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3章 文化祭まで一週間
※ きっとこういう人の事をスーパー高校生って呼ぶんだ
しおりを挟む※伊織side
俺は二之宮に急かされて急いで衣装に着替えてステージに上がる。一応主役のドラゴン役だから出番が多い。俺が来るまでは代役の奴が繋いでてくれたみたいだ。
「いーくんおそーい!いーくんじゃないと調子出ないよ~」
赤茶色のロングヘアーのウィッグを付けて中世の物語に出て来そうな町娘の衣装を来たヒロイン役の七海に言われて、俺は「悪かった」と謝っておいた。
本番は明日で限られた貴重な練習時間なのに、演劇部に迷惑を掛けてしまった。
でも、俺はそれよりも貴哉の事で頭がいっぱいだった。
きっと貴哉は早川と一線を越えるような事をした。またはそれに近い事を。
玄関で並んでる二人を見た時、早川を殴りたい気持ちだった。貴哉にも問い詰めて、もう早川とは縁を切ると言わせたかった。
そんな事をしたら貴哉も演劇部も明日に迫った文化祭も全て壊し、失う事になる。
その中でも貴哉だけは失いたくなかった。
込み上げる怒りを堪えて二人にはいつも通りに振る舞った。ちゃんと出来たかは自信はねぇけど、貴哉とも普通に話せたしまだ大丈夫だ。
今はまだな。
でもいつまでも保たないのは分かる。どうにかして貴哉には俺だけを見てもらわないと、いつか俺は早川を殴るだろう。
そんな事をすれば貴哉も良い思いはしないのは分かってる。最悪俺から離れて行くだろうな。
「桐原!何ボーッとしてるんだ!ここのシーンからやるぞ!」
二之宮に声を掛けられて我に返る。
はぁ、今は演劇部に集中しよう。
その後はいつも通りに演技をこなして、前半の部までをやり遂げる事が出来た。
それにしても貴哉の姿が見えないけど、まだ着替えてるのか?貴哉が演じる筈のデシーノの役はまだ代役のままだった。
「秋山の奴、遅刻はするわ出て来るの遅いわで何をやってるんだ!連れて来る!」
痺れを切らした二之宮がステージ袖から裏へ消えて行った。
俺も早く貴哉の姿を見て安心したい。側にいる。笑ってる。「伊織」って呼んでくれる。そう安心したかった。
「あ、広報部だ~。次うちの番なんだね~」
七海が気付いた先にいたのは、現生徒会長の侑士と、広報部の数人だった。
去年もやってたけど、広報部は文化祭前日と当日にそれぞれの催し物の取材をしてそれを記事にして全校に配る。前日ではそれぞれの活動内容や準備風景を写し、当日は最も盛り上がったクラスやニュースなどを取り上げていた。
下でステージ上の動きのチェックをしていた演劇部部長の卯月が声を掛けられて挨拶をしていた。
「てか侑士ってばこないだも来てなかったぁ?そもそも生徒会長が広報部に付いてくる理由あるの?」
「そう言えば来てたな。あいつ、暇じゃないだろうに」
前の生徒会長の葵くんはわざわざ部活の様子なんて見廻ったりしてなかった。だけど、侑士はちょこちょこ見廻りと言って姿を現していた。
そんな中、ステージ裏から詩音さんが一人の女の子の手を引いて現れた。でもおかしい。ここは男子校だ。女の子なんている筈がないんだ。
その子は金髪で耳ぐらいの高さで二本に縛り、毛先は綺麗にカールしていた。そして服装はどこかで見覚えのあるショート丈のジャケットに、かなり短いショートパンツと白のニーハイ。てかあれってデシーノの衣装じゃね?
え、待て。あの女の子の顔って、貴哉……?
「みんな注目~♪今日は可愛い子を紹介するよ~♪」
「なになにー?何が始まるのかなぁ♪」
ワクワクしてる七海は詩音さんの隣にいる金髪ツインテールの女の子の姿をした貴哉を見て「可愛いー♪」と興奮していた。
いや、可愛いけど、あの髪どうした!?
「ここにいる美少女が新しいデシーノを演じてくれる事になったんだ♪みんな仲良くしてくれたまえ♪」
詩音さんからのいきなりの紹介に、騒つく演劇部達。みんなはあの美少女が貴哉だって気付いてないのか?
てか貴哉ニヤニヤしてる?ああいうの嫌がりそうなのに、まさか楽しんでる?
「じゃあみんなに自己紹介してくれるかい?」
「おう♪……じゃなかった!はいはーい♪私はあの超有名な魔法使いマジョリーナ様の一番弟子のデシーノだよ~⭐︎まだ見習いだけど、甘くみたら痛い目見るんだからなっ⭐︎」
貴哉はノリノリで、台本には無いセリフをスラスラと喋り出した。丁寧に、ウインクと目元にピースまでして。
俺は何が起こったのか理解するのに苦戦していた。
「えっあの声って!もしかして金髪美少女って秋山かぁ~!?」
ここで七海が気付いて大きな声を上げると、それに反応した周りからも次々と驚きの声が上がった。
「小平くん、お見事~♪僕の急な思い付きでデシーノの髪型、髪色を変えてみたんだ。理由はもう少し華が欲しかったからだ。貴哉くん本人もこの通りより演技に磨きがかかっている。みんなが前から一生懸命に準備して来たのは僕は良く知っているよ。だからこの急な変更に反対する気持ちも分かるよ。でも、こういった革命を起こす事も大事だと思うんだ。良いか悪いかはやってみないと分からないからね。脚本を書いている僕だから良く分かるんだ。人生なんてのは筋書き通りには進まない事もある。だからこそ!それを己の力で乗り切る力をみんなには付けてもらいたいのだよ!さぁ!僕の意見に賛同して、ニューデシーノを受け入れる覚悟のある者は大きな拍手を!!」
すぐに体育館が大きな拍手でいっぱいになったのは言うまでも無い。
薗田詩音ワールドにみんなは盛り上がっていた。本当に凄い人だなと俺も拍手をした。
自分が思い付いた事は何でもやりたがって、本当にそれを実現させてしまう力が彼にはある。
脚本だけじゃなく、物語のジャンルまで変えてしまったり、全くの素人を演者として指名して迎えたり、誰もが無茶だと思う事をやりたがり、実行する。そして周りを操るかのように自分の思うままに賛同させてしまう発言力。
だからみんな付いて行くんだろうな。
きっとこういう人の事をスーパー高校生って呼ぶんだ。
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