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第5話 ・大変!大変!峠から海水が!?
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数日後……塩尻から諏訪方向に向かって歩いていた、みどり子は峠道の脇から湧き出ている岩清水を口に含み、すぐにペッと吐き出しました。
「しょっぱい……そういうコトか」
バックパックを背負った、一見するとトレッキングをしているような格好をした山賊の、みどり子はさらに峠の山道を登ります。
みどり子が登っている峠は、その昔、武田軍と小笠原軍が戦った戦場です。
みどり子は、武田軍か小笠原軍のどちらかの子孫でした。
峠の山頂に到着した、みどり子は顔の汗を拭きながら、峠から望む風景を眺めます。
峠からは諏訪の湖が見えました、みどり子が呟きます。
「『閑古鳥』の奴ら……なんて大胆なコトを企んでいるんだ、諏訪湖の生態系を壊すつもりか」
◇◇◇◇◇◇
キツネ踊りの夏祭り準備が進む塩尻市の中心街──商店街には祭りのキツネ旗やノボリ旗が掲げられ。
普段はひっそりとしている通りも、どことなく活気があります。
秋のハロウィンイベントと並んで。唯一、年二回塩尻市の通りが人で埋め尽くされる、市民の気合いが入ったお祭りです。
通りの上に架かる連絡通路で、柿沢みどり子に呼ばれて集まった。
夏美、サラ、与三郎、紗絵の四人は指眼鏡で通りを見ていました。
大通りの建物には随所に、大小の怪鳥『閑古鳥』が巣を作って。
「サビレロ、サビレロ、ギャギャ」と鳴いています。
連絡通路で行き来できる商業施設の向かい側にある、市立図書館を含む公共コミュニケーション施設の建物内では。
フリースペースのテーブルと椅子で勉強をしている高校生の背後に立った陰気ザコが。
おぶさるような格好で高校生に抱きつき勉強の気力を奪っていました。
指眼鏡で、通りと市民の縁が繋がる市の公共施設を見ていた与三郎が言いました。
「また一段と今日は、閑古鳥と黒ザコが多いな」
サラが、みどり子に質問します。
「あたしたちを、呼び出した理由は?」
「『閑古鳥』軍団の企みが判明したから伝えようと思って──奴ら、太平洋の海水を天竜川や木曽川から逆流させて、諏訪湖を海水湖に変えるつもりだ」
みどり子の言葉を聞いて人間に化けているキツネたちは
「え──っ!?」と、驚きの声を発して。
うっかり出してしまった、キツネ耳と尻尾を慌てて手で押さえ隠しました。
吃りながらサラが、みどり子に訊ねます。
「ど、ど、ど、ど、ど、どうして。そんなコトを閑古鳥は?」
「諏訪湖が海水湖になれば、どうなると思う」
「諏訪湖で海水浴ができる」
「じゃなくて、諏訪湖冬の名物の、御神渡りができなくなるだろう……天竜川を遡上してきた流氷が、諏訪湖に着岸しない限り」
「確かに」
最近は温暖化傾向で、諏訪湖もなかなか全湖面が凍りません。
「諏訪湖に御神渡りが無くなれば、諏訪を護っている八百万の神は居づらくなる……そうなると、閑古鳥たちは塩尻を陰気溜まりの本拠地にして、日本中に生息地を広げていく。分水嶺って知っているか」
「水が太平洋側と、日本海側に分かれる場所のコトでしょ」
「今、分水嶺近くの山には海竜が。無理矢理に連れてこられて囚われている……山で海に戻りたがっている海竜が苦しさから真水を塩水に変えている……このままだと、分水嶺から流れる川の水は全部塩水になるぞ」
「いったい、どうすれば」
「それは……」
みどり子が返答しようとした、その時……峠の方角からドーンという音と共に水柱が数本上がりました。
それを見て、夏美が言いました。
「諏訪湖や小坂田公園の花火大会……じゃないよね」
塩尻市内に急激に広がる陰の気、閑古鳥たちが不快な声で歓喜に騒ぐ。
「グェグェ、サビレロ、サビレロ、ギャーギャー」
増殖する黒い陰気ザコたちに、祭りの実行委員会のTティシャツを着た人たちから、目に見えて活気が失われていきました。
フラフラと近寄ってきた陰気ザコを叩き払いながら、みどり子が言いました。
「しまった、まさかこんなに早く塩水が噴き出すなんて……サラ! 頼む、キツネの妖力で陰気や疫厄を吹き飛ばして。閑古鳥どもを追い払ってくれ! ひぃぃ」
戦闘員のようなザコたちは、サラたちキツネには目もくれずに人間たちに憑いて、沈んだ気分に変えています。
みどり子、一人がなんとかザコの相手をして連絡通路から次々と、ザコを道路に放り投げてはいますが多勢に無勢……分が悪そうです。
「サラ、早く塩尻市民に活気を! 陰気退散! うわぁ!」
