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第2章 聖女と聖獣
第48話 南の砦へ
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帝国軍が撤退したとの報を受けて、さすがは守護聖獣様だ! などと騎士達が騒いでいる頃、何もやる事が無くなってしまった神官達は、瓦礫の下に埋もれている人が居ないか調べたり、崩れ掛けた建物の補修をしたりなどの救助活動を行っていた。神官なのにっ!
ここでもゴドウィンが率先して動いてくれているので、神官達からも特に苦情は出ない。本当にリシャールは頭が下がる思いである。さてこれで残る懸念はと言えば...
「セイラ、王都からここまで何時間くらい掛かった?」
セイラはアンジュとの会話を思い出してみる。結構長いこと話し込んでた気もするけど、それでも時間にすれば、
「ん~ 多分一時間くらいだったかなぁ...」
フムフム、馬車で三日掛かる距離を僅か一時間足らずってそれも凄いんだが、空を飛ぶならそれくらいは当然として、では馬車で約十日掛かる距離だったらどうなるか...
「その三倍くらいの距離でも飛べるかな?」
「クロウ、行けるか?」
「クルル」
「問題無いってさ」
「ここから南の砦まで飛んで欲しいんだ」
「南の砦? なんでまた? 何かあったのか?」
「あぁ、ここと同じように他国からの脅威に晒されている。開戦するのは時間の問題だ。叶うならば是が非でも開戦を阻止したい。飛んでくれるか?」
王国を北の端から南の端へ縦断する距離だ。普通ならこんなこと頼まない。だが神獣なら話は別だ。図々しい頼みである事は自覚しているが緊急事態という事でご理解願いたい。
「分かったけど...またアレやるのか?」
セイラがジトッとした目を向けて来るが、それに気付かないフリをして、
「ま、まぁ、状況に応じて...かな」
セイラがハァって大きなため息付いてるけど、いや、ホントだよ? 快感だったからもう一回神官役をやってみたいって思ってる訳じゃないよ? ホ、ホントだってばさ!
「という訳でレイモンド、僕らはちょっくらひとっ飛びして来るから後ヨロシク!」
「いやいやいや、何がという訳なんですかっ! ちゃんと説明して下さいよっ! 何ですか、ひとっ飛びって! 意味分かりませんよっ!」
察しの悪い側近だなぁと思いつつも、確かに言葉が足りなかったかも知れないと思い直したリシャールは、
「僕らはこれから南の砦に飛んで、開戦を阻止しようと思う。お前はここに残って災害の復旧と戻っては来ないとは思うが帝国軍の警戒に当たってくれ。ではサラバ!」
「ちょ、ちょっと殿下!? ま、待ってっ!」
待たないっ!
リシャールはクロウに颯爽とまたがっ...いや、咥えられてポイッとされて南の砦へ飛び立った...そして数秒後に後悔する...
「ひぃぃぃっ! 速い速い速い~! 怖い怖い怖い~!」
「ほら、リシャール。ちゃんと目を開けてろ。方角を指示してくれねぇと困るんだよ」
「無理無理無理~!」
リシャールの絶叫はその後しばらく続き、飛び始めてから約三時間後、ようやく南の砦が見えて来た。その頃にはどうにか飛行速度に慣れたようだ。
「あ、リシャール、見えたぞ。アレがそうじゃないか?」
「あぁ、そうだ。間違い無い。我が軍が集結してる。幸いまだ戦端は開かれていないようだ」
「どうする? 一旦味方の所に降りるか?」
「う~ん、いや説明が面倒だしパニックを起こされても困るから、このまま敵の正面まで行こう」
「はぁ...」
そこっ! ため息つかないっ!
「えぇい静まれ! ルーフェン国兵どもっ! 聖域を侵そうとした不届き者めがっ! 神竜様はお怒りであるぞ!」
以下同文...
ここでもゴドウィンが率先して動いてくれているので、神官達からも特に苦情は出ない。本当にリシャールは頭が下がる思いである。さてこれで残る懸念はと言えば...
「セイラ、王都からここまで何時間くらい掛かった?」
セイラはアンジュとの会話を思い出してみる。結構長いこと話し込んでた気もするけど、それでも時間にすれば、
「ん~ 多分一時間くらいだったかなぁ...」
フムフム、馬車で三日掛かる距離を僅か一時間足らずってそれも凄いんだが、空を飛ぶならそれくらいは当然として、では馬車で約十日掛かる距離だったらどうなるか...
「その三倍くらいの距離でも飛べるかな?」
「クロウ、行けるか?」
「クルル」
「問題無いってさ」
「ここから南の砦まで飛んで欲しいんだ」
「南の砦? なんでまた? 何かあったのか?」
「あぁ、ここと同じように他国からの脅威に晒されている。開戦するのは時間の問題だ。叶うならば是が非でも開戦を阻止したい。飛んでくれるか?」
王国を北の端から南の端へ縦断する距離だ。普通ならこんなこと頼まない。だが神獣なら話は別だ。図々しい頼みである事は自覚しているが緊急事態という事でご理解願いたい。
「分かったけど...またアレやるのか?」
セイラがジトッとした目を向けて来るが、それに気付かないフリをして、
「ま、まぁ、状況に応じて...かな」
セイラがハァって大きなため息付いてるけど、いや、ホントだよ? 快感だったからもう一回神官役をやってみたいって思ってる訳じゃないよ? ホ、ホントだってばさ!
「という訳でレイモンド、僕らはちょっくらひとっ飛びして来るから後ヨロシク!」
「いやいやいや、何がという訳なんですかっ! ちゃんと説明して下さいよっ! 何ですか、ひとっ飛びって! 意味分かりませんよっ!」
察しの悪い側近だなぁと思いつつも、確かに言葉が足りなかったかも知れないと思い直したリシャールは、
「僕らはこれから南の砦に飛んで、開戦を阻止しようと思う。お前はここに残って災害の復旧と戻っては来ないとは思うが帝国軍の警戒に当たってくれ。ではサラバ!」
「ちょ、ちょっと殿下!? ま、待ってっ!」
待たないっ!
リシャールはクロウに颯爽とまたがっ...いや、咥えられてポイッとされて南の砦へ飛び立った...そして数秒後に後悔する...
「ひぃぃぃっ! 速い速い速い~! 怖い怖い怖い~!」
「ほら、リシャール。ちゃんと目を開けてろ。方角を指示してくれねぇと困るんだよ」
「無理無理無理~!」
リシャールの絶叫はその後しばらく続き、飛び始めてから約三時間後、ようやく南の砦が見えて来た。その頃にはどうにか飛行速度に慣れたようだ。
「あ、リシャール、見えたぞ。アレがそうじゃないか?」
「あぁ、そうだ。間違い無い。我が軍が集結してる。幸いまだ戦端は開かれていないようだ」
「どうする? 一旦味方の所に降りるか?」
「う~ん、いや説明が面倒だしパニックを起こされても困るから、このまま敵の正面まで行こう」
「はぁ...」
そこっ! ため息つかないっ!
「えぇい静まれ! ルーフェン国兵どもっ! 聖域を侵そうとした不届き者めがっ! 神竜様はお怒りであるぞ!」
以下同文...
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