7 / 7
第7話・山岳県スカイツリー建設計画
しおりを挟む
その日──サラは耐震工事が終了して、再館した市の文化施設の、椅子に制服姿で座って勉強をしていました。
図書館から借りた、玄蕃之丞狐の関連書籍を読みながら、軽くタメ息を漏らしました。
「大きな商業施設が、最近次々と閉店していって、少しいなぁ……城下町のパルコも閉店するって言うし」
サラは窓から見える冬季は通行止めになっている、高ボッチを眺めます。
「夏の名物の高ボッチ競馬もなくなっちゃったし、アニメの影響でソロキャンパーの聖地にはなっているけれど、天気のいい日には山頂から富士山も見えるけれど……寂れていくのは〝閑古鳥〟の仕業?」
サラは、指眼鏡で市内を見ます。
地域を衰退させる力が少し弱まった、閑古鳥が建物の屋上に巣を作っていて。
閑古鳥の配下の黒い戦闘員のようなザコが、街を力無く歩いているのが見えます。
「ザコも、閑古鳥も力は弱くなっているけれど……それでも、宿場町は」
「市内に目立った名所は、ナニも無いでござる」
サラが振り向くと、 伏せた漆器のお椀を陣笠のように頭からかぶった、武士姿の奈良井宿の幽霊『奈良井さん』と、奈良井さんの肩にちょこんと乗った、ワインの妖精『ロゼ』の姿がありました。
閑古鳥の弱々しい鳴き声が聞こえました。
「サビレロ……サビレロ……ギャ、ギャ」
「閑古鳥のパワーも、最近はオリンピックで金メダルを獲得した、選手のお祝いパレードパワーで弱くなっているでござるが……」
閑古鳥を完全に市や街から追い払うには、市民の積極的な活性化アイデアが必要不可欠です。
「隣市の城下町で、大型商業施設の閉店が、相次いでいる今……この離れた市でも、閑古鳥とザコの勢いを弱める方法が必要でござるな」
◇◇◇◇◇◇
次の日──サラはサラのお父さんの玄蕃之丞狐の分身が入っている玄蕃稲荷神社の小さな祠の前に、制服姿で立っていました。
サラが新しくなった、祠に向って言いました。
「祠が新しくなって良かったね、お父さん……前の祠は少し目立たない場所で、ボロボロだったから」
「……まあな、本当にボロボロだったからな」
「場所も、移動して集会場の近くになったね……図書館の本で読んだよ、昔は関東や関西からも参拝で立ち寄る人もいたんだよね」
「そうだな」
サラは人目に注意して、キツネの耳と尻尾をピョコンと出しました。
「お父さん、なんか元気ないなぁ……心配事でもあるの?」
祠の中から、玄蕃之丞狐の心配そうな声が聞こえてきました。
「実は以前、奈良井さんから木曽の名所の〝寝覚めの床〟と〝御嶽山〟地域を市の領域にするには、どうしたらいいかと相談されたコトがあってな」
「そんなコトをしたら、宿場町がさらに縦に細くなっちゃうじゃない……戦国時代の国取りじゃあるまいし」
「わたしも、同じコトを言って奈良井さんも、納得はしたようなんだが……奈良井さんは、奈良井宿が寂れて自分の存在が忘れ去られないか心配なんだよ……幽霊になってまで仲間の大名行列が来るのを、ずっと待っているから」
「う~ん……どうしたらいいんだろう、与三郎と沙絵に相談してみるね」
◇◇◇◇◇◇
次の日──サラは学校の美術教室で、与三郎と沙絵を集めで玄蕃之丞から聞いた、奈良井さんの話しを相談してみました。
サラの話しを聞き終わった、田川の与三郎が言いました。
「新しい名所を作れば良くねぇ……シンボルになる塔とか毘盧遮那とか」
「それは、ちょっと」
江尻の沙絵が言いました。
「じゃあ、涅槃仏像とか……公園に鹿を放すとか」
「奈良公園じゃあるまいし──元々、この周囲を山で囲まれた、山岳県はサファリパークの中に、人間が住んでいるようなものだから意味ないよ……どこまで行っても山、山、山」
