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第3章 Grasp all , Lose all.2 1995年 亘編 夏
草刈る山路が笛の音Ⅴ Every step you take my eyes follow.
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新宿までは比較的空いてて、僕らは乗車口に並んで突っ立ってた。
昔と同じ、紅緒が座席側にその前に僕と崇直が並ぶ。
あの頃は、崇直は降車駅まで本を読んでて、僕と紅緒はどーでも良い話で盛り上がってた。
たった二駅、時間にして10分もなかった。
でも、今は。
こうやって窓の外を見ながら、目に付いた景色にくだらないツッコミ入れて一緒に笑って。
周りを気にせず、紅緒と見つめ合って話をしてるなんて。
つい昨日までは想像もできなかったよ。
「降りるぞ」
えっ、もう着いた。
ホームに降りて、流れに沿って階段降りて。
コンコースに入ったらさすがに週末の池袋は人が多いなぁ。
東口ってどっちだっけ。
「悪い、先にロッカーにコレ入れて来るから」
崇直が、通路脇にあるロッカーに背中の荷物を入れたいらしい。
空きがあるのかな。
「空いてないんじゃない。あ、あったみたい。ありゃ、1番下の段だ。崇ちゃん辛そう」
崇直がヤンキー座りでロッカーに荷物を入れていた。
「無駄に足の長いカエルみたい」
楽しそうに紅緒が見てる。カエルは、ひどいなぁ。分からんでもないが。
「お待た。じゃ、行こっか」
無駄に足の長いカエルが、僕と紅緒の間に入って肩を組んできた。
「東口はあっち」
と僕の肩越しに腕を伸ばす。
「おっと」
反対に歩こうとした紅緒がクルッと半回転する。
「超ぉ久しぶりのぉ~サンシャイン」
照れ隠しなのか、後ろ手で腕を組みスキップで僕達に並んで付いてくる。
普通に僕らが歩くと、十センチ以上の身長差がある紅緒は早足じゃないと付いてこれなかったんだった。
あの頃はそんなこと、無頓着だったんだよなぁ。
「わーちゃん、ありがとう」
ペースを落として並んで歩く。
崇直が振り返り、鼻を鳴らした。
東口の開口部が見える。天気が良いせいか真っ白だ。
眩しさで目を細めながら階段を降り、横断歩道へ行こうとしたら後ろから誰かが声をかけてきた。
「笠神!」
「お前も今から帰り?」
あ、見覚えのある顔だ。誰だっけ。
と考えてたら紅緒がそいつに話しかけた。
「おおおっ、もしかしてナオト先輩」
「あーべーちゃんだ。久しぶり、相変わらず美人さんだね」
そんなび、美人だなんて軽口叩いて誰だよ。
紅緒、おまえそんな奴とも仲良しなのか。また、僕が知らないだけなのかよ。
「褒めたって何も出ないよ。それより弁護士なったんだ」
タイミング悪く、たどり着いた横断歩道はちょうど信号が代わってしまった。
しばらくかかりそうだ。
くそ。
「先輩、おめでとう。やるねぇ、現役じゃん」
そう言って紅緒がその男の胸を肘で小突いた。
そのスキンシップ癖、誰にでもするもんじゃないぞ。
「それがまだ、弁護士じゃないんだよ」
言いながらその男も紅緒を小突き返す。
ほら、そうやって返ってくるんだから。
あー、そんなこと僕が気にしたって全く関係ないんだよ。
ったく、情けない。
二人のやり取りが自然すぎて、割って入れない。
悔しいけど思わず一歩下がってしまう。
「崇直は現役で試験通ったからもう弁護士かと思ってた」
「まだなってねーのよ、オレら。司法修習生はただ試験に合格しただけの無能な役立たずだ」
崇直はそう言って、見覚えのある男の肩に腕を回し僕に向き合わせた。
「な、田中。直樹の親友で、高校時代のチームメイトで、大学の仲間で今は研修生の同期」
と早口で紹介された。
直樹の親友、それで見覚えがあったんだ。
「こっち、幼馴染で友人の日向亘ね。オレらと同じ大学でまだ院生やってる」
「田中尚途です」
この男は間近で紅緒と直樹を見ていたのか。
「ひ、日向亘です。工学部システム学科の院生してます」
紅緒は今何を考えてるんだろう。
田中と話して直樹を思い出してるんだろうか。
あんな笑顔向けて話して。もう辛くないのか。
「あ、そうだ。あたしら今からサンシャイン水族館行くんだけど、ナオト先輩も行く?」
ぬおぉっ、誘っちゃったよ。
「え、混ぜてもらっていいの。行くよ、もちろん」
即答かよ。
