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3章 文化祭まで一週間
※ こちらへ卯月が来なかったか?
しおりを挟む※茜side
俺は久しぶりに感じた怒りに身を任せて廊下を歩いていた。目的は演劇部部長である卯月恭弥を探す事。
卯月は普段はおおらかで笑顔の絶えない男だ。誰に対しても優しくて俺はそんな卯月の事を尊敬していたんだ。
そんな卯月の様子がおかしかったんだ。
俺は、もっと演劇部の練習時間が欲しくて、生徒会長である同じ学年の前田に交渉してみたんだ。すると、案外良い答えが返って来たから部長である卯月にも報告をした。
が、卯月は嫌な顔をして、何も言わずに立ち去ろうとしたんだ。あの卯月がだ。きっと一緒に喜んでくれると思っていた俺はすぐにどうしたんだと聞いたよ。だけど、「別に」と言ってその後も態度がおかしかったんだ。
俺もこんな性格だから黙ってはいられずに問い詰めようとしたら、卯月が反抗して来て見事に大騒ぎになってしまったと言う訳だ。
卯月がどうして俺にあんな態度を取ったのかを聞きたかった。俺に悪い所があるなら謝るし、そうじゃないならそれはそれで問題だからちゃんと話し合いたかった。
そしてその騒ぎに仲裁に入ってくれたのが今俺の両脇にいる犬飼と小平だ。
卯月を探す俺を止めようと体育館から玄関までの道のりをずっと付いて来ていた。
「くそ!卯月の奴どこへ逃げたんだ!」
「二之宮落ち着いてって!」
「そうだぞ茜ちゃん!らしくねぇよ!」
俺が喋ると犬飼には腕を、小平には肩を掴まれて落ち着けと止められた。
ここで玄関の方からこちらを見ている二人がいる事に気付く。一条と早川だった。
そうだ、あの二人に卯月がこちらへ来ていないか聞いてみよう!
ちょうど向こうの二人も俺達を見付けて近付いて来ている所だった。
「茜ちゃーん?そんなに取り乱して何かあったの?」
「一条!こちらへ卯月が来なかったか?」
「卯月ぃ?見てないけど、トラブルって茜ちゃんと卯月なのかー?」
「貴哉から演劇部でトラブったって連絡が来たんですよ。貴哉はどこにいるんですか?」
一条と早川は卯月を見ていないらしいな。
秋山がこの事を知っていると言う事は卯月に関わっている可能性が高いな。もしかして秋山が卯月を匿っているのか?
「秋山は見てない。電話を掛けてみよう」
「二之宮、卯月に会っても怒鳴ったりしたらダメだぞ?落ち着いて話さなきゃまた逃げちゃうからな」
「あいつの態度次第だな。まったく、文化祭まで残り少ないって言うのにっ」
俺が秋山に連絡を取ろうと電話を掛けてると、一条と早川に後ろから付いて来ていた雉岡がこの件の事を話していた。
あまり騒ぎを広めたくないな。早々に話し合って片付けないと演劇部自体に支障が出てしまう。
電話を掛けると、しばらくして秋山が出た。
「あ!秋山!今どこにいる!?」
『茜、お前今怒ってんの?』
「いや、怒ってないぞ?少しだけ落ち着いた」
『ふーん。じゃあ完全に落ち着いたらまた電話してー』
「なっ!?どう言う事だ!?おいっ秋やっ……あ!切られた!」
絶対卯月を匿っているじゃないか!
しかも秋山は卯月側に付いたのか。これは厄介だな。出来れば秋山とは揉めたくないのに。
俺の様子を見て周りが心配そうに聞いて来た。
「茜さん、貴哉どこにいるって言ってました?」
「教えてくれなかった。俺が怒ってると思ってもっと落ち着いたら電話してくれと」
「卯月ってば秋山といるの~?て事はいーくんもかなぁ?」
「だろうな。茜ちゃん、とりあえず落ち着くんだ。そして向こうに話し合いの場を設けてもらおう。な?」
犬飼に宥められながら俺は思った。
何故俺が向こうに気を使わないといけないんだ?だって、先に変な態度を取って来たのは卯月じゃないか!俺は悪くないのに!ここにいる奴らも、秋山もみんな俺が悪いみたいに言いやがって!
再び怒りが込み上げて来て俺は両脇にいた二人を振り切って一人で玄関に向かった。
「ちょっと茜ちゃん?どこ行くのー?」
「帰るんだ!もうあんな奴知らん!」
「えー!茜さんどうしちゃったんですかぁ!?」
一条に呼び止められるけど、俺はそのまま玄関で靴を履き替える。追って来た早川が聞いてくるけど、俺でももうどうしたらいいのか分からなかった。
どうしていつも俺はいつもこうなんだ。
周りとうまくやっていけない自分に腹が立つ。
もう誰も追って来ないように一度後ろを振り返って、こちらをジッとみてる集団に向かってキッと睨み、俺は一人で学校を出た。
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