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第5章 Grasp all , Lose all.3 1995年 亘編 夏2
間が近くて契りが薄い3 So Close, Yet So Far
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高二の冬、マンションの屋上でやった流星群の観測会。
僕の学校からも数人参加して、崇直も直樹も友達連れて来てたな。
あの年は当たり年で、一等星二等星クラスがバンバン流れて賑やかだった。
「枠外だったけど、火球のでっかいのが流れてきたよな」
「ああ、あれニュースにもなってたっけ」
「そうそう、同じように寝転がって観測してるのテレビで見て、興奮したよ。俺もしたぞって」
田中が当時のことを懐かしそうに、話してる。
僕はと言えば、適当に返事をし、自分の馬鹿さ加減にうんざりしていた。
紅緒にあんな顔をさせてしまったのだ。
視線を前を歩く二人に向けると、崇直の頭に目がいく。ハーフアップにした先っちょが小刻みに揺れてる。
不意に紅緒がこっちを振り返り、僕と目が合うと口元を緩めて笑顔を作った。
「亘くん、着いたよ。話してると、あっという間だな」
田中の声で、我に返る。
池袋駅からの記憶がほとんどないよ。
「もう着いたんだ」
そのまま流れに押されるようにして、ホームに降りる。
改札を抜け歩いていたら、背後から田中の声が聞こえてきた。
「えーっ、べーちゃんここで帰っちゃうの」
うそ、ここでさよならなのか。
ヒヤリとした、痛みにも似た感触が喉元から下腹に抜ける。
僕は、何を期待してたんだろう。
足が止まり、紅緒の顔を見たいのに体が動かないよ。
「直ちゃんに、持って帰りたいだけ。あ、誕生日だし皆で挨拶する?」
えっ?
振り返ると、田中が笑顔で僕の肩に手を置いた。
「直樹に挨拶ってさ。行こうぜ」
神社の参道の緩い坂道を上り、境内を抜け社務所の裏へ回ると大きな楠が見えてきた。
住居と境内とを仕切るように立つ楠。
そこを過ぎたら、崇直たちの住む家がある。
近代的な紅緒の家の門前を通り過ぎ、中庭を抜けたら旧家然とした崇直の家の格子戸が見えた。
その隙間から、間口四間の豪華な玄関が見える。
僕らは玄関から出入りすることはない。
今夜も格子戸を抜けたら、当たり前のように玄関を無視して勝手口へ向かう。
数年ぶりとは言え、通いなれた道順だ。
すたすたと歩いていたら田中に腕を掴まれた。
「あれ、玄関……」
田中が玄関の方を向き、立ち止まる。
「そっちは客用。おい、亘」
崇直が振り返り、僕に向かって顎をしゃくる。
へいへい、分かってますよ。
「僕らは玄関からは入らないんだよ」
「なんで? 俺ここ来たらいつも玄関で声かけてたけど」
「ああ、それは良いんだよ。田中はお客さんだから。でも、今夜は僕らと一緒だからね」
「意味分からんが、そう言う仕来りなのか」
「さぁ、僕もよく分からないけど、特別な時以外は勝手口からしか入ったことないんだ」
田中が初めて見るのか、勝手口を見渡している。
「これが裏口なんだ……さすが旧家」
まあ、普通の家の玄関程度に間口は広いかな。
「準備できたら呼ぶから、ここで待ってて」
紅緒に言われ、僕と田中はダイニングを抜けた先にあるソファに座らされた。
「ついでにオレは着替えてくるわ」
「おばちゃんたちは?」
「そこの地下で氏子たちと集まって飲み会だろ」
と社務所の方に顎を向ける。
ああ、それで誰も居ないのか。
準備ができた紅緒に呼ばれ、そろって僕らは部屋に向かった。
そして、僕は五年ぶりに直樹に挨拶をした。
ご無沙汰、直樹。
そこから、僕らはどんな風に見えてるんだろう。
何もできなくて、未だに見てるだけの僕をそこから笑って見てるのか。
知っての通り僕はやっぱり、紅緒が好きだ。
