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第9話 田沼薫、鶴牧蘭になる(桂の視点)
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2028/10/8(日) 学芸会当日
午後2時過ぎ、明未と智枝ちゃんのクラスの催しの合唱が終わり、「以上で6年2組による、合唱を終わります。次は有志によるバンド演奏となります」とアナウンスが流れ、弾幕が降りた。急いで演奏の準備をしている俺達に智枝ちゃんは「やあ諸君、今日はあだしの初ライブだから失敗すんなよ。特にヅラ男!」と上機嫌にそう言った。数分後、再び弾幕が上がり、智枝ちゃんの自己満カラオケ大会…、失礼w。ライブが始まった。
自分に酔いながら気持ち良さそうに歌う智枝ちゃんをよそに、俺は「やってられっか…。」と想っていた。他のメンバーをそれと無く見るに「やってられっか」オーラを発していた、恐らく俺と同じ気持ちだろう…。
智枝ちゃんの演目終了後、「有り難う御座いました。それじゃ皆、最後はあだしの姉の智加の曲を、短いですが聴いてあげて下さい」と言って明未に登場を促してステージを後にした、本当に短いけどな…。
智加のライブを観て(智枝の視点)
あだしは大急ぎでおとーさん達の所に戻ると、おかーさんが「智枝、バッチリビデオに録画しといたわよ」と言うとすぐさまおとーさんが「智加の野郎、もし智枝が温めた場を盛り下げたらお仕置きだ!」と言い出した。
「皆さんこんにちわ、鮫妻 智加です」と自己紹介すると、男子達が「はいどーも!」「おえっ!」「へぶー!」とヤジを飛ばした。幾らあだしが前もってそう言うように指示してたとはいえ、マジウケる!。そんな中、智加の歌が始まった。が、よく見ると皆、あだしの時より楽しそうに演奏してやがる!
「あいつら、あだしん時より楽しそうに演奏しやがって~!」と怒りを露わにするとおとーさんが「全くだ、智枝のバックで演奏出来る事ほど光栄な事も無いのに…。」
ライブは続き、智加が下手糞ながらも一生懸命歌ってると、視線が合った男子に精一杯の笑顔を送りやがった。
「何か智加、一生懸命歌っててカッコイイな~!」
「それに智加って、あんな可愛いかったんだ…。」
「智加ちゃん、頑張れ~!」
(何智加なんかに魅了されてんだよ!、これだから男子は…。)と想うのと同時に、会場全体の歓声も、あだしの時より明らかに盛り上がってた。嫉妬の炎があだしの中から燃え上がってる時、おかーさんがここに来る前、スーパーで生卵買った事を思い出し、丁度今持ってるのを見て妙案を想い付いた。
「おかーさん、生卵1個貸して」と聞くと「生卵なんかどうするの?」とのおかーさんの問いに、「こーするんだよ!」と言いながら智加目掛けて思いっ切り投げ付けてやった。
地元のソフトボール大会の時に練習したあだしの魔球で放った生卵が(グシャッ!)と気持ち悪い音を立てながら智加の額の左上部に命中し、そこから更に血が流れた。流石あだし、我ながらナイスコントロール!
さあ泣け、ステージ上で「あびるお姉ちゃ~ん!」って言いながら泣きついて甘えて見せろ!。とのあだしの期待に反し、途中で投げ出す事無くやり遂げやがった、面白くねえ…。まあ良い、まだあの台詞が残ってるしよ~。
「1番迄ですが聴いて下さり、本当に有り難う御座います。それから、物を投げつけるのは危ないのでやめて下さい、最後に…。」と言い、深呼吸し出した。よし、言え。あの台詞を!
「わ、わたし、いつか東京武道館でライブ出来るように、そしてこの曲で日本一に、絶対なります!」
さっき迄の拍手、喝采がまるで嘘のように、その場のほぼ全員が大爆笑し出した。マジで超ウケる!
