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第6話 明未に寄り添う大人達(明未の視点)
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2028/9/3(日)AM8:50
「智加。あたし達、氷の里ホールに行って来るから洗い物お願いね?」
「つかおめえは今回関係無えから来んな!」
「んじゃあ皆行くぞ、ついでにヅラ男にお昼代奢らせに!」
こうして彼等は、朝食を食べ終えて氷の里ホールへと向かった。ていうか、桂お兄ちゃんが可哀想…。わたしは、彼らが居ないから思いっ切りボイトレしていた。正午になる少し前。
(ピンポ~ン♪)
「誰だろう?」と思いながらドアのレンズを除くと、あびるお姉ちゃんが居た。
「やっほ~いめいみん!。あいつらレコーディングでしょ?、お昼ご飯はどうするの?」
「か、カップラーメン…。」
「そっか…。もし良かったらあーしん家で一緒に食べよ~?」
「えっ!、でも悪いよ…。」
「前にも言ったじゃん、『めいみんならいつでも大歓迎だ』って!。それにもうそろそろそうめん食べ切らなきゃいけないから、お願ーい、協力して~?」
「わ、解ったよ。いつも有り難う…。」
こうしてわたしは又しても、鶴牧家で手作りの薬味を添えたおそうめんを御馳走になってしまった…。昼食後、わたしはこう切り出す。
「ご馳走様でした。あびるお姉ちゃん、わたしにも食器洗いさせて?」
「そんな事しなくてイイから!、それより早く帰った方イイよ?。家空けたままだと、又あいつらに虐待されるよ~?」
「確かに、あいつらならやり兼ねねえ。『何勝手に家ん中空けてんだ!』みたいな感じで。だから早く帰んな!」
「皆…。本当に有り難う!」
こうしてわたしは、鶴牧家の方々の善意に甘えさせて頂き、足早に帰宅の途に着いた…。わたしが家に着いてから数分後に皆が帰って来て、智枝がノックもせずに。
「よお智加!。つーがあだしら、ヅラ男から曲の著作権を貰いつつ、スタジオ代、MyTunesやSpotfly等への配信代、そして昼食代も出させてやったぜ!」
智枝が勝ち誇ったようにほくそ笑みながらそう言った。ていうかこの場合、『貰った』より『奪った』の方が正しい気が…。
2028/9/8(金)
午後4時過ぎ、わたしは学校から帰って来て、お父さんがまだ仕事から帰って来ず、お母さんは買い物で、智枝は友達の家に遊びに行ってる。ボイトレをやるには絶好のタイミングだ。そう思って桂お兄ちゃんから貰ったボイトレ本の切れ端を参考に発声練習をする。
約5分後、「バタン!」と玄関のドアが乱暴に開いた音がして、すぐさまわたしの部屋のドアも乱暴に開かれ、まだ仕事中の筈のお父さんが「何大声出してんだ!」と物凄い剣幕で詰め寄って来た。
「えっ!、まだ仕事中じゃ?」
「今日は棚卸しだから早く終わったんだ!」
そう言いながらわたしの頬をビンタした。「バチン!」という音が部屋中に響き、瞬間わたしは左頬に激痛が走りながらその場に倒れ込んだ。
「ごめんなさい!。ていうか、車の音しなかったから」と言うと「車は車検に出してて、職場の後輩に送って貰ったんだ!。いつもより早く帰って来てみたら、こんな近所迷惑な事しやがって!」と言いながらわたしを蹴って来たので、慌てて背中を丸めながら「ごめんなさい、ぶたないで!」と懇願しながら約1分間耐えた、その1分がわたしにはまるで1時間以上に感じた…。
お父さんは憂さが晴れたのか?、舌打ちしながら部屋を出て行った。わたしは心身共に傷だらけになりながら部屋の中で泣きながら蹲る事、数分後。
(コンコン)
窓の外からノックする音が聞こえた。わたしは恐る恐る障子を開けると、そこにはあびるお姉ちゃんとざくろお姉ちゃんが何か入ってるビニール袋を持ちながら。
「やっほ~いめいみん♪」
「ど、どしたのだ?、そんなにボロボロになって…。」
「あ、あびるお姉ちゃん、ざくろお姉ちゃん…。」
