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第75話 獣人街
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獣人街は王都の中心からやや離れた場所にあった。
だからと言って、貧民街やスラム街のような廃れた雰囲気はなく、都会にありながらどこか牧歌的な雰囲気を漂わせている不思議な場所だった。
リオ達獣人の子供達も懐かしそうに目を細めている。そしてユウとアリィはと言えば...
「み、見ろアリィ! 猫耳、犬耳、ウサ耳、良く分からん耳! ここはケモ耳パラダイスだ!」
「見て下さいユウ! あれは馬耳、こっちはロバ耳ですよ!」
「なにぃ!?『王様の耳はロバの耳』を実践できるチャンスじゃないか!」
「ケモ耳萌え~♪」
「異世界最高~♪」
「...やたらテンション高いな、お主ら...」
異世界組のぶっ壊れた様子を見たラキが呆れたように呟く。と、そこへ...
「おや、これは珍しい。ラキじゃないか?」
「おぉっ! シモンか! 久しいの!」
ラキに話し掛けて来たのは、立派な白い髭を蓄えたヤギ獣人の老人だった。
「ユウ、アリィ、紹介しよう。こちらは獣人街の纏め役を担っているシモンじゃ。妾とは旧知の仲でな」
「シモンじゃ。ようこそ我が獣人街へ。なにやら珍しい組み合わせじゃの。それにこの子らは?」
「それなんじゃがシモン、落ち着いて話せる場所はあるか?」
「だったら儂の家に来るがよかろう。歓迎するぞい」
シモンに案内されて行った先は、こじんまりとした一軒家だった。シモンの奥さんである、やはりヤギ獣人の老女が出迎えてくれた。
客間に通されお茶をご馳走になった後、シモンが促す。
「それで? 話とは一体なんじゃ?」
「実はな...」
ラキが話し始めると、シモンの顔は次第に悲しみと怒りに満ちていった。
「...そうか...そんな酷いことが...」
話を聞き終わったシモンは、絞り出すようにそれだけを呟いた。やがてユウとアリィに向き直って、
「我が同胞を助けてくれたこと、改めて感謝申し上げる。本当にありがとう」
そう言って深々と頭を下げた。
「あ、頭を上げてくれ! 爺さん! 俺達は当然のことをしたまでなんだから!」
「そ、そうですよ! 困った時はお互い様ですから!」
いきなり目上の者に頭を下げられた二人があたふたする。こういう所に日本人気質が出るようだ。
「フフフッ、お主らは良い人なんじゃな。子供達もお主らに出会えたことは僥倖じゃったようじゃ」
シモンは立派な髭を手で撫でながら笑った。
「それでシモン、この子らのことなんじゃが」
「もちろん、儂らが面倒見るぞ。何の心配も要らんわい」
それを聞いた子供達が一様にホッとした表情を見せる。
「そうか。そう言ってくれると助かる。シモン、子供の数が多いから何かと物入りになるじゃろう。この金を使ってくれ。妾からの餞別じゃ」
そう言ってラキは、ガイエルの金庫から失敬した現金をリュックから全部出した。それを見てシモンが目を丸くする。
「ら、ラキ! お前さん、こんな大金をどうやって!?」
「なあに、気にするな。行き掛けの駄賃じゃ」
そう言ってラキは、とても良い笑顔を浮かべた。
だからと言って、貧民街やスラム街のような廃れた雰囲気はなく、都会にありながらどこか牧歌的な雰囲気を漂わせている不思議な場所だった。
リオ達獣人の子供達も懐かしそうに目を細めている。そしてユウとアリィはと言えば...
「み、見ろアリィ! 猫耳、犬耳、ウサ耳、良く分からん耳! ここはケモ耳パラダイスだ!」
「見て下さいユウ! あれは馬耳、こっちはロバ耳ですよ!」
「なにぃ!?『王様の耳はロバの耳』を実践できるチャンスじゃないか!」
「ケモ耳萌え~♪」
「異世界最高~♪」
「...やたらテンション高いな、お主ら...」
異世界組のぶっ壊れた様子を見たラキが呆れたように呟く。と、そこへ...
「おや、これは珍しい。ラキじゃないか?」
「おぉっ! シモンか! 久しいの!」
ラキに話し掛けて来たのは、立派な白い髭を蓄えたヤギ獣人の老人だった。
「ユウ、アリィ、紹介しよう。こちらは獣人街の纏め役を担っているシモンじゃ。妾とは旧知の仲でな」
「シモンじゃ。ようこそ我が獣人街へ。なにやら珍しい組み合わせじゃの。それにこの子らは?」
「それなんじゃがシモン、落ち着いて話せる場所はあるか?」
「だったら儂の家に来るがよかろう。歓迎するぞい」
シモンに案内されて行った先は、こじんまりとした一軒家だった。シモンの奥さんである、やはりヤギ獣人の老女が出迎えてくれた。
客間に通されお茶をご馳走になった後、シモンが促す。
「それで? 話とは一体なんじゃ?」
「実はな...」
ラキが話し始めると、シモンの顔は次第に悲しみと怒りに満ちていった。
「...そうか...そんな酷いことが...」
話を聞き終わったシモンは、絞り出すようにそれだけを呟いた。やがてユウとアリィに向き直って、
「我が同胞を助けてくれたこと、改めて感謝申し上げる。本当にありがとう」
そう言って深々と頭を下げた。
「あ、頭を上げてくれ! 爺さん! 俺達は当然のことをしたまでなんだから!」
「そ、そうですよ! 困った時はお互い様ですから!」
いきなり目上の者に頭を下げられた二人があたふたする。こういう所に日本人気質が出るようだ。
「フフフッ、お主らは良い人なんじゃな。子供達もお主らに出会えたことは僥倖じゃったようじゃ」
シモンは立派な髭を手で撫でながら笑った。
「それでシモン、この子らのことなんじゃが」
「もちろん、儂らが面倒見るぞ。何の心配も要らんわい」
それを聞いた子供達が一様にホッとした表情を見せる。
「そうか。そう言ってくれると助かる。シモン、子供の数が多いから何かと物入りになるじゃろう。この金を使ってくれ。妾からの餞別じゃ」
そう言ってラキは、ガイエルの金庫から失敬した現金をリュックから全部出した。それを見てシモンが目を丸くする。
「ら、ラキ! お前さん、こんな大金をどうやって!?」
「なあに、気にするな。行き掛けの駄賃じゃ」
そう言ってラキは、とても良い笑顔を浮かべた。
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