「何言ってんだあいつ、ばっかじゃねえの?。無理に決まってる!」
「智加が東京武道館でライブ出来るなら、あたしは都立競技場でライブ出来んじゃね?」
「智加が日本一なら、俺は世界一、いや宇宙一だ!」
とウチのクラスの連中が笑いながらそう言ってる横であだしもこう言う。
「へへへ。智加の奴、本当に言いやがった、マジウケる!」
「我が家の恥晒しめ、帰ったらお仕置き確定だな…。」
とおとーさんがそう言った、マジで楽しみだ。智加の奴、どんな風に絶望すっかな~♪
ライブ終了後(桂の視点)
「偉いよめいみん!。よく最後迄やり切ったよ、あんな過酷な状況で…。」とあびるが早速タオルで明未の生卵まみれの傷を拭いて傷の手当てを始める中、「1番迄だったのが、逆に功を奏したかもな…。」と俺が言うと、明未が緊張の糸が切れたのか?
「うわあああん、あびるお姉ちゃ~ん!」と泣きながらあびるの胸で甘えた。
「よしよし、本当に頑張ったよめいみんも、皆も…。」とあびるが明未の頭を優しく撫でた。
「ホンマに酷い事するな~、あのチョンマゲ女」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「あの額に我が魔剣、ナイハザードを突き刺してやりたいわ」
「ごめんなメミー、庇ってやれなくて…。」
皆それぞれの想いを明未に伝えた後、俺が「皆、帰り支度しよっか…。」と言うと。
(コンコン)
と控室のドアの外からノックが聞こえて来た。俺が「はい」と答えるとドアがゆっくりと開き、恐る恐る現れたのは、何と中学生位の胸の大きなボブカットの可愛らしい少女だった、Dカップ位だろうか?
「あの~、すみません。私、皆さんのライブを観て感動しました。出来れば私もメンバーに入れて頂きたいのですが…。」と少女は俺達に懇願し出した。
数秒間の沈黙の後、俺は「だってよ。どうする?、Berryenの皆さん」と蒼絵達にそう聞くと何故かあびるが。
「これからあーしん家で打ち上げやるから、そこで今のあーしらの現状を話すから、それ聞いてから君の話を聞かせてよ?」と言うと少女が「いいんですか?、有り難う御座います!。私、『田沼薫』と申します。坂沼中1年です」と頭を下げてそう言うと、あびるが「これからあーしん家に行くから、そこの眼鏡っ子と一緒の車に乗って、めいみんも」と言うと明未が両手を合わせながら。
「ごめん皆!。わたし、クラスの後片付けやんなきゃいけないから。打ち上げに参加するの1時間以上遅れるかも…。」
「そんなもんサボっちゃいなよ」
「あびるお姉様の言う通りですわ」
「そういう訳に行かないだろ?、クラス全員の決まりなんだから」
「まして智枝も居るから尚更サボれないだろ?」
「その智枝はサボったり手抜きしそうやけどな…。」
「そうなんだよ~、だからわたしを待たずに皆食べてて良いよ」
と明未が言うとあびるが残念そうに。
「そっか…、了解。腕に寄りを掛けて料理作って待ってるから!」
「ウチも最っ高に美味いたこ焼き作って待っとるで!」
「くくく。メイミスの分も残しておくから安心して庶民の奴隷行事に勤しむが良い!」
「ざくろお姉様の言う通りですわ!」
「もし酷い目に遭わされたらすぐ逃げて来いよ?、アタシらが助けてやるから!」
と蒼絵が言うと薫ちゃんが俺に。
「何か皆さん、随分と個性的ですね…。」
「やっぱり君もそう思うか?」
と言う俺の横で、あびるの車に初と薫ちゃんを乗せて、俺の車に蒼絵、瑠実、ざくろをそれぞれ載せてあびる宅へと向かった…。
「ただいまお母さん、あーしらの他にこの子も打ち上げに混ぜても良い?」
「初めまして、田沼 薫と申します。皆さんのライブを観てファンになった事を伝えたら、私も打ち上げに混ぜて頂く事になりました」