「待って、今そっちに行くから。これ持ってて」
とわたしにビニール袋を渡し、窓の下の方に手を掛け、登って来てサンダルを脱いだ。
「その様子だと、又お父さんに理不尽にぶたれたんだね?」と言いながら優しくそっと抱きしめてくれた。わたしはあびるお姉ちゃんの胸の中で思いっ切り泣いた。「ほんっと、酷い事をするお父さんだね~…。」と言いながらわたしの頭を撫でてくれた。
約1分後、あびるお姉ちゃんから「少しは落ち着いた?」と聞かれ、「うん…。」と答えると、ざくろお姉ちゃんが「これでも食べて精を出すが良い、我の大好物だ!」と言いながら、ハンバーガーとフライドポテトとコーラが入った袋を渡した。
「ごめんね、ふと思い付きで来たから今回は手料理じゃないけど…。」
「ううん、これでも充分嬉しいよ。有り難う」
「早速頂こうではないか、我が常備の御馳走を」
わたしがコーラを飲もうとすると、ペットボトルが開いてる事に気付き、その事を尋ねるとざくろお姉ちゃんが。
「そのまま開けると、もしかしたら零れて畳が汚れるかも知れんだろ?。そしたら奴等の事だから絶対メイミスに大激怒するだろ?」
「それに蓋を開けたらその音に気付いて、家族の誰かが『智加に余計なモン食わせんな!』みたいな感じで怒鳴り込んで来るかもと思ったから敢えて開けといたんだよあーしら」
「そこ迄わたしの事を考えてくれてたんだ、本当に有り難う…。」
わたしは感極まってあびるお姉ちゃんの胸の中で声を押し殺して泣いた。約1分後、あびるお姉ちゃんが。
「少しは落ち着いた?」
「うん、有り難う…。」
「では食するとしよう、我らも丁度小腹が空いて来た所だ」
あびるお姉ちゃんがそう言ってすぐさま、わたし達は一緒にハンバーガーを食べた。こうして大好きな人と一緒に食べるハンバーガーとコーラも又、格別だった。
「ご馳走様、美味しかったよ」
「うむ、喜んで貰えて何よりだ。ところでメイミスよ、来週の日曜に我が校で文化祭をやるのだが、我等も出る事になって、明後日そのリハーサルを氷の里ホール小スタジオでやるのだが、観に来てみないか?、ヤミノにもサポートで入って貰う予定だし」
「行きたい!。ていうかBerryenの演奏観てみたい、練習も本番も!」
「なら当日あーしと一緒にステージの真ん前で観よう!、んじゃあーしら帰るから」
と言って2人はゴミを持ち帰り、窓から出て行った…。
2028/9/10(日)
午前8時半過ぎ。わたしは鶴牧家に向かい、あびるお姉ちゃんが運転する車に乗せて貰ってスタジオに向かった。早速演奏を聴かせて貰うと、先ず皆美人でスタイルが良く上手い。何より皆の想いがダイレクトに伝わって来た。演奏終了後、ざくろお姉ちゃんがこう切り出す。
「どうだメイミスよ、我が演奏は?」
「わたし、プロじゃないし音楽も最近聴き始めたからありきたりな事しか言えないかもだけど…。皆凄く上手いし、何より皆の想いがダイレクトに伝わって来たよ。これでメジャーから声が掛からないなんておかしいよ!」
「確かに。俺も東京で9年間やって来たけど、皆演奏2,3年にしては上手いし、何よりビジュアルは今迄見た中で1番良い。後足りないのは、運やきっかけかな~…。さあ、もうそろそろお昼だし、近くのファミレスでランチにしよう、スタジオ代も含めて俺の奢りだ!」
「やったー!、有り難うずらっち~!」
「あびるお姉様の言う通りですわ~!」
「そーだ!。少し遅くなったけどザックの18歳の誕生日もお祝いしよーぜ?」
「誕生日いつなんだざくろ?。ちなみに俺は7月15日だ」
「くくく、我の生誕は9月6日だ!」
「わたくしは7月4日ですわ」
「ウチは6月3日や、ちなみに3つ上の姉は6月7日やねん」
「アタシャ4月1日だ」
「正確には4月1日午後11時55分ね。ちなみにあーしは4月3日だよ」
「そうなの?、わたしは4月2日0時5分…。ていうかわたし、何もプレゼント用意してないけど…。」
「安心せえ、誰も用意しとらんから」
「瑠実お姉様の言う通りですわ」
