25光年の侵略愛娘

楠本恵士

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第二十話・お父さんとハイキング……山だ谷だ怪獣だ!

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 オレは月影さんの提案で、マヤを含めた山歩きのハイキングに来た……はずだった。
「ヒーッ、ヒーッ、なんでこんな岩山を……これはもう、ハイキングのレベルじゃない!」
 最初はなだらかなハイキングコースの山道を歩いていた、コースが変更されたのは山道で野生生物と未知の生物との激突を、目撃してしまった時からだった。

 山道でオレとマヤと月影さんは、野生のクマと毛むくじゃらの獣人が、取っ組み合いの喧嘩をしている場面に遭遇した。
(なんだぁ? クマとビッグフットが闘っている?)

 クマとビッグフットは、相方とも一歩も譲らず互角の闘いをしていた。
 なぜか、月影さんが関節をポキポキ鳴らして舌なめずりをする。
「さてと、今日はどちらを応援するかな」
 月影さん、あの二匹を知っているのか? (応援ってなに?)
 よく見ると、地面には円が掘られていた──相撲の土俵?

 勝負がなかなかつかない闘いに、先へ進めないでイラついたマヤが小石を投げつけた。
「えいっ!」
 小石はクマの頭に当たった、闘いを邪魔されたクマとビッグフットは怒りの形相でオレたちに迫ってきた。
「逃げろぅぅぅ! クマとビッグフットだぁぁぁッ」

 山の中を無我夢中で逃げたオレたちは、いつの間にかハイキングコースから外れて、登山コースの岩山を登っていた。
「死ぬ、死ぬ、滑落したら確実に死ぬ」
 月影さんは、サバイバルの要領でスイスイと登っていき。
 マヤは瞬間移動で、安全に登っていく。
「お父さん、遅いよ……わぁ、景色すごくいい麓の町があんなに小さく見える……家がミニチュアセットようだ怪獣で踏み潰したら、気持ちいいんだろうなぁ」

 オレは必死の思いで山頂に辿り着いた。
 山頂からの絶景を満喫する間もなく、方位磁石を見ていた月影さんが言った。
「山の天候は変わりやすい、あと一時間で雨が降る……その前に、あの集落まで降りる」
 月影さんが指差した先には谷間に、数戸の集落が見えた。
「行くぞ、死にたくなかったら注意して降りろ……山登りは登るよりも降りる方が注意が必要だ」

 オレたちはなんとか、雨が降る前にさびれた集落に到着した。
 節穴から小屋の中を覗くと、揺らぐ炎が見えた。
(誰か住んでいる?)
 オレが誰が住んでいるんだろうと考えにいると、月影さんが躊躇ちゅうちょなく木戸を開けて小屋の中に入った。
 月影さんが小屋の奥に向って呼びかける。
「ウッホさん居る? 山小屋に一泊させてもらいたいんだけれど」
 山小屋? ここ山小屋なのか?

 オレがそう思っていると、小屋の奥から毛むくじゃらの獣人が現れた。
「ウホッ」
「うわぁぁぁ! ビッグフットだぁ!」
 大声をあげたオレを、月影さんがたしなめる。
「失礼だぞサル、山の民に対して……一泊の世話になるんだから、頭くらい下げろ、マヤさまみたいに」
 見るとマヤが、ビッグフットに向って丁寧ていねいに頭を下げて、腹のポケットから取り出したバナナの房をビッグフットに差し出した。
 月影さんがオレに向って言った。
「さすがマヤさま……三人分の宿泊代を払ってくださった」
 バナナが山小屋の宿泊代?

 オレがそんな疑問を感じていると、木戸を開けて怒りの形相のビッグフットが、小屋の中に飛び込んできた。
 クマとの相撲を邪魔されたビッグフットだった。
 相撲ビッグフットは、オレのベルトに手を回すと四つに組んで相撲をはじめた。
 狭い小屋がマンコ・カパック星の、ご都合主義空間科学で広い土俵へと変わる。
「残った! 残った! 残った!」
 いきなり、月影さんが行司を務め、オレの姿も裸に廻しを巻いた姿に変わる。
 オレの廻しを巻いた股間の隙間から、男のサブシンボルがチラッと覗く。
「勝負あった決まり手〝玉出し〟でビッグフット山の勝ち!」
 ビッグフットは、ごっあんですのポーズをして、満足気に小屋から出ていった。
 空間は元の山小屋へと戻った。
「なんだったんだ、一体? ってなんでオレだけ廻し姿のまま山小屋に?」