「あらまあ!、随分と可愛いお客様じゃない?、どうぞ上がって。そう言えば明未ちゃんは?」
「クラスの後片付けで1時間以上遅れるんだって」
「それじゃ仕方無いわね…。」と親子揃って残念そうだった…。
台所にて、蒼乃さんと薫ちゃんを含めた全員で打ち上げの準備を行ない、ご馳走も一通り並んで、主役不在の乾杯をした後、薫ちゃんがこう切り出す。
「改めて自己紹介します。ボク、田沼 薫っす、坂沼中1年っす。ボクの事は呼び捨てで良いっすよ?」
「何だお前、自分の事を『ボク』って言ってんのか?」
「ボクッ娘キター!」と発狂するあびるを蒼乃さんが止めて、落ち着いたあびるが更に続ける。
「誕生日いつなの?」と食い気味に聞くと薫が「え、言うんすか?。に、2月29日っす。しかも、午前2時29分に生まれたっす…。」と気まずそうに答えた。
「もしかしてその事でからかわれたりした?、だとしたらゴメンね…。」とあびるが謝りつつ、「ゴメンねついでにもう1つ、薫ちゃんのあだ名ってもしかして(牛ゴリラ)?」と更に質問した、薫は少し間を置いて。
「…そうっす。25年以上前に(奇妙奇天烈百科事典)ってアニメがあったらしくて、作中の(牛ゴリラ)ってキャラの本名が(田沼 薫)だからそのあだ名にされたっす…。」
「あったな~昔そんなアニメ、あれも結構長くやってたな~…。」
「でも何でアタシらなんだ?、バンドなら他にもあるだろうに…。」
と蒼絵がこう聞くと薫が一呼吸置いて…。
「実はボク、色々あって自●しようと思ってたっす。1個上の姉がいるんすけど、姉は何やらせても人並み以上でボクは何やっても人並み以下だから、そのせいでいつもお母さんからぶたれたり怒鳴られたり、お父さんからはいつもシカトされるっす、何でもこなす姉には普通に優しいんすけど…。」
と暗い顔をしながら語り、更に続ける。
「だから自分を変えたくて、以前から好きだった音楽を始めようと思ったんすけど、うちの両親、ボクにはお小遣いくれないっす。そんな時になんと無く見た今日のライブで『この人達、優しくて楽器貸してくれそう』と想ったっす。あっ、あの智枝って子は別っす。生卵投げたの、あの子っすよね?」
と薫が言ってすぐさま俺は。
「やっぱり解る人には解るんだ…。そう言えば今の俺達の現状をまだ話してなかったよね、話しても良いかな?」
と聞くと薫は「あっ、はい…。」と答えたので、俺達がどうやって出会ったか、何で智枝ちゃんなんかに曲を作ってあげてるか、俺が瑠実と結婚を前提に交際するから、それに伴いドラムの瑠実が抜ける事、同時にめいみんバンドを解散させる事を話した。すると薫が真剣な面持ちで。
「ならボクをBerryenのドラマーにして下さい、お願いします!。一生懸命練習するっす、ドラム貸して下さい、ドラム辞めるんすよね?、ならついでに教えて欲しいっす!」と俺らに懇願し出すと。
「ウチらの夫婦生活に支障をきたさない範囲で良ければ、やけどな…。」
「言っとくけどアタシら、本気でプロ目指してっぞ!」
「蒼絵お姉様の言う通りですわ!」
と、Berryenの皆が一斉に薫に質問責めし出すと薫が。
「大丈夫っす、根性ならバスケ部で散々鍛えられたっす!、色んな意味で…。そう言えばあの子の名前って『智加』と『明未』、どっちなんすか?」と聞かれ、事情を説明すると薫は「成る程、そう言う事だったんすね?。だったらボクにも芸名を付けて欲しいっす。前述の理由でこの本名嫌なんすよ」
と薫が言うとあびるが少し考えて「なら(蘭、らん)ってどう?」と聞くと薫が「何で蘭なんすか?」との問いにあびるが。
「あーしら皆、ベリーに関連のある名前だから。丁度クランベリーが居ないから。あーしと同じ(鶴牧)を苗字にすれば(つるも「くらん」)でクランベリーと繋がるっしょ?」