「そこは我の為に用意する所だろ!」
こうして笑いが渦巻く中、スタジオを出て近くのファミレスに向かい、ざくろお姉ちゃんの誕生日をお祝いしつつ、皆で楽しく会話しながらお昼ご飯もご馳走になり、わたしはあびるお姉ちゃんの車に、用事がある初お姉ちゃんと一緒に乗せて貰って帰宅した。
「ただいま…。」
「智加、これから高校時代のダチが2人来っから急いで部屋へ行け。昼飯は無しだ、どうせヅラ男に奢って貰ったんだろ?」
成り行きとはいえ、確かにその通りだから返す言葉も無い…。わたしは大人しく従い、いつ終わるか解らない強制待機を余儀なくされた…。
午後1時頃にお客さんが来て、お父さん、お母さん、お客さん2人、計4人で玄関の中、同時にわたしの部屋の真ん前で駄弁っていて…。
「んでよ修蔵、こないだヅラ男と再会して、俺の自慢の愛娘の為に曲作らせたんだよ午前中」
「お前相変わらずだな~」
「んだぞおめえ!」
「何言ってるの?、あたし達の役に立てるんだからヅラ男君も嬉しい筈よ」
こんな感じで約1時間耐えてるけど、1時間以上に長く感じた。まして大好きな桂お兄ちゃんの悪口を言ってるから尚更…。わたしはあびるお姉ちゃん家に避難したいけど、出た所で又お父さんから『出て来んな!』って怒鳴られるかと思うと、足が竦んでしまった。そんな中…。
(コンコン)
窓の外から昨日同様、ノックする音が聞こえた。わたしは恐る恐る障子を開けると、そこにはあびるお姉ちゃんと初お姉ちゃんが何か入ってるビニール袋を持ちながらこう聞いて来た。
「ごきげんよう、明未お姉様」
「そっち行っても良~い?」
わたしは驚きながらも「う、うん、良いけど…。」と驚きつつそう答えると、2人は毎回恒例の様にわたしにビニール袋を渡し、窓の下の方に手を掛け、登って来てサンダルを脱いだ。
「何かやけに部屋の向こうがうるさいね~?」と尋ねるあびるお姉ちゃんに事情を説明すると。
「これにずっと耐えてますの?。玄関の中にすぐドアあるのに、大声出したらその部屋の人が迷惑するって何で解らないんでしょう?」
「全くだよ、大の大人が4人も揃って。あーしが注意して来てやる!」
わたしはと咄嗟に小声で「待って!」と言いながらあびるお姉ちゃんの腕を掴み、「そんな事したらわたし、後でお父さんに又大激怒されるよ、この部屋に入った2人も一緒に!」
冷静になったあびるお姉ちゃんがわたしの右隣りに、初お姉ちゃんがわたしの左隣りに、それぞれ座りながらこう切り出す。
「ほんっと、どうしようも無い人達だねえ、全く…。」
「彼らが帰る迄、マリみたのラノベ、読みます?」
「あと飲み物も持って来たよ~♪」
「本当、いつも有り難う。わたしも前からマリみたってどんな話なのか気になってたんだよ」
そう答えるわたしに、初お姉ちゃんがわたしに、マリみた第1巻を渡してくれた。それを読んでるわたしを2人が興味津々に見入っていた。わたしは気になってこう切り出す。
「あの~、わたしが本読んでる姿なんか見て楽しい?」
「勿論ですわ、だってわたくしが好きな物を、一生懸命好きになろうとなさってるんですもの」
「気にしないで続きを読んでて良いよ、あーしらもめいみんをそのまま見てるから~♪」
わたしは何とも言えない気持ちになりながらも、そのままマリみた第1巻を読み続けた。読み始めてから約1時間後。
「んじゃ俺、そろそろ帰っから。あんまヅラ男や智加ちゃんの事いじめんなよ?」
「んだぞおめえ!」
「いいんだよ、あんなドン臭え役立たず共!」
「んじゃ気を付けて帰ってね、修蔵君、半田君」
と言って漸く彼等が帰って行き、気配が無くなったのを確認して2人がこう切り出す。
「漸く帰りましたか、騒々しい方々でしたわね~…。」
「別に気にしてないよ、いつもの事だから…。」
「めいみんが1日も早くあいつらから解放されるように、一緒に頑張ろう。んじゃ来週の日曜日、坂沼高の校門前で待ってるから、じゃあね」
「ごきげんよう明未お姉様、では失礼致しますわ」
そう言って2人は文庫本と飲み物を持ち帰り、窓から出て行った…。
