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第十九話・お父さん……時速25キロで逃げる犯罪マシンが悩み相談で家に来たよ
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その日──オレの家に凱旋幹部ギン・クールが一体の等身ロボットを連れてやって来た。
「先日は巨大女神ロボットの件、かたじけないでござる──貴殿の力で、女神ロボットは無事にもどってきたでござる」
「それは良かった……で、今回は何かまた問題でも」
オレはギンの隣に正座しているロボットを見た……その特徴的な外見は描いたオレにも覚えがある。
コインロッカーに、下半身と手足が生えたような容姿の犯罪マシン『コインロッカーマン』だ──コインロッカーマンは硬貨を入れると使用可能になる。
そして、荷物を入れた人間が離れるとそのまま、中に入った荷物ごと逃げて窃盗する。
「まあ、元々犯罪を前提に設定した犯罪マシンだから……さすがに大金を動かす、詐欺ロボットは描かなかったけれど」
コインロッカーマンが呟く声が聞こえた。
「創造主さま、わたしの設定なんとかなりませんか? もう、荷物の持ち去り犯罪したくないんです」
話しを聞いてみると、コインロッカーマンは持ち去る際に投入された硬貨と、持ち主が重要だと思うモノ……運転免許証やマイナンバーカードや携帯電話などは封筒に入れて、残してくるらしい。
「この間も、わたしの中に置いた荷物の中に、亡き母親から娘に当てた手紙があって読んで号泣してしまいました……もう、犯罪マシンは嫌です!」
「他の犯罪マシンはどうしている? 頭が撮影カメラのトウサツマンとか、走ってくる自動車にワザとぶつかって金銭を請求するアタリヤマンとかは?」
「トウサツマンは映画館に入ろうとしたら、入り口で止められて逮捕されてしまいました……アタリヤマンは、自分の方より相手の車の方の修理代を請求されて、犯罪から足を洗いました」
「そっか……わかった、いろいろと考えてみよう」
オレはコインロッカーマンを連れて、外に出た。
そして、ある会社の中にコインロッカーマンを連れて入って、コインロッカーマンを使ってくれるように頼み込んだ。
「お願いします、女子更衣室のロッカールームに、コインロッカーマンを置いてやってください」
対応した女性事務員の答えは冷淡だった。
「結構です……ロッカーの数なら間に合っていますから」
「そこをなんとか、ロッカールームの監視もできますから」
「それって二十四時間、女性のロッカールームが見られているってコトですよね……お引き取りください」
◇◇◇◇◇◇
次にオレは大学のスポーツ部のロッカーに、コインロッカーマンを置いてくれるように頼んだ。
対応してくれた年配の職員は、手招きでロッカールームを見せてくれた。
そこには、ボコボコに凹んだロッカーが、25個並んでいた。
年配の職員がオレとコインロッカーマンに、穏やかな声で言った。
「試合に負けた選手が八つ当たりで、ロッカーを蹴ったり殴ったりするんですよ……もっと、自分を大切にしなさい」
オレとコインロッカーマンは、企業や学校のを巡って使ってくれそうな所を探したがダメだった。
公園のベンチに歩き疲れて座り込んだ、オレにコインロッカーマンが言った。
「もういいですよ、わたしをリサイクルショップにでも売ってください……それがダメなら、金属回収業の所に自分で歩いて行って、プレスしてもらって再利用してもらいますから」
「なにをバカなコトを……自分を大切にしないとダメだ」
とは言ってみたものの、オレにもこの先どうしたいいものか、わからなかった。
オレは公園内で準備を進めている、音楽イベントの会場をなんとなく眺める……ステージが組まれて、音響機材が運び込まれている。
その、準備を進めているイベント会場の方からアーティスト風の髪を染めた男性が歩いてきて、コインロッカーマンに話しかけてきた。
「もしかして君、音楽に興味あるの? さっきからギターばかり見ていたけれど?」
「はい、わたし音楽好きです……楽器の演奏も少しだけなら」
アーティスト風の男性は少し考えてから、コインロッカーマンに言った。
「ちょっと、こっちに来て」
オレとコインロッカーマンが、男性について行くと男性は、エレキギターをコインロッカーマンに差し出して言った。
「弾いてみて」
コインロッカーマンは手渡されたベースギターを演奏する、素人のオレが聴いても超絶な演奏テクニックだった。
演奏を聴いた、アーティストの男性が拍手をする。
「思った通り、うまいじゃないか……どうだ、オレたちのグループに入って、ベースギターやらないか……ベース担当の奏者を探していたんだ、オレたちのグループはもうすぐインディーズデビューする……明日がそのお披露目ステージだ」
「いいんですか?わたしのようなロボットでも?」
「ロックをやるのに、人間もロボットも関係ない……一緒に夢をつかんで、メジャーに駆け上がろう」
男性が差し出した手を、コインロッカーマンは優しく握り返した。
その光景にオレは、目頭が熱くなった……ロックな青春だぜ!