そのタイミングで信号が変わり、二人は勢いよく並んで歩き出した。
崇直を見るとあいつも僕を見てた。
しかたなく並んで歩き始める。
「空が青いな、春が終わっちまったな」
そう崇直が言った。
昔と同じ、紅緒が座席側にその前に僕と崇直が並ぶ。
あの頃は、崇直は降車駅まで本を読んでて、僕と紅緒はどーでも良い話で盛り上がってた。
たった二駅、時間にして10分もなかった。
でも、今は。
こうやって窓の外を見ながら、目に付いた景色にくだらないツッコミ入れて一緒に笑って。
周りを気にせず、紅緒と見つめ合って話をしてるなんて。
つい昨日までは想像もできなかったよ。
「降りるぞ」
えっ、もう着いた。
ホームに降りて、流れに沿って階段降りて。
コンコースに入ったらさすがに週末の池袋は人が多いなぁ。
東口ってどっちだっけ。
「悪い、先にロッカーにコレ入れて来るから」
崇直が、通路脇にあるロッカーに背中の荷物を入れたいらしい。
空きがあるのかな。
「空いてないんじゃない。あ、あったみたい。ありゃ、1番下の段だ。崇ちゃん辛そう」
崇直がヤンキー座りでロッカーに荷物を入れていた。
「無駄に足の長いカエルみたい」
楽しそうに紅緒が見てる。カエルは、ひどいなぁ。分からんでもないが。
「お待た。じゃ、行こっか」
無駄に足の長いカエルが、僕と紅緒の間に入って肩を組んできた。
「東口はあっち」
と僕の肩越しに腕を伸ばす。
「おっと」
反対に歩こうとした紅緒がクルッと半回転する。
「超ぉ久しぶりのぉ~サンシャイン」
照れ隠しなのか、後ろ手で腕を組みスキップで僕達に並んで付いてくる。
普通に僕らが歩くと、十センチ以上の身長差がある紅緒は早足じゃないと付いてこれなかったんだった。
あの頃はそんなこと、無頓着だったんだよなぁ。
「わーちゃん、ありがとう」
ペースを落として並んで歩く。
崇直が振り返り、鼻を鳴らした。
東口の開口部が見える。天気が良いせいか真っ白だ。
眩しさで目を細めながら階段を降り、横断歩道へ行こうとしたら後ろから誰かが声をかけてきた。
「笠神!」
「お前も今から帰り?」
あ、見覚えのある顔だ。誰だっけ。
と考えてたら紅緒がそいつに話しかけた。
「おおおっ、もしかしてナオト先輩」
「あーべーちゃんだ。久しぶり、相変わらず美人さんだね」
そんなび、美人だなんて軽口叩いて誰だよ。
紅緒、おまえそんな奴とも仲良しなのか。また、僕が知らないだけなのかよ。
「褒めたって何も出ないよ。それより弁護士なったんだ」
タイミング悪く、たどり着いた横断歩道はちょうど信号が代わってしまった。
しばらくかかりそうだ。
くそ。
「先輩、おめでとう。やるねぇ、現役じゃん」
そう言って紅緒がその男の胸を肘で小突いた。
そのスキンシップ癖、誰にでもするもんじゃないぞ。
「それがまだ、弁護士じゃないんだよ」
言いながらその男も紅緒を小突き返す。
ほら、そうやって返ってくるんだから。
あー、そんなこと僕が気にしたって全く関係ないんだよ。
ったく、情けない。
二人のやり取りが自然すぎて、割って入れない。
悔しいけど思わず一歩下がってしまう。
「崇直は現役で試験通ったからもう弁護士かと思ってた」
「まだなってねーのよ、オレら。司法修習生はただ試験に合格しただけの無能な役立たずだ」
崇直はそう言って、見覚えのある男の肩に腕を回し僕に向き合わせた。
「な、田中。直樹の親友で、高校時代のチームメイトで、大学の仲間で今は研修生の同期」
と早口で紹介された。
直樹の親友、それで見覚えがあったんだ。
「こっち、幼馴染で友人の日向亘ね。オレらと同じ大学でまだ院生やってる」
「田中尚途です」
この男は間近で紅緒と直樹を見ていたのか。
「ひ、日向亘です。工学部システム学科の院生してます」
紅緒は今何を考えてるんだろう。
田中と話して直樹を思い出してるんだろうか。
あんな笑顔向けて話して。もう辛くないのか。
「あ、そうだ。あたしら今からサンシャイン水族館行くんだけど、ナオト先輩も行く?」
ぬおぉっ、誘っちゃったよ。
「え、混ぜてもらっていいの。行くよ、もちろん」
即答かよ。
そのタイミングで信号が変わり、二人は勢いよく並んで歩き出した。
崇直を見るとあいつも僕を見てた。
しかたなく並んで歩き始める。
「空が青いな、春が終わっちまったな」
そう崇直が言った。
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