2028/9/17(日)PM1:00
文化祭当日、わたしはBerryenのライブを観る為に坂沼高に来た。校門前であびるお姉ちゃんが待っていて、体育館に案内されて一緒に観た。他にも男性4人バンド、5人組女性アイドル、男性アコギデュオ、そしてBerryen。
Berryenはプロを目指してるだけあって1番上手くて聴き応えがあった。まして桂お兄ちゃんがアレンジを手伝ってるから尚更。当然この中で1番、拍手と喝采が大きかった。演目終了後、わたしはあびるお姉ちゃんと一緒にBerryenの所に向かうと、何故か智枝とお父さん、お母さんが来ていて、智枝がこう言い出す。
「いや~上手いなおめえら、柄にも無く感動しちゃったよ~。つーがあだし思ったんだけど、あだしも学芸会当日に、見てくれた人達に感動を届けたくなったから、おめえら5人共、学芸会であだしのバックバンドやれ。ドリル女はリズムギターな!」
「はあっ!。何でウチらがそんな事せなあかんねん?」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「友達に頼めば良いだろ?、俺と違っていっぱい居るみたいだし」
「あだしの友達に、楽器弾ける人居ねえんだよ。ピアノ弾ける子居るけど、その子シンセの音作り出来ねえし」
「だからって、何で我らが協力せねばならんのだ?」
「もし協力しねえと、智加がどんな目に遭うかな~?」
「皆。今回だけ協力してあげて、お願い!」
あびるお姉ちゃんが一歩前に出て、皆に頭を下げ出した。あまりにも真剣に懇願する姿に皆根負けし、蒼絵お姉ちゃんが溜め息をつきながらこう切り出す。
「…今回だけだぞ」
「イエーイ、やったー!。んじゃ当日宜しく頼むわ」
「皆ちゃんと練習しとけよ、特にヅラ男!。帰っぞ2人共」
お母さんが「はいはい」と同調しながら3人は帰って行った、何て図々しい人達なんだろう?、と呆れながらわたしは、深々と頭を下げながらこう切り出す。
「皆、あの人達に代わってお礼を言うよ。本当に有り難う、そして無理言ってごめんなさい!」
「めいみんが謝る事無いよ~!」
「てか話には聞いとったけど、ホンマに最悪な奴等やな~…。」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「産まれ落ちる所を間違えたのではないのか?、メイミスよ」
「つかあんなの家族じゃねえし、それ以上にロックじゃねえ!」
「でもまあ、俺らが手伝う事で明未が虐待されずに済むなら安いモンだ」
皆本当に良い人達だ。わたしも含めてあの人達から解放される日が、1日でも早く来るように頑張らないと…。
2028/9/18(月、祝)AM8:50
智枝達3人は、朝食を食べ終えて、前回同様氷の里ホールへと向かった。桂お兄ちゃんが毎回気の毒でしょうがない…。わたしは、彼らが居ないから思いっ切りボイトレしていた。正午になる少し前。
(ピンポ~ン♪)
「誰だろう?」と思いながらドアのレンズを除くと、あびるお姉ちゃんが居た。
「やっほ~いめいみん!。あいつら又レコーディングでしょ?、お昼ご飯はどうするの?」
「か、カップラーメン…。」
「そっか…。もし良かったら又あーしん家で一緒に食べよ?」
「えっ!、でも」
「ストーップ!。同じ事を2回も言わせないで!」
「わ、解ったよ。いつも有り難う…。」
こうしてわたしは又しても、鶴牧家で葱の香味仕立ての炒飯を御馳走になってしまった…。昼食後、わたしは前回同様、こう切り出す。
「ご馳走様でした。あびるお姉ちゃん、わたしにも食器洗いーー」
「めいみん、同じ事を2回も言わせないの!」
「そうだぜ、アタシらの事は気にしなくて良いからとっとと帰りな!」
「2人共、いつも有り難う!」
こうしてわたしは、又しても鶴牧家の方々の善意に甘えさせて頂き、足早に帰宅の途に着いた…。わたしが家に着いてから数分後に皆が帰って来て、智枝が前回同様ノックもせずに入って来た。そして前回同様、桂お兄ちゃんに色々奢らせた事を自慢げに語り出した。毎回思うんだけど、本当に図々しいなあ…。