もし、紅緒が僕の事を選んでくれたら、それでも直樹はそこで笑って見ててくれるか。
そう願い、頭を下げる。
祭壇の右脇下に据えてある棚。
祖霊舎から離れる時、写真の直樹と目が合った。
僕の学校からも数人参加して、崇直も直樹も友達連れて来てたな。
あの年は当たり年で、一等星二等星クラスがバンバン流れて賑やかだった。
「枠外だったけど、火球のでっかいのが流れてきたよな」
「ああ、あれニュースにもなってたっけ」
「そうそう、同じように寝転がって観測してるのテレビで見て、興奮したよ。俺もしたぞって」
田中が当時のことを懐かしそうに、話してる。
僕はと言えば、適当に返事をし、自分の馬鹿さ加減にうんざりしていた。
紅緒にあんな顔をさせてしまったのだ。
視線を前を歩く二人に向けると、崇直の頭に目がいく。ハーフアップにした先っちょが小刻みに揺れてる。
不意に紅緒がこっちを振り返り、僕と目が合うと口元を緩めて笑顔を作った。
「亘くん、着いたよ。話してると、あっという間だな」
田中の声で、我に返る。
池袋駅からの記憶がほとんどないよ。
「もう着いたんだ」
そのまま流れに押されるようにして、ホームに降りる。
改札を抜け歩いていたら、背後から田中の声が聞こえてきた。
「えーっ、べーちゃんここで帰っちゃうの」
うそ、ここでさよならなのか。
ヒヤリとした、痛みにも似た感触が喉元から下腹に抜ける。
僕は、何を期待してたんだろう。
足が止まり、紅緒の顔を見たいのに体が動かないよ。
「直ちゃんに、持って帰りたいだけ。あ、誕生日だし皆で挨拶する?」
えっ?
振り返ると、田中が笑顔で僕の肩に手を置いた。
「直樹に挨拶ってさ。行こうぜ」
神社の参道の緩い坂道を上り、境内を抜け社務所の裏へ回ると大きな楠が見えてきた。
住居と境内とを仕切るように立つ楠。
そこを過ぎたら、崇直たちの住む家がある。
近代的な紅緒の家の門前を通り過ぎ、中庭を抜けたら旧家然とした崇直の家の格子戸が見えた。
その隙間から、間口四間の豪華な玄関が見える。
僕らは玄関から出入りすることはない。
今夜も格子戸を抜けたら、当たり前のように玄関を無視して勝手口へ向かう。
数年ぶりとは言え、通いなれた道順だ。
すたすたと歩いていたら田中に腕を掴まれた。
「あれ、玄関……」
田中が玄関の方を向き、立ち止まる。
「そっちは客用。おい、亘」
崇直が振り返り、僕に向かって顎をしゃくる。
へいへい、分かってますよ。
「僕らは玄関からは入らないんだよ」
「なんで? 俺ここ来たらいつも玄関で声かけてたけど」
「ああ、それは良いんだよ。田中はお客さんだから。でも、今夜は僕らと一緒だからね」
「意味分からんが、そう言う仕来りなのか」
「さぁ、僕もよく分からないけど、特別な時以外は勝手口からしか入ったことないんだ」
田中が初めて見るのか、勝手口を見渡している。
「これが裏口なんだ……さすが旧家」
まあ、普通の家の玄関程度に間口は広いかな。
「準備できたら呼ぶから、ここで待ってて」
紅緒に言われ、僕と田中はダイニングを抜けた先にあるソファに座らされた。
「ついでにオレは着替えてくるわ」
「おばちゃんたちは?」
「そこの地下で氏子たちと集まって飲み会だろ」
と社務所の方に顎を向ける。
ああ、それで誰も居ないのか。
準備ができた紅緒に呼ばれ、そろって僕らは部屋に向かった。
そして、僕は五年ぶりに直樹に挨拶をした。
ご無沙汰、直樹。
そこから、僕らはどんな風に見えてるんだろう。
何もできなくて、未だに見てるだけの僕をそこから笑って見てるのか。
知っての通り僕はやっぱり、紅緒が好きだ。
もし、紅緒が僕の事を選んでくれたら、それでも直樹はそこで笑って見ててくれるか。
そう願い、頭を下げる。
祭壇の右脇下に据えてある棚。
祖霊舎から離れる時、写真の直樹と目が合った。
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