うけど……
「貴哉?」
「嘘くせー笑い方のやつ。言いてぇ事があるなら言えばいいのに」
「は?」
「作り笑いバレバレなんだよ。俺そういう奴大嫌い」
「…………」
嘘?貴哉に笑顔を作ったのバレてたの?
それよりもショックだったのは、ハッキリと大嫌いと言われた事だった。
貴哉に嫌われた……俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
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