「智加。あたし達、氷の里ホールに行って来るから洗い物お願いね?」
「つかおめえは今回関係無えから来んな!」
「んじゃあ皆行くぞ、ついでにヅラ男にお昼代奢らせに!」
こうして彼等は、朝食を食べ終えて氷の里ホールへと向かった。ていうか、桂お兄ちゃんが可哀想…。わたしは、彼らが居ないから思いっ切りボイトレしていた。正午になる少し前。
(ピンポ~ン♪)
「誰だろう?」と思いながらドアのレンズを除くと、あびるお姉ちゃんが居た。
「やっほ~いめいみん!。あいつらレコーディングでしょ?、お昼ご飯はどうするの?」
「か、カップラーメン…。」
「そっか…。もし良かったらあーしん家で一緒に食べよ~?」
「えっ!、でも悪いよ…。」
「前にも言ったじゃん、『めいみんならいつでも大歓迎だ』って!。それにもうそろそろそうめん食べ切らなきゃいけないから、お願ーい、協力して~?」
「わ、解ったよ。いつも有り難う…。」
こうしてわたしは又しても、鶴牧家で手作りの薬味を添えたおそうめんを御馳走になってしまった…。昼食後、わたしはこう切り出す。
「ご馳走様でした。あびるお姉ちゃん、わたしにも食器洗いさせて?」
「そんな事しなくてイイから!、それより早く帰った方イイよ?。家空けたままだと、又あいつらに虐待されるよ~?」
「確かに、あいつらならやり兼ねねえ。『何勝手に家ん中空けてんだ!』みたいな感じで。だから早く帰んな!」
「皆…。本当に有り難う!」
こうしてわたしは、鶴牧家の方々の善意に甘えさせて頂き、足早に帰宅の途に着いた…。わたしが家に着いてから数分後に皆が帰って来て、智枝がノックもせずに。
「よお智加!。つーがあだしら、ヅラ男から曲の著作権を貰いつつ、スタジオ代、MyTunesやSpotfly等への配信代、そして昼食代も出させてやったぜ!」
智枝が勝ち誇ったようにほくそ笑みながらそう言った。ていうかこの場合、『貰った』より『奪った』の方が正しい気が…。
2028/9/8(金)
午後4時過ぎ、わたしは学校から帰って来て、お父さんがまだ仕事から帰って来ず、お母さんは買い物で、智枝は友達の家に遊びに行ってる。ボイトレをやるには絶好のタイミングだ。そう思って桂お兄ちゃんから貰ったボイトレ本の切れ端を参考に発声練習をする。
約5分後、「バタン!」と玄関のドアが乱暴に開いた音がして、すぐさまわたしの部屋のドアも乱暴に開かれ、まだ仕事中の筈のお父さんが「何大声出してんだ!」と物凄い剣幕で詰め寄って来た。
「えっ!、まだ仕事中じゃ?」
「今日は棚卸しだから早く終わったんだ!」
そう言いながらわたしの頬をビンタした。「バチン!」という音が部屋中に響き、瞬間わたしは左頬に激痛が走りながらその場に倒れ込んだ。
「ごめんなさい!。ていうか、車の音しなかったから」と言うと「車は車検に出してて、職場の後輩に送って貰ったんだ!。いつもより早く帰って来てみたら、こんな近所迷惑な事しやがって!」と言いながらわたしを蹴って来たので、慌てて背中を丸めながら「ごめんなさい、ぶたないで!」と懇願しながら約1分間耐えた、その1分がわたしにはまるで1時間以上に感じた…。
お父さんは憂さが晴れたのか?、舌打ちしながら部屋を出て行った。わたしは心身共に傷だらけになりながら部屋の中で泣きながら蹲る事、数分後。
(コンコン)
窓の外からノックする音が聞こえた。わたしは恐る恐る障子を開けると、そこにはあびるお姉ちゃんとざくろお姉ちゃんが何か入ってるビニール袋を持ちながら。
「やっほ~いめいみん♪」
「ど、どしたのだ?、そんなにボロボロになって…。」
「あ、あびるお姉ちゃん、ざくろお姉ちゃん…。」
「待って、今そっちに行くから。これ持ってて」
とわたしにビニール袋を渡し、窓の下の方に手を掛け、登って来てサンダルを脱いだ。