与三郎が、揚げていても山賊焼をかじりながら言いました。
「結局、山が名所か」
◆◆◆◆◆◆
それから、しばらくは何事も無く過ぎました。
ところがある日──横手ヶ崎のお夏こと、今は夏美と名乗っている女狐が慌てた様子で、サラがいる神社に駆け込んできました。
「サラちゃん大変! 奈良井さんが、東京スカイツリーを造って名所にするって」
「どこに、634メートルの塔を?」
「空港がある空の公園と呼ばれている場所に」
「そんな場所に高い塔を造ったら、旅客機が衝突しちゃう! 大変! 奈良井さんのやろうとしているコトを止めなきゃ」
サラ、与三郎、紗絵、夏美の四匹はキツネの姿になって空の公園へ向かいました。
広い公園の真ん中に奈良井さんが立って、山々を眺めていました。
キツネから人間の姿になったサラが、奈良井さんに言いました。
「奈良井さん、スカイツリーを公園に造るなんてやめて! 大惨事が起こる」
山頂に電波塔とホテルがある山を眺めながら、奈良井さんが言いました。
「もう、造ってしまったでござるよ」
「どこに?」
「これでござる」
奈良井さんが指差した先には、二メートルほどの木製の塔の先端が置かれていました。
唖然としているサラたちに、奈良井さんが説明しました。
「調べてみたら、東京スカイツリーの高さは634メートル……この市の平均標高は700メートル……スカイツリーよりも高い場所だとわかったでござる」
奈良井さんが、漆が塗られた木製の塔の先端を触りながら言いました。
「だから、縮小した先端サイズを漆細工で造ってみたでござる、さすがに実寸はムリでござるからな……この塔が、新たな名所に……」
夏美がすかさず、ツッコミました。
「ならないと思うわよ」
サラはホッとするのと同時に、東京スカイツリーよりも高い標高の場所に、自分たちはよく住んでいるなぁ……と、あらためて思いました。
図書館から借りた、玄蕃之丞狐の関連書籍を読みながら、軽くタメ息を漏らしました。
「大きな商業施設が、最近次々と閉店していって、少しいなぁ……城下町のパルコも閉店するって言うし」
サラは窓から見える冬季は通行止めになっている、高ボッチを眺めます。
「夏の名物の高ボッチ競馬もなくなっちゃったし、アニメの影響でソロキャンパーの聖地にはなっているけれど、天気のいい日には山頂から富士山も見えるけれど……寂れていくのは〝閑古鳥〟の仕業?」
サラは、指眼鏡で市内を見ます。
地域を衰退させる力が少し弱まった、閑古鳥が建物の屋上に巣を作っていて。
閑古鳥の配下の黒い戦闘員のようなザコが、街を力無く歩いているのが見えます。
「ザコも、閑古鳥も力は弱くなっているけれど……それでも、宿場町は」
「市内に目立った名所は、ナニも無いでござる」
サラが振り向くと、 伏せた漆器のお椀を陣笠のように頭からかぶった、武士姿の奈良井宿の幽霊『奈良井さん』と、奈良井さんの肩にちょこんと乗った、ワインの妖精『ロゼ』の姿がありました。
閑古鳥の弱々しい鳴き声が聞こえました。
「サビレロ……サビレロ……ギャ、ギャ」
「閑古鳥のパワーも、最近はオリンピックで金メダルを獲得した、選手のお祝いパレードパワーで弱くなっているでござるが……」
閑古鳥を完全に市や街から追い払うには、市民の積極的な活性化アイデアが必要不可欠です。
「隣市の城下町で、大型商業施設の閉店が、相次いでいる今……この離れた市でも、閑古鳥とザコの勢いを弱める方法が必要でござるな」
◇◇◇◇◇◇
次の日──サラはサラのお父さんの玄蕃之丞狐の分身が入っている玄蕃稲荷神社の小さな祠の前に、制服姿で立っていました。
サラが新しくなった、祠に向って言いました。
