絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜

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第56話 涙涙涙涙....

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「そんな...」

 アリィは両手で顔を抑えて泣き出してしまった。ユウはある程度その展開を予想していたのか、顔を歪めただけだった。

「...確かなのか?」

「あぁ、領主に駆り出されたという冒険者にも話を聞いたから間違いない。奴らは村人を全て始末した後、証拠を残さないよう村に火を放ったという...」

「なんて酷いことを...」

「そもそも獣人がそこに住んでいたという痕跡ごと消すとはな...全くもって悪辣な奴らじゃの...」

 ユウはもう言葉もなかった。それと同時に領主に対する怒りがフツフツとこみ上げて来た。もはや罪を暴いて失脚させるだけじゃ物足りない。命をもって償って貰う。そう誓った。

「それで問題は、このことをリオに伝えるかどうかなんじゃが...」

「そ、それは...」

 黙っていてもいずれは知ることになるだろう。リオにとっては家族と同時に故郷まで失ってしまったことになる。まだ幼いリオにとってどれだけ辛いことだろうか...想像だに出来ない。

 元々ユウは獣人に対する差別が撤廃された後、たとえリオ嫌がったとしても、獣人の村に帰すつもりだった。

 自分達は急にこの世界へとやって来た。だからまた急に元の世界に戻ってしまうかも知れない。そうなったらリオは一人ぼっちになってしまう。いつまでも自分達と一緒には居ない方が良いと思っていたのだ。

 だがリオの帰る場所は失われてしまった。リオの家族と共に。どうするのがリオにとって最善なのか、ユウの中では中々結論が出なかった。

「話しましょう...」

 すると涙を拭きながらアリィがそう言った。

「黙っててもリオちゃんを苦しめるだけです。だったらしっかりと現実を知らせた方が良いです。大丈夫、リオちゃんは強い子ですから、きっと受け止め...」

 その後は涙で言葉にならなかった。

「...分かった。そうしよう....」

 ユウは悲壮な決意を固めた。

「誰が伝える? 妾が伝えても構わんぞ?」

 そう言ったラキをユウが制する。

「いや、俺が伝える」


◇◇◇


 翌朝の朝食は重い雰囲気に包まれていた。一人だけ事情知らないリオは、首を傾げながらも旺盛な食欲を示していた。そして朝食後、ユウが徐に語り出した。

「リオ、話があるんだ」

「なあに?」

「実はな...」

 リオはユウの話が終わるまで微動だにしなかった。そして話を聞き終えた後、静かに目を閉じた。やがて目を開けると...

「そっかぁ...なんとなくそんな気はしてたんだよね...大丈夫、大丈夫だよ...村から逃げる時お別れは済ませたから...いっぱい泣いたから...も、もう悲しくなんか...」

 そこまでが限界だった。リオの大きな瞳から涙が溢れた。

「リオちゃん!」

 堪らずアリィが抱き締める。

「り、リオ、ひ、一人に、なっちゃった...ふえええん!」

「一人じゃありません! 私達がずっと一緒です!」

「そうだ! もうリオは俺達の家族だ! 一人ぼっちだなんて言うな!」

 ユウが泣きながら二人を抱き締める。

「妾もおるぞ! ずっと側におるからな!」

 ラキも涙を流しながら三人を抱き締める。

 そうしてしばらくの間、四人は泣き続けたのだった。
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