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制裁
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遠藤とは3Rスパーリングする事になった。
お互い、体を温める為、シャドーボクシングを2ラウンドくらいした。遠藤のシャドーを見ると、アマチュア出身らしいスピードののったパンチを繰り出していた。
勇二はキャリアの中で、リングに足の裏以外つけた事がない。おそらく遠藤は勇二の打たれても怯まないスタイルに驚く事だろう。
「じゃあそろそろグローブつけて始めるか!」
会長の合図で2人グローブを付け始めた。
14オンスのメキシコ製のグローブ。
勇二はメキシコ製のグローブが好きだった。
メキシコ製は日本製のウィニングに比べて、ナックルパートの部分が薄い。だから殴っていてもテンションが上がり、手数が多くなる。
ゴングではなくブザーの音でラウンドが始まった。。
勇二のスタイルはバックギアが壊れた前進あるのみのバリバリのファイターだった。
お陰で高校生の時にはすでに鼻が潰れていた。その根性を認められて先輩たちに可愛がられた。
遠藤が出す小刻みなジャブをダッキングでかわしていく。
アマチュアでは、上体を前に倒しすぎるとすぐ反則をとられる。
なので勇二のようにダッキングで前に前に出てくる選手はあまり経験がないだろう。
何発かパンチをもらったけれど、それも計算のうち。
パンチが当たっているのにグイグイ来られると、自分の攻撃が効かないのかな?と、不安に陥る。
だいたい遠藤のパンチのテンポが読めてきた。この時点で勇二はまだ攻撃らしい攻撃はしていない。
次の段階に移す。先程までは避けるだけ。
今度はパンチを当てられる距離、もう一歩踏み込んだ。
だが、まだ打たない。 打てる距離まで詰めて離れる。
それを繰り返す。
何故、打たないのか?
遠藤は相当、恐怖を感じただろう。
勇二は思った。
練習生たちが味わった恐怖が分かっただろうか?
1R終了のブザーが鳴る。
「勇二、行っていいよ!」
会長からゴーサインが出された。
勇二は次のフェーズに移す。2R目、攻撃を開始。
遠藤は1Rで相当恐怖感を抱いたらしく、完全に腰が引けていた。もう、逃げる為のパンチしか打ってこなかった。
勇二が軽いパンチを出すだけで極端に逃げ出した。
見る見るうちに肩で息をし出した遠藤。
ボクサーと言わず、他のスポーツでもそうだけれど、競技中は常に冷静でなければならない。
何故なら、興奮してしまうと呼吸が乱れてしまう。
という事はスタミナをロスする事に繋がる。
遠藤も相当スタミナをロスしていた。勇二のパンチに対する反応が落ちてきた。
勇二の得意パンチは左のボディー。これ一発で何回も試合を終わらせた。
まだ遠藤にはこのパンチを出していない。あえて顔面ばかりにパンチを出していた。
それも全て計算済み。
上ばかりにパンチを集めると、単純に下のガードが甘くなる。
はたから見たら、そんな分かり易いフェイントくらいわかるだろ!と思いがちだけれど、待ったなしの勝負をしている人間には結構、単純なフェイントが決まる。
ただし、上のレベルに行くとそうはいかない。
しかし、アマチュアのインターハイくらいのレベルだったら、プロの経験とは比べものにならない。
まだ軽く当てていた勇二のボディーで、すでに遠藤は子犬のような声を出していた。
そして、顔面への右ストレートをわざとはずし、狙い済ました左のボディーを遠藤の脇腹にめり込ませた。
手応えはありすぎるほどあった。
遠藤はうめき声を上げながらリングに倒れる。
勇二は悠然とニュートラルコーナーに行き、現役の頃と同じようにロープに両肘をかけ、コーナーにもたれ掛かって遠藤を見ていた。
2Rの終わりを告げるブザーがなっても、遠藤はうめき声を上げながらのたうち回っていた。
ジムの中は、いつも流れているユーロービートの激しい曲だけが流れていた。
そして、インターバルの1分が終わり、再びブザーが鳴った。
さっきまで、手を止めて勇二と遠藤のスパーを凝視していた練習生たちは、何事もなかったかのように動き始めた。
遠藤はまだうめき声を上げながらのたうち回っていた。
勇二は段々腹立たしい気持ちになってきた。
何故なら、ボクサーにとってリングに足の裏以外をつけるという事は、大袈裟かもしれないけれど“死”を意味するものだと勇二は思っている。
効いているのはわかるけれど、リングに寝るという行為を1秒でも恥だというプライドをボクサーには持ってもらいたいと勇二は思っていた。
勇二は、うめき声を上げ続けている遠藤の傍に行った。
「リングでいつまでも寝てるんやないで、自分!寝るんやったらリング降りろ!」
勇二は吐き捨てるように遠藤に言った。
そして、コーナーにいる会長のもとに行った。
「すいません、会長。ちょっと、やり過ぎましたかね?」
「いや、いいんだ。あれくらいやられたら、アイツもわかるだろ。」
勇二は会長に詫びを入れた。
練習が終わり、更衣室で着替えていた。
「勇二さん・・・」
いつも声をかけてアドバイスしていた1人の練習生が勇二に話かけてきた。
「今日は、すごく勉強になりました!ただ・・・」
練習生は引きつった顔になり言った。
「ただ・・・リングに上がるのが怖くなりました・・・」
勇二は焦った。
「あ、いや、その、これには訳があって・・・」
勇二は遠藤との確執、そして、会長から頼まれた理由を説明した。
「あ、そんな経緯があったんですか・・・でも、やっぱボクシングって怖いですね!」
一応、納得はしてくれたみたいだけど・・・なんか、変な恐怖心を植え付けてしまったようだった・・・。
ガチャ!