「祠が新しくなって良かったね、お父さん……前の祠は少し目立たない場所で、ボロボロだったから」
「……まあな、本当にボロボロだったからな」
「場所も、移動して集会場の近くになったね……図書館の本で読んだよ、昔は関東や関西からも参拝で立ち寄る人もいたんだよね」
「そうだな」
サラは人目に注意して、キツネの耳と尻尾をピョコンと出しました。
「お父さん、なんか元気ないなぁ……心配事でもあるの?」
祠の中から、玄蕃之丞狐の心配そうな声が聞こえてきました。
「実は以前、奈良井さんから木曽の名所の〝寝覚めの床〟と〝御嶽山〟地域を市の領域にするには、どうしたらいいかと相談されたコトがあってな」
「そんなコトをしたら、宿場町がさらに縦に細くなっちゃうじゃない……戦国時代の国取りじゃあるまいし」
「わたしも、同じコトを言って奈良井さんも、納得はしたようなんだが……奈良井さんは、奈良井宿が寂れて自分の存在が忘れ去られないか心配なんだよ……幽霊になってまで仲間の大名行列が来るのを、ずっと待っているから」
「う~ん……どうしたらいいんだろう、与三郎と沙絵に相談してみるね」
◇◇◇◇◇◇
次の日──サラは学校の美術教室で、与三郎と沙絵を集めで玄蕃之丞から聞いた、奈良井さんの話しを相談してみました。
サラの話しを聞き終わった、田川の与三郎が言いました。
「新しい名所を作れば良くねぇ……シンボルになる塔とか毘盧遮那とか」
「それは、ちょっと」
江尻の沙絵が言いました。
「じゃあ、涅槃仏像とか……公園に鹿を放すとか」
「奈良公園じゃあるまいし──元々、この周囲を山で囲まれた、山岳県はサファリパークの中に、人間が住んでいるようなものだから意味ないよ……どこまで行っても山、山、山」
与三郎が、揚げていても山賊焼をかじりながら言いました。
「結局、山が名所か」
◆◆◆◆◆◆
それから、しばらくは何事も無く過ぎました。
ところがある日──横手ヶ崎のお夏こと、今は夏美と名乗っている女狐が慌てた様子で、サラがいる神社に駆け込んできました。
「サラちゃん大変! 奈良井さんが、東京スカイツリーを造って名所にするって」
「どこに、634メートルの塔を?」
「空港がある空の公園と呼ばれている場所に」
「そんな場所に高い塔を造ったら、旅客機が衝突しちゃう! 大変! 奈良井さんのやろうとしているコトを止めなきゃ」
サラ、与三郎、紗絵、夏美の四匹はキツネの姿になって空の公園へ向かいました。
広い公園の真ん中に奈良井さんが立って、山々を眺めていました。
キツネから人間の姿になったサラが、奈良井さんに言いました。
「奈良井さん、スカイツリーを公園に造るなんてやめて! 大惨事が起こる」
山頂に電波塔とホテルがある山を眺めながら、奈良井さんが言いました。
「もう、造ってしまったでござるよ」
「どこに?」
「これでござる」
奈良井さんが指差した先には、二メートルほどの木製の塔の先端が置かれていました。
唖然としているサラたちに、奈良井さんが説明しました。
「調べてみたら、東京スカイツリーの高さは634メートル……この市の平均標高は700メートル……スカイツリーよりも高い場所だとわかったでござる」
奈良井さんが、漆が塗られた木製の塔の先端を触りながら言いました。
「だから、縮小した先端サイズを漆細工で造ってみたでござる、さすがに実寸はムリでござるからな……この塔が、新たな名所に……」
夏美がすかさず、ツッコミました。
「ならないと思うわよ」
サラはホッとするのと同時に、東京スカイツリーよりも高い標高の場所に、自分たちはよく住んでいるなぁ……と、あらためて思いました。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる