5 / 5
解決編
しおりを挟む「ようこそ皆様お集まりくださいました。この事件の真相を、この場で明らかにして見せましょう!」
言うだけ言って、パトナは僕に目配せした。後はよろしく、ってやつだ。まぁこうなるとは思ってたよ。
ごほんと僕は咳払いをして、集まった三人の容疑者、コアクトー、ハンヤ、ニクキリを眺めた。
三人はそれぞれ嫌そうな顔をして僕の言葉を待っている。やり辛いなぁ。
「えーと、マネロン村長は深夜一時から三時の間に、とてつもないオーバーダメージを受けて死んでいた。それが可能な人物が、この中に一人だけいます」
「……つまり?」
「……犯人は、この中にいます」
パトナのパスに乗っかって、僕はお決まりのセリフを吐いた。結構恥ずかしいな、これ。
「あの火力を出せる人間が、チイト以外にいるのかよ! そこの肉屋かァ?」
「俺じゃないです! アリバイがあるんです!」
「私達にはそもそも攻撃力がないんだけど」
コアクトーとハンヤは疑わしげな目をニクキリに向けた。まぁまぁ結論を急がずに。僕は騒ぎ出した容疑者達を手で制し、
「この犯行に、攻撃力はいりません」
「はぁ!?」
容疑者達もなんか驚きの声を発していたが、パトナの声が大きすぎてなんにも入ってこなかった。耳元で叫ばないでね。
「攻撃力がなくてもいい……? まさか、レジェンド級アイテムですか?」
何かに気づいたらしいニクキリが呟く。察しが良くて大変助かる。
「そう。凶器に使われたのは、村長が独自にコレクションしていたアイテム――龍牙のナイフです」
レジェンド級アイテムの力を十分に引き出せれば、本人のレベルを大幅に上回った火力を叩き出すことができる。レベルの低いコアクトーやハンヤでも犯行は可能だ。
だがこれには一つ、問題点がある。
「俺のスキルは【鍵開け】だ。ナイフなんて使いこなせねェぞ!」
「私は【料理上手】。明らかに無理って、わかるよね」
スキルの不一致だ。彼らでは龍牙のナイフの潜在能力を引き出すことはできない。
――では、ナイフでなければどうか?
「ちょっとチイト、それってどういう……」
「思い出して。ニクキリさんは、村長が何を持ってると言っていた?」
「えっと、楽器や器に、……包丁? まさか」
そう、そのまさかだ。
「楽器で殺したってこと?」
違うね。
「この龍牙のナイフ……本当はナイフじゃなくて、包丁なんじゃない?」
僕はスキル【物質転移】で村長宅から取り寄せた龍牙のナイフ、もとい包丁を皆に見せた。コアクトーがなんか騒ぎ始めたが、パトナをけしかけて黙ってもらった。物理的に。
「あっ、それです、俺が聞いたのは。ナイフにも見えるけど、それは確かに包丁です」
「だよね。で、これが包丁なんだとしたら。この龍牙の包丁を使いこなせる人物が、この中に一人だけいる」
僕は人差し指をまっすぐに、その人物に突き付けた。
「ハンヤさん。……犯人は、貴方だ」
名指しされたハンヤは、わなわなと口元を震わせた。表情には明確な怒りが宿っている。
「貴方のスキル【料理上手】なら、この包丁を使いこなせるんじゃないですか?」
「馬鹿馬鹿しい。たったそれだけのことで、私が犯人だって言うの?」
「もちろん、これだけじゃないですよ。パトナ、君、朝に会ったときハンヤさんになんて言われてたんだっけ?」
コアクトーにヘッドロックを決めていたパトナは、僕に名前を呼ばれて顔をあげた。
「なにって……『風呂場で大音量で歌うのやめろ』って」
「おかしいとは思わなかった?」
「私の美しい歌声を邪険に扱った点のこと?」
違うね。
「ハンヤさんの家は遠く離れてるのに、なんで風呂場で歌う君の声を聞いているのかな」
僕はハンヤに視線を向けた。彼女は顔面を真っ青にしながら、自分の口元を覆い隠していた。
「そ、それはたまたま……」
「たまたま? 深夜一時に? その時間は寝てたって言ってましたよね」
ハンヤは暫く言葉を失って、助けを求めるみたいに視線をあちらこちらに彷徨わせていた。だが僕の呟きがきっかけか、程なくして力なくその場に崩れ落ちた。
「……そう。私が殺ったの。ちょっとナイフを刺しただけのつもりだったのに、いきなりマネロンが真っ二つになって。……それが包丁、それもレジェンド級のものだなんて、知らなかった」
偶然が重なった事故みたいに言うけど、ナイフを刺した時点でアウトですからね。
「あの人が悪いの! あの人、私を捨て」
「あ、理由はいらないわ。興味ないから」
パトナはハンヤの告白パートをばっさり切り捨てた。酷いなぁ。僕も興味ないけれども。
抜け殻みたいになったハンヤは、ほどなくして村人達の手によってリューチジョに連れていかれた。明日にでも隣町の憲兵がやってきて、彼女を捕まえてくれるだろう。
マネロン村長オーバーダメージ殺人事件。これにて一件落着である。
「なんか意外ね。あの女、素直に罪を認めるタイプじゃなさそうだったのに」
「ああ。僕が【精神感応】スキルで自白を促したからね」
「はぁ!? アンタそれ、最初からやり」
「探偵ごっこ、楽しかったね」
食い気味に僕が言うと、釈然としない顔のままパトナは幾度か口を開け閉めしていたが、……やがて溜息と共にそうねと呟いた。
そうして、とびきりの笑顔で言ったのだった。
「また一緒に楽しいこと、しましょうね!」
完
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる