最愛の人との最後の性愛

宮本猛夫

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最愛の人との最後の性愛

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 少し前、女房の一周忌を終えた。1年もたてば寂しさや悲しさも薄らぐだろうと思っていたが、住職の上げるお経を聞いていたとき、長年連れ添った女房のことが思い出され、思わず涙をこぼしてしまった。
 女房の死因はガンだった。痛みを覚えて診察を受けたときは時すでに遅く、末期のガンで余命は3か月と告げられた。
 ある夜、わたしはいつものように女房の看護をしていた。最初のころはアチコチ管をつながれていたが、延命治療も断念し、チューブは全部はずされ、最期を待つばかりの状態だった。
 夜中の2時を回っていたと思う。簡易ベッドの上でうつらうつらしていたわたしを女房がか細い声で呼んだ。
 どこか痛むのか、とわたしはたずねた。けれど女房は首を横に振る。そしてわたしに横に寝るようにうながす。わたしは狭いベッドの上にのぼり、女房を抱きしめながら顔を見つめた。
 深いシワが刻まれ、肌の色もくすんでいる。けれど、長年苦労をともにしてきたたった一人の女だ、シワやシミのひとつひとつも愛しく思える。
 すると女房は、ささやくような声でいった。
「女のままで、あの世に行きたいです」
 その言葉が何を意味するものなのか、最初は分からなかったが、女房の枯れた手がわたしの股間をまさぐることで、彼女が何を求めているか知った。
「できるかどうか分からないよ」と、わたしはいう。けれど女房は「何もしなくてもいいから」と答える。
 わたしは女房を裸にし、自分も裸になって抱きしめる。女房は安心しきった表情でわたしに身体を預け、大きく何度も呼吸を繰り返した。
 ダメな夫だと思う。浮気もしたし、事業にも失敗したし、借金もつくった。けれど女房は文句のひとつも言わずに付いてきてくれた。そして、干からびてしまったが、わたしの宝である3人の子供を産み、育ててくれた身体だ。そういうふうに考えると、感情がこみ上げ、数十年ぶりに股間の一物が大きくふくらんだ。
 それを知った女房はわたしの手を自分の股間に誘った。部分はしっとりと濡れ、わたしの挿入を待ちうけているようだった。
 わたしは女房に覆い被さり、挿入を果たした。蜜の量は少なく締まりもないが、心地よさが全身を駆け巡る。ゆっくり抜き差しを繰り返すと女房も喘ぎ声を漏らし始める。
 わたしは夢中になり、入れ出しも激しくなる。それに応じて、女房も身悶えする。そして最後の瞬間、わたしは女房にたずねた。
「このまま出していいのか。子どもができてしまうかも」
「もう、この歳になって。でも」
「でも」
「もう一度、あなたの子どもが産めるのなら幸せです」
 これが女房の最期の言葉となった。コトを終えた女房は、静かな眠りにつき、明け方近く帰らぬ人となった。
 あの、最後の時の射精感。そして女房の残してくれた言葉。わたしにとっては人生最高の時だった。 
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