  ◆◆◆◆◆◆

 山小屋での夕食は、チャンコ鍋だった。
 月影さんに通訳してもらった、山小屋主のウッホさんによると。
 オレに相撲勝負を挑んできたビッグフットは、ウッホさんの息子で、この山を守っている獣人戦士だというコトだった。
「そうだったのか、クマと相撲の稽古を邪魔されたから怒ったのか……それは、悪いコトをしたな」
 さらに、ウッホさんは谷に現れる怪獣のコトも月影さんの通訳で語った。

 ビッグフットの山で山神として、祀られている怪獣が最近荒ぶっているらしい。
「どんな怪獣だろう? 山中の怪獣なんて描いた覚えは無いけれど?」
「ウッホさんは、荒ぶっている山神さんじん怪獣『ハラタキ』を鎮めて欲しいと言っている」
「ハラタキ? 覚えがないなぁ」
 その日は山小屋に一泊して、翌日ハラタキが潜む谷に行ってみるコトにした。

  ◆◆◆◆◆◆

「ハラタキ、ハラタキ……マンコぅ♬ マンコぅ♬」
 翌日──マヤは上機嫌で変な歌を歌いながら、先頭で谷へ向って歩く。
 オレと相撲をとったウッホさんの息子さんも、山の案内獣人として同行してくれた。
 水が無い谷底に降りたオレたちは、周囲を見回す。
「どこに、山神怪獣がいるんだ?」
 オレの疑問に、ウッホさんの息子さんが、25メートルほどの岩山を拳で示す。
 見ていると、岩山が動いて怪獣が現れた。
 背中から円筒が、三本づつ合計六本、左右に突き出た。

 マヤが言った。
「原子番号25番……マンガン、お父さんあの円筒形、大きな乾電池だよ」
「なにぃぃ?」
 山神怪獣ハラタキから突き出た、プラスとマイナスの電極から電流が迸る。
「ヤバい、荒れている……まてよ、あの姿どこかで見たような……あッ⁉」
 オレは思い出した、描いて丸めて捨てた怪獣の絵も、あったことを。
(マヤが拾って実体化させたのか)

 ハラタキは、咆哮して暴れ回る。
 放電が谷の木々をなぎ倒す──荒ぶる山神をどうすれば鎮められるのが、考えていたオレはハラタキが足を四股でも踏むように、踏み鳴らすのを見て、あるコトに気づいた。
「月影さん、ウッホさんの息子さんに聞いてください……もしかしたら、ビッグフットがもっと多かった時期は、相撲が盛んだったんじゃないんですか?」
「聞いてみる……ウホッホホホッ……ウキキッ……その通りだと言っている、今は相撲をやるのは自分だけになってしまって寂しいとも」

 ナゾが解けた。
「神前で行う〝奉納ほうのう相撲〟です……それが無くなったからハラタキは怒って荒ぶっているのです……相撲しましょう」

 オレとビッグフットは、山神怪獣の前で相撲をとった。
 ハラタキは足を踏み鳴らして喜ぶ、やっぱり相撲が観たかったんだ。
「さあ、月影さんも廻しをつけて、オレと組みましょう」
「はぁ? なんで、あたしまで」
「マンコぅ、月影……胸丸出しの廻し一丁になって、お父さんと相撲して」
 月影さんは、マヤの言葉に赤面する。
「ち。ち、ちょっと待ってください…マヤさま……あたし相撲なんて一度も、まして廻し一丁だなんて」
「問答無用、えいっ〝着せ替え光線〟月影、お相撲さんになっちゃえ」

 光線を浴びた月影さんの姿が、ノーブラ廻しでマゲを結った女性力士姿に変わる。
「ぎゃあああッ」
「月影、残った、残った」
 マヤの行司で、女性の月影さんと男のオレが、がっぷり四つに組んで互いの廻しをつかむ。
 股間に食い込む廻し……エロチックな奉納相撲だった。
 オレが月影さんに投げ飛ばされると、ノーブラで乳房丸出しの月影さんを見たハラタキは、嬉しそうに咆哮して去っていった。
「決まり手……〝乳落とし〟月影の勝ち」

 こうして、オレたちは、荒ぶっていた山神怪獣の鎮めに成功した。
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