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再会
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数年前に抱いていた“わだかまり”。
でも、心のどこかで、あれは何かの間違いで、私の勘違いだったんだ・・・と思いたかった。
しかし、それを確かめる勇気はなかった。
Kさんとの思い出は思い出として、心にしまっておこうと思った。
そして、あるきっかけから始めたFacebook。
昔のSジム時代の仲間たちと、次々に繋がっていく楽しさ。
「Kさんがコブシさんの連絡先を教えてほしいとの事でした。どうでしょう?」
ある日、ジムのOB会があったらしく、かつてのジム仲間のMさんからメールをもらった。
(あー、やっぱり私の勘違いだったんだ!)
Kさんが私とコンタクトをとろうと思ってくれている。
それだけで、充分だった。
その瞬間から“わだかまり”は影も形もなくなった。
「モチロン!」
私は本当に嬉しかった。
翌日、見慣れない番号からの着信。
Kさんだと思った。
「コブシくん・・・ですか?」
懐かしい声。
15分くらい話しただろうか。
「Kさん、少し会えないですか?」
たまたま、私はその頃、仕事でKさんと同じ県にいた。
しかし、あと数日で、私はこの県を離れてしまう。
今しかないと、内向的な私にしては珍しく積極的に誘ってみた。
忙しいKさんの都合も考えず、失礼かなと言ってから思った。
でも、Kさんは快くOKしてくれた。
もう人生の半分過ぎているかもしれない歳になって、つくづく思う。
すべての事は偶然なんかじゃなく、必然なんだと。
だから、あの“わだかまり”も、私の人生を少しだけ楽しくするために与えられたものなのかなと。
こんな風に、神様からのギフトがあるたびに、生きる活力が湧いてくる。
若い時にも、神様からのギフトはあったのかもしれない。
しかし、「感謝する」という受け皿が若かりし頃にはあまりなかったから、気づかなかったのかもしれない。
幸せって、自分が踏んづけたり、蹴とばしたりしていた足元に転がっているんだなぁと、つくづく思う。
Kさんと会う前日は、緊張してあまり眠れなかった。
駅で待ち合わせて、久しぶりに会うKさんは、こちらが驚くほど穏やかな顔をされていた。
当時の雰囲気と変わっていなかった。
Kさんは30数戦も歴戦の強者と戦っているから、もっと凄みのある雰囲気をしているのかと思っていた。
しかし、話しているときにふとした瞬間の表情や目は、やはりこちらがひるむ程の凄みを感じた。
所属していた関西のジムの第一線で活躍していたからこそ話せる、私の知らない話。
Kさんは、驚くことに、世界的に有名な世界チャンピオンとも戦っていた。
日本人で一人いるけれど、それは、その世界チャンピオンが有名になる前。
Kさんと闘った時は、複数階級制覇していたバリバリの頃。
最後まで倒れることを拒み、レフリーストップで負けた。
しかし、現地のファンからは英雄視されるくらいに、素晴らしいファイトだった。
後に、ナンバーというスポーツ雑誌で、そのチャンピオンが特集された時のインタビューで、Kさんのことはよく覚えていると言っていた。
あれだけ歴戦の強者と対戦しているチャンピオンが覚えているくらいの選手だったということ。
私は、我がことのように嬉しかった。
ただ、在日韓国人ということで、日本ではあまり注目されなかった。
私は、それが悔しかった。
それに、辰吉選手との秘話など、いちボクシングファンのようにKさんの話を聞いていた。
たまに、異なる意見になり白熱する場面もあったけれど、それも昔、さんざん殴りあいをしてわかりあえているからこそ、遠慮なく話せた。
3時間があっという間に過ぎた。
お互い次の日、仕事もあるし、帰ることにした。
Kさんとは、それ以来、会ってないけれど、年に数回短い文面でメールのやり取りをしている。
心の根底で繋がっている、そんな感じだ。
帰り際、Kさんが言った。
「コブシくん、これは冗談じゃないんだけれど、僕、何年か前、探偵ナイトスクープに手紙だしたんだよ。」
話によると、「〇〇をやっている、元ボクサーの・・・」と、私を探して欲しいとの依頼をしたらしい。
いや、もう、ホントに言葉で表現できないほど嬉しかった。
というか、キダタローさんよ~!
ゲップ連続何回できるか?みたいな、しょ~もない依頼うけるんやったら、Kさんの依頼受けろっちゅ~の!
