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4章 空のバースデーパーティー
※ 本日はバースデーパーティーに来て下さり、ありがとうございます
しおりを挟む※空side
一条さんと並んでステージに立つと、賑やかだった会場が静まり返った。
そして、会場の照明が暗くなり、俺達が立つステージがライトアップされ、マイクを持った一条さんがいつも通りに話し始めた。
『今日は早川空のバースデーパーティーに来てくれてありがとうございます♪私、パーティーの司会進行役を務めさせていただきます一条紘夢です!まずは今日の主役、空くんの挨拶からいただきましょう!』
堂々と何も見ずに慣れたように喋っていく一条さんを横で見ていて、ふいにマイクを渡されて俺は焦ってしまった。
みんなの前で挨拶するってのは聞いてたけど、予想以上の人の数に考えてた言葉が吹っ飛んだぜ。
とりあえず無難に挨拶して終わらせるか。
『えー、本日はバースデーパーティーに来て下さり、ありがとうございます……えっと……』
「空くん、リラックスリラックス♪いつも通りでいいんだよ」
言葉に詰まってると、隣にいてくれてる一条さんがニッコリ笑ってそう言ってくれた。
そうは言ってもこんな大勢の前でマイクを使って話すなんてした事ないんだ。何て言えばいいのかなんて分かる訳ないだろ。
俺が軽くパニックになってると、広間のドアの方から貴哉の大きな声が聞こえて来た。
「空ー!!何ショボい挨拶してんだ!!せっかく主役貰ってんだからここにいる全員を跪かせるぐれぇの事言ってみやがれ!!」
「貴哉……」
「あはは!貴ちゃんいたのー?今のウケるー」
会場にいるみんなが声のする方を見ていた。
そしてドアの近くにいた袴姿の貴哉にスポットライトが当たった。
「あ!?何で俺を照らすんだよ!おい誰だ!やめろこの照明!」
「貴ちゃーん!そのままこっち来て~♪」
一条さんの声に貴哉はハッとして、歩きづらそうにステージの方へ向かって来た。
ちゃんと足袋と草履まで履いてるし!
『はーい!みなさーん!ここで空くんの良き理解者であり、大親友であり、たまに喧嘩もするけど、でも何だかんだで一番のパートナーの秋山貴哉の登場でーす!みんな拍手~♪』
「なんっだその紹介の仕方はっ!友達だけでいいだろ!」
一条さんの紹介に、会場のみんなは拍手をするけど、貴哉は乱暴にマイクを奪い、みんなに向かって話し出した。
『あーあー!みんなも知っての通り俺だ!秋山だ!てか紹介なんていらねぇだろ?俺の事知ってる奴も知らねぇ奴も、興味があんなら話しゃいい!俺は面白ぇ奴は大歓迎だ♪それと空だけど、今はビビってヘタレになってっけど、これがなかなか良い男なんだ。それも話しゃ分かる!あー、大事な事言わせてくれ~!早川空は俺にとって一番なんだ♪一番側にいて欲しいと思えるような奴♪つー訳でパーティー始めるぞー?腹減ったー!』
貴哉のめちゃくちゃな挨拶に、会場のみんなは勿論、俺も一条さんも唖然としていた。
いや、俺は泣きそうだった。
貴哉らしい言葉に、そして、ここに来る途中で約束した事を本当に言ってくれたから……
「た、貴ちゃん?そ、それって……」
「おい何でパーティー始まらねぇんだよ。みんな固まってんぞ!司会なんとかしろ!」
『ああもうっ!皆さん!今日は最高級の料理と飲み物をたくさん用意しました~♪それからこの後もイベントをたくさん用意してるので最後まで楽しんでいただけたらと思います。これは今まで皆さんに迷惑を掛けた俺からの罪滅ぼしも兼ねてます。俺はここにいる二人に出会えて本当に良かったと心から思ってます。これからもよろしくね♪ってな訳でみなさん!バースデーパーティーの始まりです!グラスのご用意を!』
一条さんが言うと、みんなそれぞれ飲み物を手にして乾杯の時を待っていた。
この二人は凄いな。こんなに大勢の人の前で堂々としていられるなんて……
それどころか自分の思ってる事とかをちゃんと伝えてる。
ああ、俺も二人に会えて良かったな。
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