押し寄せてくるザコの群れに呑まれ、みどり子は図書館と併用した市の施設の方に流されていってしまいました。
「そんなコト言っても」
制服姿のサラは、オロオロするばかりです。
「しょっぱい……そういうコトか」
バックパックを背負った、一見するとトレッキングをしているような格好をした山賊の、みどり子はさらに峠の山道を登ります。
みどり子が登っている峠は、その昔、武田軍と小笠原軍が戦った戦場です。
みどり子は、武田軍か小笠原軍のどちらかの子孫でした。
峠の山頂に到着した、みどり子は顔の汗を拭きながら、峠から望む風景を眺めます。
峠からは諏訪の湖が見えました、みどり子が呟きます。
「『閑古鳥』の奴ら……なんて大胆なコトを企んでいるんだ、諏訪湖の生態系を壊すつもりか」
◇◇◇◇◇◇
キツネ踊りの夏祭り準備が進む塩尻市の中心街──商店街には祭りのキツネ旗やノボリ旗が掲げられ。
普段はひっそりとしている通りも、どことなく活気があります。
秋のハロウィンイベントと並んで。唯一、年二回塩尻市の通りが人で埋め尽くされる、市民の気合いが入ったお祭りです。
通りの上に架かる連絡通路で、柿沢みどり子に呼ばれて集まった。
夏美、サラ、与三郎、紗絵の四人は指眼鏡で通りを見ていました。
大通りの建物には随所に、大小の怪鳥『閑古鳥』が巣を作って。
「サビレロ、サビレロ、ギャギャ」と鳴いています。
連絡通路で行き来できる商業施設の向かい側にある、市立図書館を含む公共コミュニケーション施設の建物内では。
フリースペースのテーブルと椅子で勉強をしている高校生の背後に立った陰気ザコが。
おぶさるような格好で高校生に抱きつき勉強の気力を奪っていました。
指眼鏡で、通りと市民の縁が繋がる市の公共施設を見ていた与三郎が言いました。
「また一段と今日は、閑古鳥と黒ザコが多いな」
サラが、みどり子に質問します。
「あたしたちを、呼び出した理由は?」
「『閑古鳥』軍団の企みが判明したから伝えようと思って──奴ら、太平洋の海水を天竜川や木曽川から逆流させて、諏訪湖を海水湖に変えるつもりだ」
みどり子の言葉を聞いて人間に化けているキツネたちは
「え──っ!?」と、驚きの声を発して。
うっかり出してしまった、キツネ耳と尻尾を慌てて手で押さえ隠しました。
吃りながらサラが、みどり子に訊ねます。
「ど、ど、ど、ど、ど、どうして。そんなコトを閑古鳥は?」
「諏訪湖が海水湖になれば、どうなると思う」
「諏訪湖で海水浴ができる」
「じゃなくて、諏訪湖冬の名物の、御神渡りができなくなるだろう……天竜川を遡上してきた流氷が、諏訪湖に着岸しない限り」
「確かに」
最近は温暖化傾向で、諏訪湖もなかなか全湖面が凍りません。
「諏訪湖に御神渡りが無くなれば、諏訪を護っている八百万の神は居づらくなる……そうなると、閑古鳥たちは塩尻を陰気溜まりの本拠地にして、日本中に生息地を広げていく。分水嶺って知っているか」
「水が太平洋側と、日本海側に分かれる場所のコトでしょ」
「今、分水嶺近くの山には海竜が。無理矢理に連れてこられて囚われている……山で海に戻りたがっている海竜が苦しさから真水を塩水に変えている……このままだと、分水嶺から流れる川の水は全部塩水になるぞ」
「いったい、どうすれば」
「それは……」
みどり子が返答しようとした、その時……峠の方角からドーンという音と共に水柱が数本上がりました。
それを見て、夏美が言いました。
「諏訪湖や小坂田公園の花火大会……じゃないよね」
塩尻市内に急激に広がる陰の気、閑古鳥たちが不快な声で歓喜に騒ぐ。
「グェグェ、サビレロ、サビレロ、ギャーギャー」
増殖する黒い陰気ザコたちに、祭りの実行委員会のTティシャツを着た人たちから、目に見えて活気が失われていきました。
フラフラと近寄ってきた陰気ザコを叩き払いながら、みどり子が言いました。
「しまった、まさかこんなに早く塩水が噴き出すなんて……サラ! 頼む、キツネの妖力で陰気や疫厄を吹き飛ばして。閑古鳥どもを追い払ってくれ! ひぃぃ」
戦闘員のようなザコたちは、サラたちキツネには目もくれずに人間たちに憑いて、沈んだ気分に変えています。
みどり子、一人がなんとかザコの相手をして連絡通路から次々と、ザコを道路に放り投げてはいますが多勢に無勢……分が悪そうです。
「サラ、早く塩尻市民に活気を! 陰気退散! うわぁ!」
押し寄せてくるザコの群れに呑まれ、みどり子は図書館と併用した市の施設の方に流されていってしまいました。
「そんなコト言っても」
制服姿のサラは、オロオロするばかりです。
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