◆◆◆◆◆◆
次の日──公園での音楽イベントは大成功だった。
コインロッカーマン改め『燃えるロッカーマン』になった彼の、ロッカーの中からエレキギターを取り出すパフォーマンスに、会場に集まった観客は沸いた。
オレはマヤや月影さんと一緒に、燃えるロッカーマンのベースソロ演奏を聴き入った。
「先日は巨大女神ロボットの件、かたじけないでござる──貴殿の力で、女神ロボットは無事にもどってきたでござる」
「それは良かった……で、今回は何かまた問題でも」
オレはギンの隣に正座しているロボットを見た……その特徴的な外見は描いたオレにも覚えがある。
コインロッカーに、下半身と手足が生えたような容姿の犯罪マシン『コインロッカーマン』だ──コインロッカーマンは硬貨を入れると使用可能になる。
そして、荷物を入れた人間が離れるとそのまま、中に入った荷物ごと逃げて窃盗する。
「まあ、元々犯罪を前提に設定した犯罪マシンだから……さすがに大金を動かす、詐欺ロボットは描かなかったけれど」
コインロッカーマンが呟く声が聞こえた。
「創造主さま、わたしの設定なんとかなりませんか? もう、荷物の持ち去り犯罪したくないんです」
話しを聞いてみると、コインロッカーマンは持ち去る際に投入された硬貨と、持ち主が重要だと思うモノ……運転免許証やマイナンバーカードや携帯電話などは封筒に入れて、残してくるらしい。
「この間も、わたしの中に置いた荷物の中に、亡き母親から娘に当てた手紙があって読んで号泣してしまいました……もう、犯罪マシンは嫌です!」
「他の犯罪マシンはどうしている? 頭が撮影カメラのトウサツマンとか、走ってくる自動車にワザとぶつかって金銭を請求するアタリヤマンとかは?」
「トウサツマンは映画館に入ろうとしたら、入り口で止められて逮捕されてしまいました……アタリヤマンは、自分の方より相手の車の方の修理代を請求されて、犯罪から足を洗いました」
「そっか……わかった、いろいろと考えてみよう」
オレはコインロッカーマンを連れて、外に出た。
そして、ある会社の中にコインロッカーマンを連れて入って、コインロッカーマンを使ってくれるように頼み込んだ。
「お願いします、女子更衣室のロッカールームに、コインロッカーマンを置いてやってください」
対応した女性事務員の答えは冷淡だった。
「結構です……ロッカーの数なら間に合っていますから」
「そこをなんとか、ロッカールームの監視もできますから」
「それって二十四時間、女性のロッカールームが見られているってコトですよね……お引き取りください」
◇◇◇◇◇◇
次にオレは大学のスポーツ部のロッカーに、コインロッカーマンを置いてくれるように頼んだ。
対応してくれた年配の職員は、手招きでロッカールームを見せてくれた。
そこには、ボコボコに凹んだロッカーが、25個並んでいた。
年配の職員がオレとコインロッカーマンに、穏やかな声で言った。
「試合に負けた選手が八つ当たりで、ロッカーを蹴ったり殴ったりするんですよ……もっと、自分を大切にしなさい」
オレとコインロッカーマンは、企業や学校のを巡って使ってくれそうな所を探したがダメだった。
公園のベンチに歩き疲れて座り込んだ、オレにコインロッカーマンが言った。
「もういいですよ、わたしをリサイクルショップにでも売ってください……それがダメなら、金属回収業の所に自分で歩いて行って、プレスしてもらって再利用してもらいますから」
「なにをバカなコトを……自分を大切にしないとダメだ」
とは言ってみたものの、オレにもこの先どうしたいいものか、わからなかった。
オレは公園内で準備を進めている、音楽イベントの会場をなんとなく眺める……ステージが組まれて、音響機材が運び込まれている。
その、準備を進めているイベント会場の方からアーティスト風の髪を染めた男性が歩いてきて、コインロッカーマンに話しかけてきた。
「もしかして君、音楽に興味あるの? さっきからギターばかり見ていたけれど?」
「はい、わたし音楽好きです……楽器の演奏も少しだけなら」
アーティスト風の男性は少し考えてから、コインロッカーマンに言った。
「ちょっと、こっちに来て」
オレとコインロッカーマンが、男性について行くと男性は、エレキギターをコインロッカーマンに差し出して言った。
「弾いてみて」
コインロッカーマンは手渡されたベースギターを演奏する、素人のオレが聴いても超絶な演奏テクニックだった。
演奏を聴いた、アーティストの男性が拍手をする。
「思った通り、うまいじゃないか……どうだ、オレたちのグループに入って、ベースギターやらないか……ベース担当の奏者を探していたんだ、オレたちのグループはもうすぐインディーズデビューする……明日がそのお披露目ステージだ」
「いいんですか?わたしのようなロボットでも?」
「ロックをやるのに、人間もロボットも関係ない……一緒に夢をつかんで、メジャーに駆け上がろう」
男性が差し出した手を、コインロッカーマンは優しく握り返した。
その光景にオレは、目頭が熱くなった……ロックな青春だぜ!
◆◆◆◆◆◆
次の日──公園での音楽イベントは大成功だった。
コインロッカーマン改め『燃えるロッカーマン』になった彼の、ロッカーの中からエレキギターを取り出すパフォーマンスに、会場に集まった観客は沸いた。
オレはマヤや月影さんと一緒に、燃えるロッカーマンのベースソロ演奏を聴き入った。
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