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6章 鬼の目にも涙
※ え、これ涙?
しおりを挟む※湊side
茜を残して喫茶店を出て駅まで一人で歩く。
俺の思った通りの結果でもう笑うしかねぇわ。
んー、茜が犬飼に惹かれてたのは薄々気付いてたんだけどよー?でもまさか行動に移しちゃうとはなぁ~。それはアウトですって。
いくら茜でも浮気だけは許せんよ。
本来なら二人共処刑してるけど、もういいかなって感じ?
もう犬飼の相手も飽きたしな~。
そう俺は今を生きる男~♪
細かい事は気にしない~♪
「んな訳ねぇだろうがクソ野郎共がっ!」
俺は側にあったガードレールを思い切り蹴飛ばす。あ、ヘコんじまった!見つかったらヤベェから何もなかったかのように早足で歩き出す。
んー、正直さ、茜の事はまだ好きよ?
でもさ、浮気はダメなんだよ、浮気はよ。
このまま茜といても思い出して手出しちゃいそうでさ~。
茜に手を上げるのは浮気よりダメだからね。
だから俺は茜と別れる事にしたって訳。
本当は辛いよ!別れたくねぇよ!
んでももう決めた事だから振り向かないぜ!
はぁ、俺って本当自分から好きになった奴とは上手くいかねぇよなぁ。
「…………」
まぁ茜とは続いた方かな。
なんだかんだ楽しかったし、真面目過ぎるところは面倒だったけど、可愛いとこあんだよな。
自分の意見をハッキリ言えるけど不器用でさ、でもいつも一生懸命なの。
人前でベタベタするの恥ずかしがるのとかも可愛いかったな~。
あー、やめやめ。
別れた奴の事なんか考えてもぶん殴りたくなるだけだしな。
それよりも次誰追っかけようかな~?
またいーくん?でもいーくんはもう貴哉のってイメージ強いしな~。なんなら貴哉追っかけていーくんとバチるのも面白れぇかもな♪
あはは~♪
ってやっぱ全然面白くねぇわ。
今は何考えても笑える気しねぇわ。
無理。
さすがの俺も結構キツい。
今なら犬飼にも負けそう。
いや、負けたのか。
ムカつく。
俺がいろいろな感情でモヤモヤしていると、前の方にデカい黒のパーカー着たやんちゃそうな格好した生意気そうな黒髪の男と、柄物のワイシャツの上にデニムのジャケットを着た茶髪にハイライトの入った見るからにチャラそうな男二人組が歩いて来た。
あ?あの二人ってあの二人じゃね?
「あ!桃山!」
生意気そうな男が俺に気付いて近寄って来る。
やっぱり、貴哉と空だ。
まぁここら辺にいるとは思ったけどな。
どうせ茜が心配だから近場ウロウロしてたんだろ。
俺は今は相手する余裕が無かったからスルーしようと思った。
「カツアゲ辞めて下さい。ボクお金無いです」
「何言ってんだ?おい、茜はどうしたんだよ?」
やっぱり茜の出待ちですか。
貴哉は俺の冗談にピクリとも笑わずに、険しい顔して聞いて来た。
空も隣でジッと俺を見ている。
「茜ならそこの喫茶店にいるよ。話は終わったから好きにしろよ。じゃあな」
「え、待てよ!お前大丈夫か?」
俺が立ち去ろうとすると、貴哉に腕を掴まれて止められた。
何の心配だよ。
お前らが心配してんのは茜の安否だろーが。
俺は真っ直ぐに見上げて来る貴哉を見た。
「俺はへーき。腕離してって」
「だってお前、泣いてんだろ?」
は?何ですと?
いやいや、俺が泣くってそんなのあり得なくなーい?
すると、自分の目からポロッと溢れる雫に気付く。
え、これ涙?
「た、貴哉、離してやれって」
「でも桃山がっ」
空が気を使って貴哉を俺から離そうとしてる。
マジで泣いてんのか俺。
うわ、失恋して泣くとか最悪。
「あり得ねぇ」
「あ、おい!」
「貴哉!喫茶店行くぞ!」
俺は貴哉の腕を振り払って無理矢理立ち去ろうとする。
貴哉はまだ何か言いたそうだったけど、それを空が止めていた。
クソ。何で俺が泣かなきゃならねぇんだ。
よりにもよってあんなクソガキ共の前でっ。
俺は濡れた頬を乱暴に拭って駅まで急ぐ。
クソクソクソッ。
こんなの俺じゃねぇ!
浮気されたぐらいで、振られたぐらいでこの俺が泣く筈がねぇ!
クソ野郎!茜の奴!
俺をこんな風に変えやがって!
ムカつくけど、大好きだこの野郎っ。
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