「凄く良い名前っす、今日から(鶴牧蘭)で宣しくっす!」
こうして、田沼 薫に『鶴牧 蘭』という芸名が付けられ、更に続ける。
「そういう訳なんで、ボクをBerryenのドラマーにして下さい、お願いします!、高校は行かないっす!」
「駄目だ!。アタシらは約半年後に高校卒業したら上京するって決めてんだ。そこからまだ2年残ってるだろ義務教育期間が?」
と蒼絵が言うと、あびるが少し考えて。
「だったら2年間地元でお金稼ぎながら力付ければ良くね?、ずらっちだってそうしたんだし。で、晴れて蘭姉ちゃんが中学卒業したら一緒に上京するってのはどう?。それに今からメンバー探してすぐ見つかる保証なんか無いし。ドラマーが最も見つかりにくいっしょ?」と言うと蒼絵が根負けしたのか?。
「…解ったわ。但し、ホンマにちゃんと練習してや。でないとプロになれへんで」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「くくく。我が覇道は茨の道だぞ!」
「有り難うっす!。ボク、一生懸命練習して上手くなるっすー!」
「良かったね、早速メンバーが見つかって」
「だな。それよりメミー、国太達から虐待されてなきゃ良いけど…。」
こんな感じで、皆一緒に明未を心配していた。本当に無事だと良いな~…。そんな中、俺は用を足したくなり、トイレをお借りして用を足し、リビングに戻ろうとした時、蘭が切羽詰まった面持ちでこう切り出す。
「あの、桂さん。すみませんが、お金貸してくれませんか?、2万円程…。」
「何で又そんなお金が必要なんだ!?」
「どうしても緊急で要るっす、お願いするっす!」
「悪いけど、そんな大金を金を貸す事は出来ない。どんな事情があるか知らないけど…。」
「そうっすよね、じゃあ…。」
「ボクを2万で好きにして良いっすよ?」
「出来る訳無いだろ、そんな事!」
蘭の突然の色仕掛けに困惑してる俺に、あびるが。
「どうしたの2人共、こんなトコで?」
「何でもないっす。戻りましょう桂さん、メインディッシュが無くなるっす!」
と何事も無かったかのような素振りの蘭と共に、俺達はリビングへと戻って行った。てかこの子、打ち上げに混ぜない方が良かったのかな…。
午後2時過ぎ、明未と智枝ちゃんのクラスの催しの合唱が終わり、「以上で6年2組による、合唱を終わります。次は有志によるバンド演奏となります」とアナウンスが流れ、弾幕が降りた。急いで演奏の準備をしている俺達に智枝ちゃんは「やあ諸君、今日はあだしの初ライブだから失敗すんなよ。特にヅラ男!」と上機嫌にそう言った。数分後、再び弾幕が上がり、智枝ちゃんの自己満カラオケ大会…、失礼w。ライブが始まった。
自分に酔いながら気持ち良さそうに歌う智枝ちゃんをよそに、俺は「やってられっか…。」と想っていた。他のメンバーをそれと無く見るに「やってられっか」オーラを発していた、恐らく俺と同じ気持ちだろう…。
智枝ちゃんの演目終了後、「有り難う御座いました。それじゃ皆、最後はあだしの姉の智加の曲を、短いですが聴いてあげて下さい」と言って明未に登場を促してステージを後にした、本当に短いけどな…。
智加のライブを観て(智枝の視点)
あだしは大急ぎでおとーさん達の所に戻ると、おかーさんが「智枝、バッチリビデオに録画しといたわよ」と言うとすぐさまおとーさんが「智加の野郎、もし智枝が温めた場を盛り下げたらお仕置きだ!」と言い出した。
「皆さんこんにちわ、鮫妻 智加です」と自己紹介すると、男子達が「はいどーも!」「おえっ!」「へぶー!」とヤジを飛ばした。幾らあだしが前もってそう言うように指示してたとはいえ、マジウケる!。そんな中、智加の歌が始まった。が、よく見ると皆、あだしの時より楽しそうに演奏してやがる!
