あぶはちとらず

井氷鹿

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第1章 Grasp all , Lose all.1 1995年 亘編 春

落花情あれども流水意なし3  The love is one-sided.

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 昼休みになり、いつもの社食のいつもの席へ。
 あれから一週間。もやもやは治まらない。
 一方的に突き放されたのに、納得してる自分がなぁ、情けないよな。

 『外見みてくれと学歴だけのオトコ』

 多分、彼女の言い分は正しかったんだ。
 好きだったけど、愛してたわけじゃないし、別れて正解だったんだろう、きっと。

 次は自分に夢中になってくれる相手を探すのかな、あの人も。
 いや、それより問題は、あいつだ。

 あの日からずっと、あの顔が頭から離れない。
 高校生のまま、時間が止まったみたいだ。
 今年、もう四年生だっけ。
 文転したって聞いて驚いたけど、上手くやれてるんだろうか。
 就職、大丈夫かな。

 ……やばい。大学生のあいつが全然想像できないよ。
 僕、何してんだろ。

 丼をかき込む音に気づいて顔を上げると、先輩が覗き込んでた。
「どうした。失恋でもしたのか?」

 瞬きしたら、涙がボロボロ落ちてくる。
 なんで今泣くんだよ。
「顔洗ってきます!」
 慌てて席を立ち、お手洗いに逃げこんだ。
 
 戻ると、先輩はニヤニヤして親子丼をつついている。
「なんだ、元気ないなぁ。俺でよけりゃ、話聞いてやるぞ?」

 そんな顔されたって、元気なんか出ませんよ。

「仕事も一段落したし、今日は飲みに行くか?」
 箸で僕の昼定を指して「食べろ」と促された。
「いただきます……」

 食欲はどこかへ消えたけど、先輩と一緒に昼を済ませた。
 院の研究室から紹介されたこのインターン先――海外プロジェクト推進室の主任が、この人だ。
 このまま就職まで繋がったらいいな、なんて思ってる。
 就職氷河期ど真ん中。この枠は僕の命綱なんだよな。

 ギリ二十代に見えなくもないこの先輩は、平川亮ひらかわとおるという。
 通産省出の元技官ってのが信じられないくらい、気さくすぎる人だ。
 正直チャラい。

 でも、同門の縁で気にかけてくれるのは、本当にありがたいのです。
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