絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

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第55話 残酷な現実

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 ユウ達が広場で異国情緒というか異世界情緒を満喫している時、ラキは一人路地裏の人目につかない所で、大人の姿になり着替えていた。

「ユウ、妾はこのまま情報収集のため残ることにする。お主らは先程、妾が降りた場所を野営地にするがよかろう。情報を集め次第、妾もそこに戻ろう」

「だったら俺も一緒に」

「いや、お主は止めといた方が良い。これから妾が行こうとしている場所は、冒険者が多く屯している店でな。荒くれ者が多い。何かあっても妾が助けてやれんかも知れんからな」

 そう言ったラキの服装を見ると、サファリジャケットに迷彩柄のズボンを履いて頭にはバンダナを巻いている。この間のボディコンドレスとはえらい違いだ。なるほど、これなら冒険者にしか見えないだろう。TPOをちゃんと弁えているようだ。

 それで色々と察したユウは、大人しく引き下がることにした。

「分かった。無理はするなよ?」

「あぁ、夜明けまでには戻る」

 そう言ってその場を離れた。なお、初めて大人モードのラキを見たリオは「凄い..ホントに大人になってる...」と目を丸くしていた。


◇◇◇


 その酒場は路地裏の一角にあった。中に入ると煙草の煙りで目が滲みた。店内は薄暗く人の姿がボヤけて見える。少しして目が慣れて来たラキは、お目当ての人物を見付けた。

「ジョー、久し振り」

「なんだ、ラキじゃねぇか。お前生きてたのかよ? しばらく見なかったからてっきりくたばったと思ってたぜ?」

 ラキにジョーと呼ばれた男は、無精髭と傷だらけの顔を歪めて笑った。この男は情報通として知られている。

「生憎とまだ生きてるよ。聞きたいことがあるんだ。一杯奢るから教えてよ?」 

「一杯だけか?」

「分かった。好きなだけ頼んでいいよ」

「そう来なくちゃな。それで何が聞きたい?」

「獣人に関して知ってることを全部教えて?」


◇◇◇


 ユウとアリィは本を読みながら静かに待っていた。時計を見ると既に日付が変わっている。もちろん、リオは既に夢の中だ。

「アリィ、無理しなくていいんだぞ? 俺が起きて待ってるから」

「大丈夫です。こう見えて日本に居た頃は夜型人間だったんですよ? これくらい平気です」 

 それに対してユウが答えようとした時だった。

「ユウ! アリィ! 今戻った! 中に入れてくれ!」

 ラキが戻って来たようだ。ユウは直ぐ様バリヤを解除して玄関に急ぐ。ドアを開けて、

「ラキ、お帰り。早かったな」

「お帰りなさいラキ。首尾は如何です?」

 それに対してラキの反応が鈍い。気になったユウが尋ねる。

「どうした? 何かあったのか?」

 ラキはすぐには答えず、家の奥に目をやった。

「...リオはもう寝ているんじゃな?」

「あぁ、それがどうかしたか?」

「お主ら、ちょっと外に出てくれ」
  
 そう言ってラキは外に行ってしまった。ユウとアリィは訝しげに顔を見合わせながらも後に続いた。家から少し離れた場所で立ち止まったラキが、振り返って徐にこう告げた。

「リオの故郷、獣人の村は壊滅したそうじゃ」
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