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「裏切り者の方はどんな感じだ?」
ミハエルは気持ちを切り替えるようにそう尋ねた。
「相変わらず黙秘を続けております」
「そうか...しぶといな...」
「えぇ、全く...」
「いいか? そっちは24時間目を離すんじゃないぞ?」
「心得ております。お任せを」
近衛兵が部屋を出て行った後、ミハエルは疲れてショボショボした目を擦りながら仕事に戻った。
◇◇◇
次の日の午後、予定通りに騎士団長がラングレー公爵を連れて戻って来た。詰め所で出迎えたミハエルに対し、騎士団長は敬礼しながら挨拶した。
「殿下、ただいま戻りました」
「騎士団長、ご苦労」
ミハエルは騎士団長の労を労った後、縄で後ろ手に縛られたラングレー公爵に向き直った。
「やぁ、ラングレー公。久しいな」
「......」
「少し痩せたか?」
「......」
「どうした? 急に口がきけなくなった訳でもあるまい?」
「......」
ミハエルが何度話し掛けてもラングレー公爵は無言を貫いた。いきなり拘束されたのが余程ショックだったのか、その目は虚ろでなにも映っていないような印象を与えた。
「ラングレー公、あの男に見覚えがあるだろう?」
ミハエルはマジックミラー越しに尋問を受けている裏切り者を指差した。ラングレー公爵の視線がゆっくりとその指の先を追う。
「!?」
すると次の瞬間、ラングレー公爵の目に光が戻った。裏切り者を凝視する。
「ラングレー公の手の者だということは分かっている。ペラペラと白状してくれたからな。シラを切っても無駄だぞ?」
もちろんハッタリである。裏切り者は未だに黙秘を続けているのだから。だがそんなことを知らないラングレー公爵は、忌々し気に顔を歪めた後、
「...あんの役立たずが...」
絞り出すように呪詛に塗れた言葉を吐き出した。その後、観念したかのように項垂れた。
「騎士団長、後は頼む」
「分かりました」
どうやらラングレー公爵は落ちたようだと感じたミハエルは、尋問を騎士団長に任せて詰め所を後にした。
◇◇◇
「ミハエル殿下」
詰め所を出た辺りの所で、ミハエルはソニアに呼び止められた。
「あぁ、ソニア嬢か。今日は済まなかったな」
「いえ、それは別に構わないんですが...大丈夫ですか?」
ソニアはミハエルの顔を覗き込むようにした。
「なにが?」
「なんだかとってもお疲れのように見えますけど...」
「そうか?」
言われて初めてミハエルは気が付いた。昨夜からほとんど寝ていないということに。目の下に隈でも出来ているのかも知れない。
「心配してくれてありがとう。僕は大丈夫だから安心してくれ」
「ならいいんですが...」
ソニアはまだ心配そうにしている。
「明日はちゃんと面談の時間を作るから。それじゃまた明日」
ミハエルはそそくさとその場を後にした。
ミハエルは気持ちを切り替えるようにそう尋ねた。
「相変わらず黙秘を続けております」
「そうか...しぶといな...」
「えぇ、全く...」
「いいか? そっちは24時間目を離すんじゃないぞ?」
「心得ております。お任せを」
近衛兵が部屋を出て行った後、ミハエルは疲れてショボショボした目を擦りながら仕事に戻った。
◇◇◇
次の日の午後、予定通りに騎士団長がラングレー公爵を連れて戻って来た。詰め所で出迎えたミハエルに対し、騎士団長は敬礼しながら挨拶した。
「殿下、ただいま戻りました」
「騎士団長、ご苦労」
ミハエルは騎士団長の労を労った後、縄で後ろ手に縛られたラングレー公爵に向き直った。
「やぁ、ラングレー公。久しいな」
「......」
「少し痩せたか?」
「......」
「どうした? 急に口がきけなくなった訳でもあるまい?」
「......」
ミハエルが何度話し掛けてもラングレー公爵は無言を貫いた。いきなり拘束されたのが余程ショックだったのか、その目は虚ろでなにも映っていないような印象を与えた。
「ラングレー公、あの男に見覚えがあるだろう?」
ミハエルはマジックミラー越しに尋問を受けている裏切り者を指差した。ラングレー公爵の視線がゆっくりとその指の先を追う。
「!?」
すると次の瞬間、ラングレー公爵の目に光が戻った。裏切り者を凝視する。
「ラングレー公の手の者だということは分かっている。ペラペラと白状してくれたからな。シラを切っても無駄だぞ?」
もちろんハッタリである。裏切り者は未だに黙秘を続けているのだから。だがそんなことを知らないラングレー公爵は、忌々し気に顔を歪めた後、
「...あんの役立たずが...」
絞り出すように呪詛に塗れた言葉を吐き出した。その後、観念したかのように項垂れた。
「騎士団長、後は頼む」
「分かりました」
どうやらラングレー公爵は落ちたようだと感じたミハエルは、尋問を騎士団長に任せて詰め所を後にした。
◇◇◇
「ミハエル殿下」
詰め所を出た辺りの所で、ミハエルはソニアに呼び止められた。
「あぁ、ソニア嬢か。今日は済まなかったな」
「いえ、それは別に構わないんですが...大丈夫ですか?」
ソニアはミハエルの顔を覗き込むようにした。
「なにが?」
「なんだかとってもお疲れのように見えますけど...」
「そうか?」
言われて初めてミハエルは気が付いた。昨夜からほとんど寝ていないということに。目の下に隈でも出来ているのかも知れない。
「心配してくれてありがとう。僕は大丈夫だから安心してくれ」
「ならいいんですが...」
ソニアはまだ心配そうにしている。
「明日はちゃんと面談の時間を作るから。それじゃまた明日」
ミハエルはそそくさとその場を後にした。
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