「その様子だと、又お父さんに理不尽にぶたれたんだね?」と言いながら優しくそっと抱きしめてくれた。わたしはあびるお姉ちゃんの胸の中で思いっ切り泣いた。「ほんっと、酷い事をするお父さんだね~…。」と言いながらわたしの頭を撫でてくれた。
約1分後、あびるお姉ちゃんから「少しは落ち着いた?」と聞かれ、「うん…。」と答えると、ざくろお姉ちゃんが「これでも食べて精を出すが良い、我の大好物だ!」と言いながら、ハンバーガーとフライドポテトとコーラが入った袋を渡した。
「ごめんね、ふと思い付きで来たから今回は手料理じゃないけど…。」
「ううん、これでも充分嬉しいよ。有り難う」
「早速頂こうではないか、我が常備の御馳走を」
わたしがコーラを飲もうとすると、ペットボトルが開いてる事に気付き、その事を尋ねるとざくろお姉ちゃんが。
「そのまま開けると、もしかしたら零れて畳が汚れるかも知れんだろ?。そしたら奴等の事だから絶対メイミスに大激怒するだろ?」
「それに蓋を開けたらその音に気付いて、家族の誰かが『智加に余計なモン食わせんな!』みたいな感じで怒鳴り込んで来るかもと思ったから敢えて開けといたんだよあーしら」
「そこ迄わたしの事を考えてくれてたんだ、本当に有り難う…。」
わたしは感極まってあびるお姉ちゃんの胸の中で声を押し殺して泣いた。約1分後、あびるお姉ちゃんが。
「少しは落ち着いた?」
「うん、有り難う…。」
「では食するとしよう、我らも丁度小腹が空いて来た所だ」
あびるお姉ちゃんがそう言ってすぐさま、わたし達は一緒にハンバーガーを食べた。こうして大好きな人と一緒に食べるハンバーガーとコーラも又、格別だった。
「ご馳走様、美味しかったよ」
「うむ、喜んで貰えて何よりだ。ところでメイミスよ、来週の日曜に我が校で文化祭をやるのだが、我等も出る事になって、明後日そのリハーサルを氷の里ホール小スタジオでやるのだが、観に来てみないか?、ヤミノにもサポートで入って貰う予定だし」
「行きたい!。ていうかBerryenの演奏観てみたい、練習も本番も!」
「なら当日あーしと一緒にステージの真ん前で観よう!、んじゃあーしら帰るから」
と言って2人はゴミを持ち帰り、窓から出て行った…。
2028/9/10(日)
午前8時半過ぎ。わたしは鶴牧家に向かい、あびるお姉ちゃんが運転する車に乗せて貰ってスタジオに向かった。早速演奏を聴かせて貰うと、先ず皆美人でスタイルが良く上手い。何より皆の想いがダイレクトに伝わって来た。演奏終了後、ざくろお姉ちゃんがこう切り出す。
「どうだメイミスよ、我が演奏は?」
「わたし、プロじゃないし音楽も最近聴き始めたからありきたりな事しか言えないかもだけど…。皆凄く上手いし、何より皆の想いがダイレクトに伝わって来たよ。これでメジャーから声が掛からないなんておかしいよ!」
「確かに。俺も東京で9年間やって来たけど、皆演奏2,3年にしては上手いし、何よりビジュアルは今迄見た中で1番良い。後足りないのは、運やきっかけかな~…。さあ、もうそろそろお昼だし、近くのファミレスでランチにしよう、スタジオ代も含めて俺の奢りだ!」
「やったー!、有り難うずらっち~!」
「あびるお姉様の言う通りですわ~!」
「そーだ!。少し遅くなったけどザックの18歳の誕生日もお祝いしよーぜ?」
「誕生日いつなんだざくろ?。ちなみに俺は7月15日だ」
「くくく、我の生誕は9月6日だ!」
「わたくしは7月4日ですわ」
「ウチは6月3日や、ちなみに3つ上の姉は6月7日やねん」
「アタシャ4月1日だ」
「正確には4月1日午後11時55分ね。ちなみにあーしは4月3日だよ」
「そうなの?、わたしは4月2日0時5分…。ていうかわたし、何もプレゼント用意してないけど…。」
「安心せえ、誰も用意しとらんから」
「瑠実お姉様の言う通りですわ」
「そこは我の為に用意する所だろ!」
こうして笑いが渦巻く中、スタジオを出て近くのファミレスに向かい、ざくろお姉ちゃんの誕生日をお祝いしつつ、皆で楽しく会話しながらお昼ご飯もご馳走になり、わたしはあびるお姉ちゃんの車に、用事がある初お姉ちゃんと一緒に乗せて貰って帰宅した。