「あいつら、あだしん時より楽しそうに演奏しやがって~!」と怒りを露わにするとおとーさんが「全くだ、智枝のバックで演奏出来る事ほど光栄な事も無いのに…。」
ライブは続き、智加が下手糞ながらも一生懸命歌ってると、視線が合った男子に精一杯の笑顔を送りやがった。
「何か智加、一生懸命歌っててカッコイイな~!」
「それに智加って、あんな可愛いかったんだ…。」
「智加ちゃん、頑張れ~!」
(何智加なんかに魅了されてんだよ!、これだから男子は…。)と想うのと同時に、会場全体の歓声も、あだしの時より明らかに盛り上がってた。嫉妬の炎があだしの中から燃え上がってる時、おかーさんがここに来る前、スーパーで生卵買った事を思い出し、丁度今持ってるのを見て妙案を想い付いた。
「おかーさん、生卵1個貸して」と聞くと「生卵なんかどうするの?」とのおかーさんの問いに、「こーするんだよ!」と言いながら智加目掛けて思いっ切り投げ付けてやった。
地元のソフトボール大会の時に練習したあだしの魔球で放った生卵が(グシャッ!)と気持ち悪い音を立てながら智加の額の左上部に命中し、そこから更に血が流れた。流石あだし、我ながらナイスコントロール!
さあ泣け、ステージ上で「あびるお姉ちゃ~ん!」って言いながら泣きついて甘えて見せろ!。とのあだしの期待に反し、途中で投げ出す事無くやり遂げやがった、面白くねえ…。まあ良い、まだあの台詞が残ってるしよ~。
「1番迄ですが聴いて下さり、本当に有り難う御座います。それから、物を投げつけるのは危ないのでやめて下さい、最後に…。」と言い、深呼吸し出した。よし、言え。あの台詞を!
「わ、わたし、いつか東京武道館でライブ出来るように、そしてこの曲で日本一に、絶対なります!」
さっき迄の拍手、喝采がまるで嘘のように、その場のほぼ全員が大爆笑し出した。マジで超ウケる!
「何言ってんだあいつ、ばっかじゃねえの?。無理に決まってる!」
「智加が東京武道館でライブ出来るなら、あたしは都立競技場でライブ出来んじゃね?」
「智加が日本一なら、俺は世界一、いや宇宙一だ!」
とウチのクラスの連中が笑いながらそう言ってる横であだしもこう言う。
「へへへ。智加の奴、本当に言いやがった、マジウケる!」
「我が家の恥晒しめ、帰ったらお仕置き確定だな…。」
とおとーさんがそう言った、マジで楽しみだ。智加の奴、どんな風に絶望すっかな~♪
ライブ終了後(桂の視点)
「偉いよめいみん!。よく最後迄やり切ったよ、あんな過酷な状況で…。」とあびるが早速タオルで明未の生卵まみれの傷を拭いて傷の手当てを始める中、「1番迄だったのが、逆に功を奏したかもな…。」と俺が言うと、明未が緊張の糸が切れたのか?
「うわあああん、あびるお姉ちゃ~ん!」と泣きながらあびるの胸で甘えた。
「よしよし、本当に頑張ったよめいみんも、皆も…。」とあびるが明未の頭を優しく撫でた。
「ホンマに酷い事するな~、あのチョンマゲ女」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「あの額に我が魔剣、ナイハザードを突き刺してやりたいわ」
「ごめんなメミー、庇ってやれなくて…。」
皆それぞれの想いを明未に伝えた後、俺が「皆、帰り支度しよっか…。」と言うと。
(コンコン)
と控室のドアの外からノックが聞こえて来た。俺が「はい」と答えるとドアがゆっくりと開き、恐る恐る現れたのは、何と中学生位の胸の大きなボブカットの可愛らしい少女だった、Dカップ位だろうか?