あ、キダタローさんは、あの当時、局長とちゃうか。(笑)
でも、心のどこかで、あれは何かの間違いで、私の勘違いだったんだ・・・と思いたかった。
しかし、それを確かめる勇気はなかった。
Kさんとの思い出は思い出として、心にしまっておこうと思った。
そして、あるきっかけから始めたFacebook。
昔のSジム時代の仲間たちと、次々に繋がっていく楽しさ。
「Kさんがコブシさんの連絡先を教えてほしいとの事でした。どうでしょう?」
ある日、ジムのOB会があったらしく、かつてのジム仲間のMさんからメールをもらった。
(あー、やっぱり私の勘違いだったんだ!)
Kさんが私とコンタクトをとろうと思ってくれている。
それだけで、充分だった。
その瞬間から“わだかまり”は影も形もなくなった。
「モチロン!」
私は本当に嬉しかった。
翌日、見慣れない番号からの着信。
Kさんだと思った。
「コブシくん・・・ですか?」
懐かしい声。
15分くらい話しただろうか。
「Kさん、少し会えないですか?」
たまたま、私はその頃、仕事でKさんと同じ県にいた。
しかし、あと数日で、私はこの県を離れてしまう。
今しかないと、内向的な私にしては珍しく積極的に誘ってみた。
忙しいKさんの都合も考えず、失礼かなと言ってから思った。
でも、Kさんは快くOKしてくれた。
もう人生の半分過ぎているかもしれない歳になって、つくづく思う。
すべての事は偶然なんかじゃなく、必然なんだと。
だから、あの“わだかまり”も、私の人生を少しだけ楽しくするために与えられたものなのかなと。
こんな風に、神様からのギフトがあるたびに、生きる活力が湧いてくる。
若い時にも、神様からのギフトはあったのかもしれない。
しかし、「感謝する」という受け皿が若かりし頃にはあまりなかったから、気づかなかったのかもしれない。
幸せって、自分が踏んづけたり、蹴とばしたりしていた足元に転がっているんだなぁと、つくづく思う。
Kさんと会う前日は、緊張してあまり眠れなかった。
駅で待ち合わせて、久しぶりに会うKさんは、こちらが驚くほど穏やかな顔をされていた。
当時の雰囲気と変わっていなかった。
Kさんは30数戦も歴戦の強者と戦っているから、もっと凄みのある雰囲気をしているのかと思っていた。
しかし、話しているときにふとした瞬間の表情や目は、やはりこちらがひるむ程の凄みを感じた。
所属していた関西のジムの第一線で活躍していたからこそ話せる、私の知らない話。
Kさんは、驚くことに、世界的に有名な世界チャンピオンとも戦っていた。
日本人で一人いるけれど、それは、その世界チャンピオンが有名になる前。
Kさんと闘った時は、複数階級制覇していたバリバリの頃。
最後まで倒れることを拒み、レフリーストップで負けた。
しかし、現地のファンからは英雄視されるくらいに、素晴らしいファイトだった。
後に、ナンバーというスポーツ雑誌で、そのチャンピオンが特集された時のインタビューで、Kさんのことはよく覚えていると言っていた。
あれだけ歴戦の強者と対戦しているチャンピオンが覚えているくらいの選手だったということ。
私は、我がことのように嬉しかった。
ただ、在日韓国人ということで、日本ではあまり注目されなかった。
私は、それが悔しかった。
それに、辰吉選手との秘話など、いちボクシングファンのようにKさんの話を聞いていた。
たまに、異なる意見になり白熱する場面もあったけれど、それも昔、さんざん殴りあいをしてわかりあえているからこそ、遠慮なく話せた。
3時間があっという間に過ぎた。
お互い次の日、仕事もあるし、帰ることにした。
Kさんとは、それ以来、会ってないけれど、年に数回短い文面でメールのやり取りをしている。
心の根底で繋がっている、そんな感じだ。
帰り際、Kさんが言った。
「コブシくん、これは冗談じゃないんだけれど、僕、何年か前、探偵ナイトスクープに手紙だしたんだよ。」
話によると、「〇〇をやっている、元ボクサーの・・・」と、私を探して欲しいとの依頼をしたらしい。
いや、もう、ホントに言葉で表現できないほど嬉しかった。
というか、キダタローさんよ~!
ゲップ連続何回できるか?みたいな、しょ~もない依頼うけるんやったら、Kさんの依頼受けろっちゅ~の!
あ、キダタローさんは、あの当時、局長とちゃうか。(笑)
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