「ただいま…。」
「智加、これから高校時代のダチが2人来っから急いで部屋へ行け。昼飯は無しだ、どうせヅラ男に奢って貰ったんだろ?」
成り行きとはいえ、確かにその通りだから返す言葉も無い…。わたしは大人しく従い、いつ終わるか解らない強制待機を余儀なくされた…。
午後1時頃にお客さんが来て、お父さん、お母さん、お客さん2人、計4人で玄関の中、同時にわたしの部屋の真ん前で駄弁っていて…。
「んでよ修蔵、こないだヅラ男と再会して、俺の自慢の愛娘の為に曲作らせたんだよ午前中」
「お前相変わらずだな~」
「んだぞおめえ!」
「何言ってるの?、あたし達の役に立てるんだからヅラ男君も嬉しい筈よ」
こんな感じで約1時間耐えてるけど、1時間以上に長く感じた。まして大好きな桂お兄ちゃんの悪口を言ってるから尚更…。わたしはあびるお姉ちゃん家に避難したいけど、出た所で又お父さんから『出て来んな!』って怒鳴られるかと思うと、足が竦んでしまった。そんな中…。
(コンコン)
窓の外から昨日同様、ノックする音が聞こえた。わたしは恐る恐る障子を開けると、そこにはあびるお姉ちゃんと初お姉ちゃんが何か入ってるビニール袋を持ちながらこう聞いて来た。
「ごきげんよう、明未お姉様」
「そっち行っても良~い?」
わたしは驚きながらも「う、うん、良いけど…。」と驚きつつそう答えると、2人は毎回恒例の様にわたしにビニール袋を渡し、窓の下の方に手を掛け、登って来てサンダルを脱いだ。
「何かやけに部屋の向こうがうるさいね~?」と尋ねるあびるお姉ちゃんに事情を説明すると。
「これにずっと耐えてますの?。玄関の中にすぐドアあるのに、大声出したらその部屋の人が迷惑するって何で解らないんでしょう?」
「全くだよ、大の大人が4人も揃って。あーしが注意して来てやる!」
わたしはと咄嗟に小声で「待って!」と言いながらあびるお姉ちゃんの腕を掴み、「そんな事したらわたし、後でお父さんに又大激怒されるよ、この部屋に入った2人も一緒に!」
冷静になったあびるお姉ちゃんがわたしの右隣りに、初お姉ちゃんがわたしの左隣りに、それぞれ座りながらこう切り出す。
「ほんっと、どうしようも無い人達だねえ、全く…。」
「彼らが帰る迄、マリみたのラノベ、読みます?」
「あと飲み物も持って来たよ~♪」
「本当、いつも有り難う。わたしも前からマリみたってどんな話なのか気になってたんだよ」
そう答えるわたしに、初お姉ちゃんがわたしに、マリみた第1巻を渡してくれた。それを読んでるわたしを2人が興味津々に見入っていた。わたしは気になってこう切り出す。
「あの~、わたしが本読んでる姿なんか見て楽しい?」
「勿論ですわ、だってわたくしが好きな物を、一生懸命好きになろうとなさってるんですもの」
「気にしないで続きを読んでて良いよ、あーしらもめいみんをそのまま見てるから~♪」
わたしは何とも言えない気持ちになりながらも、そのままマリみた第1巻を読み続けた。読み始めてから約1時間後。
「んじゃ俺、そろそろ帰っから。あんまヅラ男や智加ちゃんの事いじめんなよ?」
「んだぞおめえ!」
「いいんだよ、あんなドン臭え役立たず共!」
「んじゃ気を付けて帰ってね、修蔵君、半田君」
と言って漸く彼等が帰って行き、気配が無くなったのを確認して2人がこう切り出す。
「漸く帰りましたか、騒々しい方々でしたわね~…。」
「別に気にしてないよ、いつもの事だから…。」
「めいみんが1日も早くあいつらから解放されるように、一緒に頑張ろう。んじゃ来週の日曜日、坂沼高の校門前で待ってるから、じゃあね」
「ごきげんよう明未お姉様、では失礼致しますわ」
そう言って2人は文庫本と飲み物を持ち帰り、窓から出て行った…。
2028/9/17(日)PM1:00
文化祭当日、わたしはBerryenのライブを観る為に坂沼高に来た。校門前であびるお姉ちゃんが待っていて、体育館に案内されて一緒に観た。他にも男性4人バンド、5人組女性アイドル、男性アコギデュオ、そしてBerryen。