「あの~、すみません。私、皆さんのライブを観て感動しました。出来れば私もメンバーに入れて頂きたいのですが…。」と少女は俺達に懇願し出した。
数秒間の沈黙の後、俺は「だってよ。どうする?、Berryenの皆さん」と蒼絵達にそう聞くと何故かあびるが。
「これからあーしん家で打ち上げやるから、そこで今のあーしらの現状を話すから、それ聞いてから君の話を聞かせてよ?」と言うと少女が「いいんですか?、有り難う御座います!。私、『田沼薫』と申します。坂沼中1年です」と頭を下げてそう言うと、あびるが「これからあーしん家に行くから、そこの眼鏡っ子と一緒の車に乗って、めいみんも」と言うと明未が両手を合わせながら。
「ごめん皆!。わたし、クラスの後片付けやんなきゃいけないから。打ち上げに参加するの1時間以上遅れるかも…。」
「そんなもんサボっちゃいなよ」
「あびるお姉様の言う通りですわ」
「そういう訳に行かないだろ?、クラス全員の決まりなんだから」
「まして智枝も居るから尚更サボれないだろ?」
「その智枝はサボったり手抜きしそうやけどな…。」
「そうなんだよ~、だからわたしを待たずに皆食べてて良いよ」
と明未が言うとあびるが残念そうに。
「そっか…、了解。腕に寄りを掛けて料理作って待ってるから!」
「ウチも最っ高に美味いたこ焼き作って待っとるで!」
「くくく。メイミスの分も残しておくから安心して庶民の奴隷行事に勤しむが良い!」
「ざくろお姉様の言う通りですわ!」
「もし酷い目に遭わされたらすぐ逃げて来いよ?、アタシらが助けてやるから!」
と蒼絵が言うと薫ちゃんが俺に。
「何か皆さん、随分と個性的ですね…。」
「やっぱり君もそう思うか?」
と言う俺の横で、あびるの車に初と薫ちゃんを乗せて、俺の車に蒼絵、瑠実、ざくろをそれぞれ載せてあびる宅へと向かった…。
「ただいまお母さん、あーしらの他にこの子も打ち上げに混ぜても良い?」
「初めまして、田沼 薫と申します。皆さんのライブを観てファンになった事を伝えたら、私も打ち上げに混ぜて頂く事になりました」
「あらまあ!、随分と可愛いお客様じゃない?、どうぞ上がって。そう言えば明未ちゃんは?」
「クラスの後片付けで1時間以上遅れるんだって」
「それじゃ仕方無いわね…。」と親子揃って残念そうだった…。
台所にて、蒼乃さんと薫ちゃんを含めた全員で打ち上げの準備を行ない、ご馳走も一通り並んで、主役不在の乾杯をした後、薫ちゃんがこう切り出す。
「改めて自己紹介します。ボク、田沼 薫っす、坂沼中1年っす。ボクの事は呼び捨てで良いっすよ?」
「何だお前、自分の事を『ボク』って言ってんのか?」
「ボクッ娘キター!」と発狂するあびるを蒼乃さんが止めて、落ち着いたあびるが更に続ける。
「誕生日いつなの?」と食い気味に聞くと薫が「え、言うんすか?。に、2月29日っす。しかも、午前2時29分に生まれたっす…。」と気まずそうに答えた。
「もしかしてその事でからかわれたりした?、だとしたらゴメンね…。」とあびるが謝りつつ、「ゴメンねついでにもう1つ、薫ちゃんのあだ名ってもしかして(牛ゴリラ)?」と更に質問した、薫は少し間を置いて。
「…そうっす。25年以上前に(奇妙奇天烈百科事典)ってアニメがあったらしくて、作中の(牛ゴリラ)ってキャラの本名が(田沼 薫)だからそのあだ名にされたっす…。」
「あったな~昔そんなアニメ、あれも結構長くやってたな~…。」
「でも何でアタシらなんだ?、バンドなら他にもあるだろうに…。」
と蒼絵がこう聞くと薫が一呼吸置いて…。
「実はボク、色々あって自●しようと思ってたっす。1個上の姉がいるんすけど、姉は何やらせても人並み以上でボクは何やっても人並み以下だから、そのせいでいつもお母さんからぶたれたり怒鳴られたり、お父さんからはいつもシカトされるっす、何でもこなす姉には普通に優しいんすけど…。」
と暗い顔をしながら語り、更に続ける。
