【完結】どいつもこいつもかかって来やがれ5th season

pino

文字の大きさ
45 / 219
1章 二学期中間テスト

俺、あの階段登るの怖ぇんだけど

しおりを挟む

 初めて空の実家に来た。
 空からは聞いてたけど、ここ人住んでんの?ってぐらいボロボロのアパートで、二階建てだけど、階段とか細くって今にも崩れそうだ!いつもお洒落して身なりを気にする空が住んでいた事が信じられなかった。
 俺がアパートの外観に呆気に取られてるのを見て空はため息をついて言った。


「だから言っただろ?ここに中学まで住んでたんだ」

「いや、想像以上でビックリしたわ」

「もー、誰かを連れて来たの貴哉が初めてなんだからな~」

「まじ?それ嬉しいじゃん♪なぁどの部屋?俺、あの階段登るの怖ぇんだけど」

「安心して。一階だから」


 自転車をその辺に停めて歩いて行く空に付いて行く。壊れそうな階段を登らなくて済んでホッとしたわ。
 空はすぐ手前の部屋のドアを鍵を使わずに開けた。表札のとこに名前は無かった。ここが空の実家かぁ。

 中に入ると、すぐにキッチンがあって、左側にはドアが開いたままの風呂場があって、トイレも一緒に見えた。そしてガラス張りのドアの向こうに部屋が見えて、小さなテーブルと、その横に布団が敷かれていた。


「母さん寝てるみたい」

「えっ!母ちゃんいんの!?」


 入った時に人の気配が無かったから留守かと思ってたら、どうやら寝てるらしい。て事は布団かと思って見てみると、確かに布団は膨らんでいて、茶髪の長い髪の頭が見えた。
 え、俺入って良かったのか?てか部屋ってここだけ?


「夜仕事だから昼間はこうして寝てるんだ。そんで夜中に男連れ込んでる」


 そう言って空は床に落ちてたティッシュと使用済みのゴムを拾ってキッチンにあったゴミ袋に捨てていた。
 

「どうする?起こす?」

「いや、悪いからいいよ」

「そっか。んじゃ帰る?」

「うん」


 さすがに仕事で疲れて寝てる奴を起こすとか子供みてぇな事は出来ねぇ。てか空の物なんかどこにあるんだ?お世辞にも広いとは言えない部屋はここだけみたいだし、空は本当にここに住んでたのか?

 俺達は空の母ちゃんを起こさないようにそっとアパートを出た。


「なぁ、鍵掛けなくていいのか?母ちゃん寝てるじゃん」

「鍵は母さんしか持ってないし、いつも掛けてないから」

「危なくね!?今空達出てっちゃってるから母ちゃん一人なんだよな!?」

「大丈夫でしょ。誰もこんなとこに女が一人で住んでるとは思わないだろ」


 なんつーか、俺には理解出来ねぇような事ばかりで驚きっぱなしだった。
 でもこれが空にとっての普通なんだよな。
 結局空の母ちゃんには会えなかったけど、俺は何となく空に申し訳なくなった。


「空、無理矢理行きたいとか言ってごめんな。ここまでだとは思わなかった」

「はは、貴哉が謝るとか相当だな。ほんと、倉持に予定があって良かったと思ってるよ」

「空……」

「ん。気にすんなよ。貴哉だから連れて来たんだ。母さんにもいつかは会わせるから」


 自転車の前で俺は俯いて空のカーディガンの裾をギュッと握った。すると、空はその手を取ってギュッと握ってくれた。
 自然と手を繋いで歩く俺達。
 俺の知らない空をまた知れて嬉しい筈なのに、今は何だか悲しかった。とにかく空を一人にしたくなかった。俺も一人にはなりたくなかった。


「貴哉、俺の事嫌いになった?」

「えっ!いきなり何で!?」

「あんなとこに住んでたからだよ」

「なる訳ねぇだろ!」

「なら良かった」

「なぁ、空」

「ん?」

「キスしたい」

「……は?」

「空としたいんだ。ダメか?」

「いやいや、ダメなのは貴哉だろ?桐原さんいるじゃんっ」

「キスしてくれねぇなら今すぐこの手離せ」


 繋いだ手を見ながら言うと、空は焦ったように笑っていた。俺は笑わずに真っ直ぐ空を見た。


「本当無茶苦茶だよ貴哉は……」


 空は辛そうな顔をして手を握ったまま俺にキスをした。俺も待っていたかのように目を閉じる。
 フワッと空の匂いがして、俺は更に空を求めたくなった。
 キスだけでもアウトなのに、これ以上したらまた空を傷付けちまうのに、俺は空が欲しくてたまらなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...