Berryenはプロを目指してるだけあって1番上手くて聴き応えがあった。まして桂お兄ちゃんがアレンジを手伝ってるから尚更。当然この中で1番、拍手と喝采が大きかった。演目終了後、わたしはあびるお姉ちゃんと一緒にBerryenの所に向かうと、何故か智枝とお父さん、お母さんが来ていて、智枝がこう言い出す。
「いや~上手いなおめえら、柄にも無く感動しちゃったよ~。つーがあだし思ったんだけど、あだしも学芸会当日に、見てくれた人達に感動を届けたくなったから、おめえら5人共、学芸会であだしのバックバンドやれ。ドリル女はリズムギターな!」
「はあっ!。何でウチらがそんな事せなあかんねん?」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「友達に頼めば良いだろ?、俺と違っていっぱい居るみたいだし」
「あだしの友達に、楽器弾ける人居ねえんだよ。ピアノ弾ける子居るけど、その子シンセの音作り出来ねえし」
「だからって、何で我らが協力せねばならんのだ?」
「もし協力しねえと、智加がどんな目に遭うかな~?」
「皆。今回だけ協力してあげて、お願い!」
あびるお姉ちゃんが一歩前に出て、皆に頭を下げ出した。あまりにも真剣に懇願する姿に皆根負けし、蒼絵お姉ちゃんが溜め息をつきながらこう切り出す。
「…今回だけだぞ」
「イエーイ、やったー!。んじゃ当日宜しく頼むわ」
「皆ちゃんと練習しとけよ、特にヅラ男!。帰っぞ2人共」
お母さんが「はいはい」と同調しながら3人は帰って行った、何て図々しい人達なんだろう?、と呆れながらわたしは、深々と頭を下げながらこう切り出す。
「皆、あの人達に代わってお礼を言うよ。本当に有り難う、そして無理言ってごめんなさい!」
「めいみんが謝る事無いよ~!」
「てか話には聞いとったけど、ホンマに最悪な奴等やな~…。」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「産まれ落ちる所を間違えたのではないのか?、メイミスよ」
「つかあんなの家族じゃねえし、それ以上にロックじゃねえ!」
「でもまあ、俺らが手伝う事で明未が虐待されずに済むなら安いモンだ」
皆本当に良い人達だ。わたしも含めてあの人達から解放される日が、1日でも早く来るように頑張らないと…。
2028/9/18(月、祝)AM8:50
智枝達3人は、朝食を食べ終えて、前回同様氷の里ホールへと向かった。桂お兄ちゃんが毎回気の毒でしょうがない…。わたしは、彼らが居ないから思いっ切りボイトレしていた。正午になる少し前。
(ピンポ~ン♪)
「誰だろう?」と思いながらドアのレンズを除くと、あびるお姉ちゃんが居た。
「やっほ~いめいみん!。あいつら又レコーディングでしょ?、お昼ご飯はどうするの?」
「か、カップラーメン…。」
「そっか…。もし良かったら又あーしん家で一緒に食べよ?」
「えっ!、でも」
「ストーップ!。同じ事を2回も言わせないで!」
「わ、解ったよ。いつも有り難う…。」
こうしてわたしは又しても、鶴牧家で葱の香味仕立ての炒飯を御馳走になってしまった…。昼食後、わたしは前回同様、こう切り出す。
「ご馳走様でした。あびるお姉ちゃん、わたしにも食器洗いーー」
「めいみん、同じ事を2回も言わせないの!」
「そうだぜ、アタシらの事は気にしなくて良いからとっとと帰りな!」
「2人共、いつも有り難う!」
こうしてわたしは、又しても鶴牧家の方々の善意に甘えさせて頂き、足早に帰宅の途に着いた…。わたしが家に着いてから数分後に皆が帰って来て、智枝が前回同様ノックもせずに入って来た。そして前回同様、桂お兄ちゃんに色々奢らせた事を自慢げに語り出した。毎回思うんだけど、本当に図々しいなあ…。
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