「だから自分を変えたくて、以前から好きだった音楽を始めようと思ったんすけど、うちの両親、ボクにはお小遣いくれないっす。そんな時になんと無く見た今日のライブで『この人達、優しくて楽器貸してくれそう』と想ったっす。あっ、あの智枝って子は別っす。生卵投げたの、あの子っすよね?」
と薫が言ってすぐさま俺は。
「やっぱり解る人には解るんだ…。そう言えば今の俺達の現状をまだ話してなかったよね、話しても良いかな?」
と聞くと薫は「あっ、はい…。」と答えたので、俺達がどうやって出会ったか、何で智枝ちゃんなんかに曲を作ってあげてるか、俺が瑠実と結婚を前提に交際するから、それに伴いドラムの瑠実が抜ける事、同時にめいみんバンドを解散させる事を話した。すると薫が真剣な面持ちで。
「ならボクをBerryenのドラマーにして下さい、お願いします!。一生懸命練習するっす、ドラム貸して下さい、ドラム辞めるんすよね?、ならついでに教えて欲しいっす!」と俺らに懇願し出すと。
「ウチらの夫婦生活に支障をきたさない範囲で良ければ、やけどな…。」
「言っとくけどアタシら、本気でプロ目指してっぞ!」
「蒼絵お姉様の言う通りですわ!」
と、Berryenの皆が一斉に薫に質問責めし出すと薫が。
「大丈夫っす、根性ならバスケ部で散々鍛えられたっす!、色んな意味で…。そう言えばあの子の名前って『智加』と『明未』、どっちなんすか?」と聞かれ、事情を説明すると薫は「成る程、そう言う事だったんすね?。だったらボクにも芸名を付けて欲しいっす。前述の理由でこの本名嫌なんすよ」
と薫が言うとあびるが少し考えて「なら(蘭、らん)ってどう?」と聞くと薫が「何で蘭なんすか?」との問いにあびるが。
「あーしら皆、ベリーに関連のある名前だから。丁度クランベリーが居ないから。あーしと同じ(鶴牧)を苗字にすれば(つるも「くらん」)でクランベリーと繋がるっしょ?」
「凄く良い名前っす、今日から(鶴牧蘭)で宣しくっす!」
こうして、田沼 薫に『鶴牧 蘭』という芸名が付けられ、更に続ける。
「そういう訳なんで、ボクをBerryenのドラマーにして下さい、お願いします!、高校は行かないっす!」
「駄目だ!。アタシらは約半年後に高校卒業したら上京するって決めてんだ。そこからまだ2年残ってるだろ義務教育期間が?」
と蒼絵が言うと、あびるが少し考えて。
「だったら2年間地元でお金稼ぎながら力付ければ良くね?、ずらっちだってそうしたんだし。で、晴れて蘭姉ちゃんが中学卒業したら一緒に上京するってのはどう?。それに今からメンバー探してすぐ見つかる保証なんか無いし。ドラマーが最も見つかりにくいっしょ?」と言うと蒼絵が根負けしたのか?。
「…解ったわ。但し、ホンマにちゃんと練習してや。でないとプロになれへんで」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
「くくく。我が覇道は茨の道だぞ!」
「有り難うっす!。ボク、一生懸命練習して上手くなるっすー!」
「良かったね、早速メンバーが見つかって」
「だな。それよりメミー、国太達から虐待されてなきゃ良いけど…。」
こんな感じで、皆一緒に明未を心配していた。本当に無事だと良いな~…。そんな中、俺は用を足したくなり、トイレをお借りして用を足し、リビングに戻ろうとした時、蘭が切羽詰まった面持ちでこう切り出す。
「あの、桂さん。すみませんが、お金貸してくれませんか?、2万円程…。」
「何で又そんなお金が必要なんだ!?」
「どうしても緊急で要るっす、お願いするっす!」
「悪いけど、そんな大金を金を貸す事は出来ない。どんな事情があるか知らないけど…。」
「そうっすよね、じゃあ…。」
「ボクを2万で好きにして良いっすよ?」
「出来る訳無いだろ、そんな事!」
蘭の突然の色仕掛けに困惑してる俺に、あびるが。
「どうしたの2人共、こんなトコで?」
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