練習を終えた遠藤が更衣室に入ってきた。
お互い、体を温める為、シャドーボクシングを2ラウンドくらいした。遠藤のシャドーを見ると、アマチュア出身らしいスピードののったパンチを繰り出していた。
勇二はキャリアの中で、リングに足の裏以外つけた事がない。おそらく遠藤は勇二の打たれても怯まないスタイルに驚く事だろう。
「じゃあそろそろグローブつけて始めるか!」
会長の合図で2人グローブを付け始めた。
14オンスのメキシコ製のグローブ。
勇二はメキシコ製のグローブが好きだった。
メキシコ製は日本製のウィニングに比べて、ナックルパートの部分が薄い。だから殴っていてもテンションが上がり、手数が多くなる。
ゴングではなくブザーの音でラウンドが始まった。。
勇二のスタイルはバックギアが壊れた前進あるのみのバリバリのファイターだった。
お陰で高校生の時にはすでに鼻が潰れていた。その根性を認められて先輩たちに可愛がられた。
遠藤が出す小刻みなジャブをダッキングでかわしていく。
アマチュアでは、上体を前に倒しすぎるとすぐ反則をとられる。
なので勇二のようにダッキングで前に前に出てくる選手はあまり経験がないだろう。
何発かパンチをもらったけれど、それも計算のうち。
パンチが当たっているのにグイグイ来られると、自分の攻撃が効かないのかな?と、不安に陥る。
だいたい遠藤のパンチのテンポが読めてきた。この時点で勇二はまだ攻撃らしい攻撃はしていない。
次の段階に移す。先程までは避けるだけ。
今度はパンチを当てられる距離、もう一歩踏み込んだ。
だが、まだ打たない。 打てる距離まで詰めて離れる。
それを繰り返す。
何故、打たないのか?
遠藤は相当、恐怖を感じただろう。
勇二は思った。
練習生たちが味わった恐怖が分かっただろうか?
1R終了のブザーが鳴る。
「勇二、行っていいよ!」
会長からゴーサインが出された。
勇二は次のフェーズに移す。2R目、攻撃を開始。
遠藤は1Rで相当恐怖感を抱いたらしく、完全に腰が引けていた。もう、逃げる為のパンチしか打ってこなかった。
勇二が軽いパンチを出すだけで極端に逃げ出した。
見る見るうちに肩で息をし出した遠藤。
ボクサーと言わず、他のスポーツでもそうだけれど、競技中は常に冷静でなければならない。
何故なら、興奮してしまうと呼吸が乱れてしまう。
という事はスタミナをロスする事に繋がる。
遠藤も相当スタミナをロスしていた。勇二のパンチに対する反応が落ちてきた。
勇二の得意パンチは左のボディー。これ一発で何回も試合を終わらせた。
まだ遠藤にはこのパンチを出していない。あえて顔面ばかりにパンチを出していた。
それも全て計算済み。
上ばかりにパンチを集めると、単純に下のガードが甘くなる。
はたから見たら、そんな分かり易いフェイントくらいわかるだろ!と思いがちだけれど、待ったなしの勝負をしている人間には結構、単純なフェイントが決まる。
ただし、上のレベルに行くとそうはいかない。
しかし、アマチュアのインターハイくらいのレベルだったら、プロの経験とは比べものにならない。
まだ軽く当てていた勇二のボディーで、すでに遠藤は子犬のような声を出していた。
そして、顔面への右ストレートをわざとはずし、狙い済ました左のボディーを遠藤の脇腹にめり込ませた。
手応えはありすぎるほどあった。
遠藤はうめき声を上げながらリングに倒れる。
勇二は悠然とニュートラルコーナーに行き、現役の頃と同じようにロープに両肘をかけ、コーナーにもたれ掛かって遠藤を見ていた。
2Rの終わりを告げるブザーがなっても、遠藤はうめき声を上げながらのたうち回っていた。
ジムの中は、いつも流れているユーロービートの激しい曲だけが流れていた。
そして、インターバルの1分が終わり、再びブザーが鳴った。
さっきまで、手を止めて勇二と遠藤のスパーを凝視していた練習生たちは、何事もなかったかのように動き始めた。
遠藤はまだうめき声を上げながらのたうち回っていた。
勇二は段々腹立たしい気持ちになってきた。
何故なら、ボクサーにとってリングに足の裏以外をつけるという事は、大袈裟かもしれないけれど“死”を意味するものだと勇二は思っている。
効いているのはわかるけれど、リングに寝るという行為を1秒でも恥だというプライドをボクサーには持ってもらいたいと勇二は思っていた。
勇二は、うめき声を上げ続けている遠藤の傍に行った。
「リングでいつまでも寝てるんやないで、自分!寝るんやったらリング降りろ!」
勇二は吐き捨てるように遠藤に言った。
そして、コーナーにいる会長のもとに行った。
「すいません、会長。ちょっと、やり過ぎましたかね?」
「いや、いいんだ。あれくらいやられたら、アイツもわかるだろ。」
勇二は会長に詫びを入れた。
練習が終わり、更衣室で着替えていた。
「勇二さん・・・」
いつも声をかけてアドバイスしていた1人の練習生が勇二に話かけてきた。
「今日は、すごく勉強になりました!ただ・・・」
練習生は引きつった顔になり言った。
「ただ・・・リングに上がるのが怖くなりました・・・」
勇二は焦った。
「あ、いや、その、これには訳があって・・・」
勇二は遠藤との確執、そして、会長から頼まれた理由を説明した。
「あ、そんな経緯があったんですか・・・でも、やっぱボクシングって怖いですね!」
一応、納得はしてくれたみたいだけど・・・なんか、変な恐怖心を植え付けてしまったようだった・・・。
ガチャ!
練習を終えた遠藤が更衣室に入ってきた。
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