25光年の侵略愛娘

楠本恵士

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第九話・お父さんの同級生が訪ねてきた?

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 また、平穏な日々がしばらく続いた。
 殺虫剤とハエの合成怪人『スプレーバエ』は、自分が噴出したガスで自滅した。
 共食い三つ首怪獣『グルメン』は、互いの体を貪り食べあって消滅した。
 オレは大アクビをする。
 部屋にはオレの他に月影さんとマヤがいて、マヤが法的に所持が禁止されているモノとよく似たホルスターに入った火器を月影さんに渡しているのが見えた。
「はい、これがオーガズム銃……免許なくても撃てるから、地球のモノじゃないから所持していても逮捕されないから……ただし、25発発砲したら気持ちいいのが、地球のサルには半端ない感覚になるから注意してね」

 月影さんが複雑そうな顔で宇宙人から渡された銃を眺めていると、殺し屋の顔をしたヌイグルミキーホルダーが、けたたましく鳴いた。
「敵だ! 敵だ! 六時の方向から敵が迫って来る、敵だ! 敵だ!」

 玄関のチャイムが鳴って、オレがドアを開けると見知らぬ恰幅がいいメタボ男性が立っていた。
「どちらさまですか?」
 横幅が広くて恰幅がいい男性が、顔の汗をタオルで拭きながら言った。
「やっぱり、わからないかオレだよオレ、子供の時に小学校で一緒だった……太目 肉男だよ」
「おおっ、肉男か久しぶりだな……だいぶ見ないうちに、変わってしまっ……」
 オレはあるコトに気づいて、慌ててドアを閉めてドア越しに言った。
「おまえ、肉男にくおじゃ無いだろう、太目 肉男は渡米した先で餓死したと噂で聞いたぞ! おまえ誰だ! いくらなんでもそんなメタボ体型に変貌するのも程がある」

 ドアの向こう側から、含み笑いが聞こえてきた。
「バレたかぁ……そうとも、オレは友人や身内に化けられる変身宇宙人『メタバケ星人』だ」

 変身宇宙人メタバケ星人──オレの友だちや身内に化けるコトができる宇宙人……オレが親しいと感じている人にしか変身できない、巨大化ができる。

 変貌した肉男に化けたメタバケ星人がドアの向こう側から言った。
「今日の午後……25番地の採石場に来い、来ないとおまえの母親に変身して、恥ずかしいコトをしてやるからなメタ」
 そう言い残してメタバケ星人は去っていった。
 オレは玄関で頭を抱えてしゃがみ込む。
「どうして、オレは変身宇宙人なんて描いちゃったんだろう……それも、親しい人に変身できる設定で」
 マヤがオレを見下ろして言った。
「立ってお父さん……お父さんが自分で描いたんだから……責任とって闘わないと」

 マヤは、顔を横にそむけると。
「地球を侵略するのはマンコ・カパック星人のあたし……あんな二次元の紙に描かれた、ド素人の田舎星人に奪われてたまるか」
 
  ◆◆◆◆◆◆

 25の停留所を越えて、オレとマヤと月影は市営のバスで採石場にやって来た。
 採石場にはオレの母親に化けたメタバケ星人が、口に赤い風車をくわえて立っていた。
 風車をくわえたメタバケ星人が言った。
「これから、この母親の姿で恥ずかしいコトをしてやるメタ」
 そう言って、オレの母親の姿をしたメタバケ星人は、足を開いて母親の胸を揉みはじめた。
「どうだぁ、自分の母親が胸を揉んでいる姿を見た気分は……この採石場は風も強いから、やがて母親の死スカートもめくれ上がるぞ……メタメタ」
「うわぁぁぁ、やめてくれぇ母さんの姿で、変なコトしないでくれぇ」
 オレがメンタルにダメージを負っていると、マヤが月影さんに命じる声が聞こえた。
「月影……おばあちゃんの姿で変なコトをしている、田舎宇宙人をオーガズム銃でブチ抜いちゃってよーし」

 月影さんが構えて発砲したオーガズム弾丸は、ことごとくメンバケ星人に、アクロバットな動きでかわされる。
「そんなへなチョコ玉が当たるかメタメタ……こうなったら、スカートの中のパンツ下ろして、もっと恥ずかしいコトをしてやるメタメタ」
「やめてぇくれぇ!」

 オレは完全に誠意を喪失していた、乱射した月影さんは地面に倒れて「あふぅぅぅ」と、気持ちよさそうな声を発して痙攣している。
 
 このままだと、オレが怪獣ノートに描いた変身宇宙人に地球は侵略されてしまうかも知れない……オレがそう思った時、オートバイに乗ったイカカマキリングが疾走してきて、オレの近くに停まった。
 イカカマキリングが言った。
「おじさま、あたしが助っ人で変身宇宙人を倒します」

 その言葉を聞いたメタバケ星人が、オレの母親の顔で耳まで裂けた口で笑う……うわぁぁぁ!

「やれるもんなら、やってみろ……オレを倒す前に巨大化して踏み潰してやる……60秒以内にオレを倒すしか、巨大化を阻止する方法は無いメタメタ」

「だったら、25秒で倒す……とぅぅぅぅ!」
 空中にジャンプしたイカカマキリングは、高速キリモミ回転でメタバケ星人を蹴り飛ばした。
 奇声を発して崖から滑落していく、メタバケ星人の姿をオレは見た。
「メタメタ……メタぁぁ」
 爆発するメタバケ星人……だが、メタバケ星人は根性で爆発した肉片から急速再生すると、崖を這い上がってきて。

 オレたちの前に土下座した。
「ごめんちゃい、許してメタメタ……ボクが悪かったですメタ」
 地面に風車を刺して詫び続ける、メタバケ星人。
 オレが許してやろうかと、思ったその時──いきなり、メタバケ星人は態度を豹変させて反撃に出た。
「しゅねっ!」

 地面に刺してあった赤い風車を引き抜いて、太目 肉男の姿でオレを刺し殺そうとする最低宇宙人。
 イカカマキリングの回転イカカマ蹴りが、卑怯者のメタバケ星人に炸裂する。
 メタバケ星人は、オレの母さんや近所の人やなぜか有名人の姿や、オレの親友の姿やオレの姿にも、次々と変身しながら崖を転げ落ちていった。

「メタァァァァァァ!」
 なにがなんだかわからないままに、一つの闘いは終わって……地球は守られた……かな?

 イカカマキリングが持っていた、スマホの画面をオレに向けて言った。
「おじさま、見て下さい『砂浜にナゾの巨大卵が漂着』ですって……すでに次の侵略怪獣は動き出しています」
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